表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編ダブルパック

作者: 間宮冬弥
掲載日:2018/11/19

みなさんお久しぶりです、こんにちは、そしてこんばんは。

作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す! 元気でしたかっ?


イヤ~~ホントにお久しぶりです。確か前回ここに来たのは熱い夏の時期だったかな?


さて、今回の小説は名前に「ダブルパック」とあるようにふたつの短編小説となりまっす!

間宮冬弥さくしゃには珍しく短めの小説となっています。


それでは、本編をお楽しみください。


…ってう~ん、なんかこれじゃ味気ないから間宮冬弥さくしゃのゲーム近況でも話そうかな

って言ってもあまり、やってないけどね! 最近じゃ「ペル〇ナ5」をクリアして

今は「ブ〇ッド〇ーン」をプレイしてるかな? 「ブ〇ッド〇ーン」に関しては、難しい!

と叫んでいるけどね!

あ、双葉ちゃん最高って言ってました! あははっ!


では、改め本編をお楽しみください。それではっ!


 ◆短編その1「電波時計の日常」の話


 時計。それは人間に時間を示してくれる、人類の叡智が作り出した道具だ。

 時計。止まることの赦されない三つの針は時を刻み永遠に動き続ける。


 しかし、どうだろう? 時計たちもたまには休みたいときもあるのでは

ないだろうか?


