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１３話・食らえ、聖獣破！

「バードっ。バード、大丈夫か？」

　仲間の一人が大熊に投げつけられた男の元へ駆ける。そこへ大熊が再び襲いかかろうとした。

「危ない！」

　仲間達が大熊に斬りかかろうとしたが、それよりも大熊が振り上げた手の方が早かった。そこへ捕縛魔法を打ち込んだ。

「……！」

　大熊は動きを拘束されて暴れる。ギヤーと奇声を発し、周囲を威嚇した。

「あとは任せて。あっくん！」

「レナ。危ないですよ」

　マダレナが胸元から顔を出す。胸元からこぼれ落ちそうなので手で押さえたのに早く、早くと急かされた。

「いいからわたしを装着して。あっくん」

「はあ？」

「時間が無いわ。早く。装着して。左手にはめるのよ！」

　もの凄い勢いで言われたので思わず言われるがままにはめてみると、どこからともなく大きな渦巻くような魔力の波動が感じられた。

「あいつにわたしを向けて」

「あいつって大熊？」

「それ以外に誰を指すの？　さあ、早く」

　大熊は体を反って拘束魔法から逃れようとあがいていた。拘束魔法は絶対ではない。大熊の魔獣がこのまま抗い続ければ魔法が打ち破られそうだった。

　マダレナの言うとおりにパペットの彼女をはめた左手を大熊の魔獣へと向けてみる。すると何とパペットの口がくわっと大きく開いた。そこから大きな白光が飛び出し、周囲が目も開けられないような眩しい光に覆われた。

「食らえ！　聖獣破っ」

「ぎぃぎゃああああああああああああああ──」

　マダレナの発言は気になったが、それよりもまばゆい閃光に気を取られた。地響きがしてそれが収まったと思ったら大きな熊の魔獣が倒されていた。マダレナから発せられた衝撃破によって絶命したようだ。瞬きをしていると時間が止まったようにあ然としていた周囲の者達が動き出した。

「やった。倒したな」

「おまえ、凄いな。ありがとうよ」

「あのデカブツを倒すなんてやるじゃないか！」

　と、彼らに驚かれつつも魔獣を倒せたことにホッとしたが、先ほど大熊に襲われていた男の安否が気になった。

　一人の男が倒れたままの男に付き添って必死に呼びかけていた。近づくと付き添いの男が沈んだ表情で見上げてくる。

「意識はありますか？」

「気を失ったままだ」

　大熊に襲われていた男は脇腹を長い爪で抉られていた。重傷だとみて分かる。残酷にも引き裂かれた服の間からパックリと割れた肌が見え大量の血があふれ出していた。

「しっかりしろ！　バード」

「バード、起きるんだ」

「バード、バードっ」

　仲間が代わる代わる意識のない彼に呼びかける。皆が必死に声をかけるが青白い顔をした彼は反応一つしない。仲間の一人が項垂れた。

「もしも、ここに聖女さまがいたのならバードを見てもらうことも出来たかも知れないのにな」

「そう言いたくなる気持ちは分かるが、バードを取りあえず森の外の診療所へ連れて行こう」

　他の仲間の一人が、項垂れた男の肩を抱く。

「そうだな……」

　男達は大熊に襲われたバードをこの場から連れ出そうとしていた。そこにパペットにぐいっと手を引っ張られた感覚があって何気なく、その傷口のある脇腹の上にパペットをはめた手を乗せた時だった。ぱあっと光があふれ出し、見る間にバードの傷口が塞がっていった。