訪れた街
どの位 歩いたのだろうか。
時間にして 1時間は歩いている筈なのに
体も足も 全く疲れを感じない。
それどころか 益々芯からパワーを感じて来て
時期に 空でも飛べるのでは無いかと 思える程だ。
あれから 魔物達は 息をひそめている。
最初から 100体以上も 簡単に倒されたのだから
魔物だって 少しは考えるだろう。
「うむ アレは何だ?」
ようやく 建物らしい物が 遠くに ボンヤリと
見えてきたので 僕は 向かう事にした。
暫く歩くと 建物の外観が ハッキリと分かり
そこは 街の入り口にある 監視塔であった。
おそらく魔物に対しての 警戒をしているのだろ
う。
入り口の門の前にも 二人の人間が立っていた。
「おい お前はこの街に 来たんだな?」
「はい 何か食べたいと思い来ました。」
「そうか では 1000リルだ。」
「1000リル?」
「何だ 金を持って無いのか?」
「タダでは この街には 入らんぞ!」
すると 声が聞こえた。
「右のポケットを確かめてごらん」
僕は ポケットに 手を入れると 何枚かのお札が
入っていた。数えると 全部で10000リルの様だ。
その中の 1000リルを 門番に渡すと 僕は街に入る
事が出来た。
街は あまり賑やかでは無い様だ。人も疎らで
沈んだ顔をしている。
「すみませんが この辺に 食事出来る所は
ございますか?」
通り掛りの人に尋ねてみると
「あぁ そこを曲がった所に レストランがある。」
僕は 言われたレストランに行ってみると 数名の
客が居たが 笑い声も 話し声も無い 静かなレスト
ランだった。
「何か 薄気味悪いレストランだな。」
店員が来て
「注文は お決まりですか?」
「あぁ コーヒーとトーストを頼む。」
「はい お待ち下さい」
どうやら こっちの世界にも コーヒーとトーストは
ある様だ。
暫くして 店員が注文の物を 持って来たが
コーヒーは 血の色で 真っ赤
トーストは 誰かの手の平を 焦がした物だった!
「コレは!一体!」
すると また声が聞こえた
「貴方には 真眼がある。どんなに騙そうとしても
その本質を見抜く目 それが真眼。目に映っている
のが 本当の姿を現しています。」
「真眼? ではこの食べ物は 一体?」
周りを伺うと 誰もが僕を見ていた。
「何か おかしい!」
急いで 店を出ると 中にいた客も 店員も 通りを
歩いていた者も 全て 僕の周りに集まった。
「ほう これは これは 大した
お・も・て・な・し だよ。」
一斉に 掛かって来た!
僕はその場で ファっと ジャンプすると 周りが
一瞬で モノクロに変わり 時間が停止した!
僕は 地面に足が着くと 周りの一人一人の額に
触れていき 終わると 右手の指でパチンと鳴らすと
一斉にバタバタとその場で倒れ 景色は色を取り戻
した。
倒れた人達を 見ると皆 意識が無いが 死んでいる
訳では無かった。
その内の一人の肩を持って
「おい 大丈夫か?」
「うぅーーーーん ……アレ 俺はどうしてたのか?
ココで何をしている?」
皆んな 一斉に 意識を取り戻し 各自起きてきた。
「どうやら 貴方達は 魔物に操られていた様です。
今 それを解除しましたので 通常生活に お戻り
下さい。」
「あぁ そうなのか 何だか知らんが ありがとう」
「ありがとうございます。」
皆 口々に 礼を言って 帰って行った。
街の中に 入れんから 人間を操り 僕を倒そうと
したのかも知れないが この真眼のお陰で 見破る
事が出来 本当に良かった。
それから 街を 歩いて探索してみたが
後は別に違和感を感じる 所は無かった。
「今晩の 宿だけ先に 予約しておくかな。」
近くを通る人に 宿屋を尋ねて場所を聞き
宿屋に向かった。
「すみませんが 一晩良いですか?」
「はい いらっしゃいませ。 お一人ですね
前金で5000リルとなります。」
門の前で 1000リル渡したが まだ9000リルはある
筈と ポケットに手をやると 数えると10000リル
あった。
アレ? と思ったが 気にしてもしょうがないので
「はい 5000リルです。」
受付に手渡した。
僕は 部屋の鍵だけ 貰って少し情報を集めようと
酒場に向かった。場所は先程のレストランの隣に
ある。
「いらっしゃいませ! ご注文お決まりですか?」
「えぇ〜と ビール有ります?」
「はい ございますよ!」
「では ビールお願いします。」
「ありがとうございます ビール入りました!」
暫くして 店員が ビールを持って来たが
飲むと 意外と美味い。コクがあって元世界より
こっちのビールの方が 僕に合っている気がした。
もう一杯 頼もうかと店員を 呼ぼうとカウンター
越しに 声をかけようとした時 突然に
「あのぅ 今日はありがとうございました。」
声の方を向くと 今日あのレストランにいて 正気を
失っていた女だった。
「魔物に 操られていたなんて 本当に怖い思いを
致しましたが お陰で 助かりました。 失礼ですが
冒険者様ですか?」
「あっはぁぃ 冒険をしながら 魔物を退治して
廻っております。」
「もし 宜しければ ご相談があるのですが 後で
家まで ご足労願えませんか?」
「あっ 分かりました。では場所だけ教えて下さい」
僕は 家の場所を聞き 後で伺う約束をして別れた。
もう一杯 ビールを飲み干してから 先程の家に向か
って行った。
そこは 町外れの 閑静な所にあり 隣の家まで100m
は離れている程だ。
ドアの前に立ち ノックした。
ガチャっと ドアが開き 先程の女が顔を出す。
「ご足労願いまして ありがとうございます。
どうぞ お入り下さいませ。」
中に入ると 暖炉のある リビングに案内された。
「相談とは 何でしょうか?」
僕が聞くと
「はい 実は 私の両親の事なのですが もう3日も
経ちますが湖から帰って来ないのです。町長にも
話したのですが 調査隊は手慣れた冒険者が居ない
からと 言われて出してもらえず 日にちばかりが
過ぎてしまいました。
どうか両親を見つけて頂けませんでしょうか?