 一年中、時を刻み続ける時計はすでに疲れているのかも知れない。疲れ果てて

いるのかもしれない。止まってしまいたいのかも知れない。


 この物語はそんな時計の三つの針に焦点を合わせた物語である。


 時刻は九時五十五分。


 時計盤は静かに時を刻み、三針はいつもどおりに十二個の数字の周りを

回り続けている。


 いつも通り。いつも通りの光景。時計盤を三針が回り続ける。変わり映えのしない

いつもの日常だった。


「長針先輩、自分疲れたっす。止まっていいっすか?」

 長針先輩とよぶ声の主は短針。時・分・秒の三刻の『時』を司る短い針だ。

 正確は言葉を聞けばわかるか軽い正確。チャラいと言われてもおかしくない本当に軽い性格の短針だ。


「イヤイヤ短針、止まっちゃだめだろ? お前は時計だろ? それに 見ろよ。

秒針なんて年中止まらずに回ってるだろ? 回り続けてるだろ? 少しは見習えよ」

 短針の暴言にそう諭すのは長針。『分』を司る針だ。短針とは逆でまともな性格の

針だった。


「おふぅ……あいつ、そのうち死ぬんじゃないっすかね?」

 短針は長針の先で走り続ける秒針を見て、心配そうに長針に声をかけた。


「どうしても止まりたかったら、電池さんがお役目を果たすまで待つんだな」

「厳しい世界っすね。時計の針界って」

 などと話している時でも秒針は走り続けて秒を刻む。ここはデジタル式時計ではなく昔ながらのアナログ式の壁掛け時計だ。


「電池さんはアルカリ種族でしたっけ? 充電池種族でしたっけ?」

「う〜ん、どっちだったかな? 時計はそんな電力は使わないからマンガン種族

じゃね」

「あ、でもこの時計ってアレが付いてるじゃないですか?」

「ああ、アレね。だとしたらあながち充電池って線も悪くないかもな」

 電池の種族の話をし、突然短針が『なぁ秒針、お前どっちだか知ってる?!』と

秒針に大声で質問を飛ばす。


「すみません。知らないでぇぇぇええぇえぇぇえぇぇぇえっすっ!」

 秒針は長身と短針を通り過ぎる間際に秒針は大きな声で答える。


 なぜ、大きな声で言わないといけないのか? それは秒針は止まらずに通り過ぎて

しまうからだ。なので常に大声で言わないと相手に聞こえない。


「もし充電地種族ならしばらくはお役目が続きそうっすね」

「なら電池さんに聞いてみたらどうだ?」

「え〜〜〜!? 時計盤の真裏っすよ。聞けないっす。それに6時あたりの

裏じゃないですか? 今まだ10時前っすよ?」

「まぁ、それもそうだな」


「ところで先輩知ってます? この前スマホの時計が話してたんすけど……」


 そんな他愛もない会話が彼らの日常のひとつだ。常に回り続けていつ三針達は

こうしてお互いの針が近い時刻になると色々と話す。くだらないことも話せば、真面目な話もする。例えばこれからの時計界などと。


 ◆


「先輩、自分五分くらい止まっていいっすか?」

「おまえなぁ……まだ言ってんの? 俺ら時計だよ? 時刻がズレてたら

ヤバイだろ? それに、お前が止まると俺も止まるんだよ? 秒針だけ虚しく

回り続けるんだぞ? わかってる?」

 時計は短針が止まると連動している長身も止まる。だが、秒針は長針と短針とは

まったく連動していないので回り続けることになってしまうのである。

 そうなってしまっては、長針の言うとおり秒針だけが意味もなく回り続けて

しまう。


「いいじゃないっすか? 今は家の人は誰も居ないんだし。誰も見てないっすよ。

それに一年中休みなしじゃあ、秒針がマジで死んじゃうっす。電池さんなんて

早くお役目が来て終わっちゃうっすよ?」

 短針は早く休みたいのか長身を急かしている。そんな急かされた長身は、

『だけどなぁ……』と言って短針の提案を渋って回答はしない。


「先輩。俺もう疲れたっす! 回り続けて半年っす! 五分だけっすよ! おねしゃっす!」

「……わかった。五分だけだぞ。五分経ったらちゃんと五分進めろよ」

 懇願する短針に長針が折れる形になったが、結果として休みが得られたので

短針は速攻で『あざっ〜〜す! 秒針、お前も休めよ!』と秒針に呼びかける。


「ありがとうございまっす! 今そっちに行きますんで!」

 秒針も短針の提案を受け入れて二針の元へと向かうのだった。


 ◆


「いや〜久しぶりですね。長針先輩と短針先輩とこんなにゆっくりと話したのは」

 秒針が合流して、しばらくたった後、秒針が口を開く。秒針は三針の中では

『秒』を司る針。性格はいたって普通。真面目でもなく不良でもない。どこにでもいるようなステレオタイプの性格だった。


「そういや、この家に来て少し話して、あっという間に動かされたからな」

「懐いっすね。パッケージに入っていたときは毎日話していたっすけどね」

「俺、電池さんが起動したら速攻で最速スタートですから疲れます!」

「まぁそうなるわな」

「ほかのみんなは元気っすかね?」

「どうだろうな。順調に売れたら元気でやってるんじゃない」


 その後、長針、短針、秒針は話が弾み、五分以上話してしまっていた時に、

突然、『おい! おい! 長針、短針、秒針! 聞こえるか!?』と鬼気迫る声が

三針の耳に入る。


「おっ、電池さん? ちょうどいいっす。電池さんに訊きたいんすけど、」

 その声は、時計盤の裏にいる電池だった。しかし電池の声は何か急かすような切羽

詰まった声だった。


「そんなん後だ! 今、ここの家のもんが帰ってきて……その娘が強制受信を

押した! アイツが来るぞ!」

 鬼気迫る電池の声で、三針たちは目を合わせる。


「マジっすか!?」

 短針が電池に『アイツがっすか?』と確認すると『早く、時間を確認して! あいつが来るから!』と電池の代わりに別の声が帰ってくる。


 『あいつ』と聞いて、焦り気味の怒号を放ったのは時計盤の6時だった。6時は『急いで! あんた達……死ぬかもよ!』さらに急かす。


 ちなみに、6時は時計盤では数少ない女子だ。


「なんだ! お前たち見てなかったのか!?」

「マジか……、これはまずいな!? 短針は動けるように待機しろ! それと秒針は最速で12時まで走れ!」


「いいだろう。我は待つ。この光りと闇の狭間で。さあ、来るがいい、秒速の貴公子である秒針よ! この右手の封印が解けないうちに!」

「黙れ厨二病! 12時(おまえ)は起きるな寝てろ!」

 長針は場違いな言動を言い放った12時に長針は怒鳴りつけた。12時は厨二病持ちの厄介な時刻だった。


「秒針! 12時は無視して走れ!」

「は、はい」

「電池さん、内部時計は何時ですか!?」

「10時25分ってところだ!」

「ありがとうございます! 俺は5時まで走るから短針は10時で止まってろ!」

「長針先輩! 気をつけてっす!」

「いいから動け10時! 短針が近づいたら声かけて止めろ!」

「わ、わかりました!」

 10時からは真剣な声が飛んだ。


 そして、長針の指示でそれぞれが動き出す。


「電池さん、アイツが来るまでどれくらいですか!?」

「アンテナの話だと、あと10秒だ!」

「間に合うか!?」

「間に合わせろ! アイツがトラウマの受信ICとCPUがかなり震えている!」

 電池は自分の後方にいる受信機をCPUをちらっと見て長針に大声で告げる。


「くそっ!」

「急げ! モーターが準備運動(アップ)を始めたぞ!」


 長針は駆ける。5時まで駆ける!


「長針! ヤバいぞ、衝撃がくるぞ!」


「くっ! 間に合えええぇえぇええぇええぇえええええぇぇえええ〜〜〜〜!」


 そして、恐怖するアイツがくる!


