17話・見てはいけないもの
「わたしは何でも食べるわ。好き嫌い無いもの。でも昨日の大熊の魔獣、美味しかった」
「……!」
そう言えば昨日、大熊の魔獣を倒した後、皆がバードのことに気を囚われていたこともあり、その後の後始末のことをすっかり忘れていた。
あの時パペットが大地の上に転がっていて、拾い上げると皆に「それはおまえのか?」と、微妙な顔をされたのを覚えている。
パペットが大地の上に落ちていたのは二度目になる。たまたま胸元に押し込んでいたパペットが落ちたのかと思っていたが、もしかしたら違うのかも知れない。
「まさか今まで倒した魔獣が綺麗サッパリ消えたのって?」
「わたしが美味しく頂きました」
白猫熊のパペットが両手でぺったんこなお腹をさする。あの魔獣を食べた? にわかに信じられない。どうやって食べたというのか?
「どうやって食べたんですか? それで食べたのはどこに?」
「お口で食べたわよ。食べた物はお腹の中」
「排泄は? 排泄しないと大変なことになるのでは?」
「大丈夫。この姿になってから排泄必要ないみたいなの。便利な体よね? 食べた物は全てわたしの聖魔法の源となっているわ」
エッヘンとパペットは胸を張った。そんなことあり得るのか? いまいち信用ならない。
「あ──。お腹減ったぁ。早く何か食べさせて」
「はいはい」
不思議なことはてんこ盛りだが、パペットに急かされて俺は川へと向かった。
「いっただきまーす」
この森には川が流れていて川魚が釣れると昨日であった冒険者達に聞いていたので、急遽小枝を拾いその先に糸をつけた急ごしらえの釣り道具で魚を釣ってみたら面白いほど釣れた。
それというのも俺が作った釣り竿では無く、なかなか魚が釣れないのに痺れを切らしたマダレナが片手を川に入れたら面白いようにその先に魚が食らいついてきたのだ。本人は悲鳴を上げて大変だったがおかげで食事に有り付けることになった。
川辺で石を拾い円陣を作ってその中で火を起こし、拾った小枝に魚を刺した物を火にあぶる。しばらくすると魚の表面が焼けてきて美味しそうな匂いがしてきた。
一本マダレナの前に差し出すと、くわっとパペットは口を開けた。ゴウッと目に見えない吸引力が働いた気がして驚くと、差し出した枝に刺さった魚が枝だけを残し無くなっていた。
「もっと食べていい?」
「どうぞ」
マダレナは嬉々として食事をする。その光景を見ていたら食欲が失せた。
「どうしたの? あっくん。それ食べないの?」
「今は食欲がなくて……」
「じゃあ、それわたしに頂戴」
両手を組み、お強請りする白猫熊のパペットは非常に可愛い。しかし、くわっと口を開けた姿は直視するのには残酷すぎた。あの可愛い姿が頬まで裂けた口で丸呑みするのだ。全然可愛くない。これからは食事の時はパペットに注目するのは止めようと思った。
「はああ。ご馳走様。美味しかった。全然あっくん食べてなかったけど大丈夫?」
「あとで木の実でも拾って食べますよ」
「そう?」
そのやり取りの後、思わず収穫したひょっとこ苺を食してしまい一日中、笑い続けてとんでもない羽目になったのは言うまでもない。




