14話・只の新米冒険者ですよ?
悲壮な顔をしていた冒険者達は驚愕に目を見張った。
「お。おっ、おう?」
「えっ?」
「傷口が塞がった?」
俺もびっくりしたが、皆もびっくりしていた。気のせいかバードの血色も良くなってきたような気がする。
「おまえ、あんな凄い技を繰り出しておきながら癒やしの力も使えるのか?」
「ええ。まあ、多少なら……」
マダレナがしたことだと言えないだけに濁すと、男達は口々に凄い、凄いと囃し立てた。そのマダレナは良い子ちゃんでパペットになりきり大人しくしている。
「おまえ、新入りなのに凄いな」
「どこでこんな技覚えたんだ?」
「一体、何者だよ」
皆の目が一斉にこちらを向く。
「いやぁ、只の新米冒険者です」
「「「「「嘘つけ!」」」」」
頭を掻くと、この場の五人の声が見事に重なった。
「いや、本当ですって。癒やしの力は元神官でしたから、ちょこっとだけ扱えるってだけで……」
「元神官? それがなんで冒険者に?」
「解雇されて冒険者に転職したんです」
「解雇? 転職? 神官が冒険者?」
詳しいことは話せないけど、さらりと説明するとそうなる。皆は不思議がった。
「何でまた? あんたみたいな人が何で解雇させられたのか、さっぱり想像がつかない」
「顔面偏差値が低かったようです」
「顔面偏差値? なんだそれ?」
「私の顔が気に入らないと解雇されました。見た目が悪いそうです」
「はあああ?」
冒険者達は怪訝な顔をし、俺の言葉に目を剥いた。
「なんだそれ? 顔さえ良ければ良いってことか? 神官はとんでもないやつらばかりだな」
「いや、その。わたしをクビにした人が一方的だったってことだけで、他の人達は皆、親切でしたよ」
誤解の無いように言ったはずなのに、彼らはそう受け取ってくれなかったようだ。
「おまえって何か損する性格だろう?」
「それだけの実力を持ちながら生かされてないなんて不憫すぎる」
冒険者達は同情的だった。彼らはわしわしと頭を撫でてきた。
「おまえは凄いやつだ。自信を持て」
「オレ達は分かっているからな」
「そうそう。これではすぐにオレ達のランクを飛び越えていきそうだな」
「期待の新人か。末恐ろしいやつが新入りとして入ってきたもんだ。怖えぇ」
「うかうかしてられねぇな」
口々に賛美されてくすぐったいような思いに晒される。
「止して下さいよ。褒めても何も出ませんから」
「安心しろ。今のおまえに奢らせるようなことはしないから。出世したら幾らでもたかってやるって」
「酷いなぁ」
「あはははっ。まあ、頑張れや」
夕刻の森に皆の笑いが満ちた。大声で笑ったのなんて久しぶりだ。心の中が温かなもので満ちたような気がした。
そこで俺は何か見落としているような気がしたが、誰も気にしていなかったことでその事は気にしていたことすら忘れてしまった。