貴方様は 今日の昼の件でも 手慣れた冒険者様と
お見受け致しましたので 不躾とは承知の上でお願
い申し上げております。」
「ご両親が 帰って来ないとは 御心配ですね。
分かりました。明日朝 一番で その湖に行きましょ
う。ご両親のお名前は?」
「父が アラン 母がメルといいます。」
僕はこの失踪には 何かあると思い 受ける事にして
予約した宿屋に戻って行った。
次の朝ーー。
朝早く 僕は起きた。
言われた湖に 僕は向かっていた。
着くと 結構広く 見た様には海にも見える。
「何処から探すかな……。」
少し周りを歩くと
湖のほとりに 釣り道具が 落ちていた。
「この 道具は まだ新しいなぁ。」
落ちていた付近を 更に調べると 何かを引き摺った
跡が湖の方向に伸びていた。
「魔物に引き摺り込まれた可能性があるなぁ。」
僕は 湖の中に顔を入れて 覗きこむと 不思議な
事に 奥の方まで ハッキリと見える事が出来た。
「底に 何かあるなぁ。」
僕は 下着姿になって 湖の中に潜って行くと
なんと 僕は湖の中でも 息苦しい事は無かった。
「一体僕の体は どうなっているんだ。」
湖の底にある 建物に 近づくと 多くの魚が寄って
来て それが攻撃に変わった!
よく見ると この魚は 鋭い歯を持ち 元世界の
ピラニアの様だったが 大きさがもっと大きく
30cmを 超えていた。
僕は 大の字になって
「ハァーーーーーーはっ!!!」
気合いを入れると 一瞬電気が走り 湖の中に
10万ボルトの電流が流れた!
先程の魚達は 電気が流れた瞬間に バチッと
体がショートして 皆んな湖面に 浮き上がって行き
そして その魚からは 湯気が出ていた。
僕は更に底の建物の横にある穴に入ると
横穴から 縦穴になり上に出ると 広い部屋に出たが
ココは 魔物の倉庫の様だった。
中には 様々な物が保管されていたが その中に
人間もいた。20体程の人間達は 生気を吸われ
干からびた ミイラの様だったが その中で
まだ生きている2体を選んで 連れ出した。
湖面に出てから 湖畔に二人を置き 振り返ってみる
と湖面が騒ついていた。
「お前が 俺の獲物を盗んだのかぁーーー!」
湖面から出ていたのは 半魚人だった。
頭は鋭い歯を持つ魚で 体は人間。背丈は2mは
ある 大物だ。
「ほほう 盗んだとはねぇ 元々お前の物じゃない
さぁねぇ。 ハァーーーーー!」
僕は 拾った石ころを 半魚人に向けて 思いっきり
投げると その石ころは 半魚人の大きく開いた
口に入り そのまま 貫いて 遥か彼方に飛んで行っ
た。半魚人は ウゴッと言って 目を白目にして倒れ
湖の中に 沈んで行った。
僕は 湖畔で倒れている二人に近づき
「大丈夫ですか? 歩けますか?」
と声を掛けると
ゆっくりと 目を開けた。
「あぁ 私はどうしていたのか?」
「貴方達は 魔物の餌として 捕まっていたのです。
でも安心して下さい。もう魔物は倒しましたか
ら。所でお名前は なんと言いますか?」
「私はアラン 妻はメルと言います。」
僕は 娘が待つ家まで 二人を送って行った。
3日ぶりの 親子の対面で 声にならない声で
三人は抱き合って 喜んでいた。
「本当にありがとうございました。なんとお礼を
申し上げたら いいか……。」
「いいんです。それが僕の使命ですから。」
「冒険者様 !」
いきなり娘が 僕の胸に飛び込んで 抱きついた。
彼女の豊かな胸が 僕の胸に当たって その柔らかさ
が伝わってくる。僕はそっと両手で彼女の背中を
包んであげた。
つづく




