No.101-0 prologe
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command$ dnetsearch -user:goed verne -name:project "TheaterMoonTukuyomi"
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Search Results :No. date Langth summary
20531 TheaterMoonTukuyomi 01 fly me to the moon
Are you sure you want to display for datail[y/N]? Y
Display of search results No.101.
大きな大きな黒い空間。そこは漆黒のどこまでも続く果てしない「宇宙」。人が空の下に立っていた時代より幾ばくか時が進み、人類はもうひとつの空を手に入れていた。「月」の新たなフロンティア時代に移り変わった。その真っ只中の話。月へ魅せられ、月に縛られたものたちの話。
MOON Phase「TSUKUYOMI」 start [y/n]? ......y
No.101 Fly me to the moon
command$ dnetsearch-name:titlle.00 -prologe-
< Log name = Pacific log >
深い闇の海を突き進み、地球から月へ向かう一機のシャトル。青く映る故郷の大地と、大小無数の星々。生まれてからずっと踏みしめていた地を離れ、遥か三十八万キロ先の異なる大地を目指している。
シャトルの機内は空調の音が聞こえるほど静かで、乗客は窓の外を見たり、仮眠をとったりしている。座席に座っている乗客の大半が物好きな富裕層か月開発関連の技術者、ヘリウム3の採掘員、メディア関係者で、まだ月への往来はメジャーとは言えない。
旅行で月に渡航する場合は一人当たり、一般的な公務員の平均年収の二倍ほどが必要なのだ。自費で来るか、技術者枠として会社単位で来るか、公募やキャンペーンで選ばれるか、いずれにしても狭き門である。つまり、一般層が月へ行くのは夢の又夢の話。
中央の通路を挟んで四席、それが二十列の小さな機体。
しかし、そのシャトル内にあきらかに若い四人組が横一列ですわっている。シャトル内の平均年齢が五十代くらいだから明らかに若い。その四人組は高校生だった。四人は遠慮がちに機内に笑い声を響かせる。
「ねえ、見て。もう地球があんなに遠くに見える」
高校生のうちの一人が、拳大くらいに遠ざかった地球を見つめて、楽しそうに言った。ショートヘアで活発そうな女子高生はリーダー格のハルカ。待ちきれない様子で、シートベルトに抑えられた体を、上下左右にゆさゆさと揺さぶっていた。
「おい、落ち着け」
四人組唯一の男子高校生のタカが周囲の大人のイラつきを察知し注意を促す。
ハルカは不服そうに「だって~」と言うが、一学年上のナミも、まるで子どもをあやす様にハルカに伝える。
「ほら、周りの人迷惑になっちゃうから。静かな機内だとね」
と、優しく促され、さらに年下のレンにまで、
「先輩、お静かに」
と言われ、口を尖らせているが、しっかりとシートに座り、機外に広がる黒い海を眺めた。
落ち着いた女性の声でアナウンスが流れる。
「当機はまもなく着陸態勢に入ります。月、マリウス丘空港の状況は、隕石確率十パーセント。太陽フレアの影響は軽微。月表面温度は百度。当機はこのまま着陸いたします。そのままの体勢で今しばらくお待ちください」
着陸に向けてシャトルが旋回する。スーッと大きく左に大きく弧を描くと右側座席の窓の眼前に広がる月の大地。姿勢の良い人々が「お~」と歓声をあげる。左側の座席の乗客も皆、体が右側を向いている。
「あんなにお澄まししていたのに子どものように喜ぶのね」
とハルカは思ったが、自分自身も歓声をあげていたし、それよりももっと目の前の景色を、目の奥に焼き付けておこうと思い、食い入る様に窓の外を見つめ続けた。
宇宙の中に浮かぶ地球の衛星、月。シャトルは月へ向けて降下を始めた。四人は期待に胸を膨らませ機体に体を預けた。