 ドン! と、時計盤全体が揺れる衝撃。時計盤に振動が走り、風が波紋のように広がる。それ周りには砂ほこりが舞う。それは空からの訪問者。正確な時を測る者。


「時刻がおぐれているヤツはいね〜がぁ〜〜」


 三針と電池がアイツと呼ばれている正体はセシウム原子時計を元にした日本標準

時刻を強制的に修正する時刻修正波。通称『標準電波』だ。


 恐ろしいほど鍛えあげられた体は隆々と筋肉が映え、服は今にもはちきれそうに

なっている。そして鬼のような仮面をかぶった電波は恐ろしいくらい大きなトゲが

生えた棍棒を軽々と持ち肩にかけ時計盤を闊歩する。電波は金色のオーラを纏い、そのオーラの周りにはイナズマが発生していた。


「お……お疲れさまっす! 電波さん。今日はど、どうしたんスか?」

「おう、強制受信(つうほう)があっでな! で、おぐれているヤツはいね〜がぁ」

「だ、大丈夫ですよ。俺らちゃんと時刻通り時を刻んでますから」

 電波は自身の正確時計で時刻を確認する。


「10時26分17秒……」

 時刻を読み上げると、長針、短針、秒針をそれぞれ確認する。


「1分、1秒でもおぐれているど……この棍棒の餌食だがらな!」

 電波は棍棒を時計盤全体に見渡せるように天高くかかげる。


「だ、大丈夫ですよ」

 秒針が恐怖を押さえながら、駆けながら電波に告げる。


「……棍棒使わなくても、電波さんはワンパンだけで十分そうっスけど」

「ちょ、黙って!」

 長針は短針の暴言を制止、電波に一礼した。


「……おう、許容範囲だ! その調子でおぐれるんじゃねーぞ!」

「ま、任せて下さいよ。電波さんにご足労は願いません」

「そ、そうですよ。俺たちまじめに時、刻んでるんで」

「おう、おでは帰るからな!」

 棍棒を持ってない左手をヒラヒラさせ、時計盤から離れて、ひときわ大きな金色のオーラを発生させて、飛び去っていった。


「あ、はい! お疲れさまです!」

「おつっす!」

「お疲れさまでした!」

 三針がそれぞれ飛び去っていった電波にあいさつをしてそれぞれ目を合わせる。


「やばかったっスね!」

「ああ、もしあと数秒、時刻合わせが遅れていたら……この時計盤は血の海に

なってたとこだ」

「ううっ……こえぇっすね! あ、俺しょんべん漏れそうっス!」

 それぞれ時刻が遅れているときの惨劇を思い浮かべて恐怖していた。


「電波さんマジ、ハンパないって! あの筋肉マジパネェっす!」

 短針はまぶたに焼き付いた電波の隆々とした鋼の筋肉をフラッシュバックさせ、

恐怖からか少し興奮気味に声を荒げる。


「筋肉よりも俺はあの棍棒がヤバそうだったけどな……」

 長針も同じように電波の棍棒をフラッシュバックさせていた。


「確かにあの棍棒はホントにやばそうです。でも……むしろ棍棒って言うよりかは

金棒って感じでしたけどね……」

「金棒……肩に担いでたよな? あのトゲで肩は痛くないのかな? それになにあの身体から出てる金色のオーラは?」

「きっと筋肉が鋼鉄並に固いんスよ! あれってもう筋肉の鎧でっスよ! 鎧!」

「俺……電波さん怖いです!」

「……それを言うなら俺もだ」

「俺もっス……」

 過ぎ去った電波は恐怖を置き去りにして、未だに時計盤(そこ)に在り続けたの

だった。


「光りの波動を纏う者。それはいずれ蒼と紅に染まる。戦神すらも越える者となるか……」

「……ねぇ12時、私の視界から消えてくれない。その言動がすごくイラつくんだけど?」

「光と闇、我12時は狭間を生きるもの。それを理解できないか……我が半身よ」

「やめてくれる? その半身って言うの? ねぇやめてくれる?」

 目の前で対峙する12時と6時。会話の通じないふたりの言い争いを見ながら短針は『相変わらず、仲悪いっスね』と呟く。


「いや……逆に仲がいいのかもな」

「そうっスか? 俺には超仲が悪そうに見えるっスけど……」


 通り過ぎていく秒針を眺めながら長針は『仕事に戻るか……』と短針に

促し『そうっスね』と返したのだった。


 ◆短編その1「電波時計の日常」の話 完



 ◆短編その2『JCBカードちゃんの日常』


 世界には6大国際カードブランドというものがある。


 何年もの間、お互いしのぎを削りあっているそんなカード業界。しかし、そんな

しのぎ合いも知らず、仲良くしている世界もある。

 ただひとつ違っていたのは、カードは魂と思想を持った『女の子』になっている

という事だった。


これはそのうちの三つの国際ブランドである『JCB』『VISA』『MasterCard』の

 日常を描いた物語である。


 ◆


「ホントにいいの? JCB?」

 ボックス席に着くなりいきなりそう口にしたのはVISA。紅いをふたつのおさげに

している、いわゆるツインテールの髪型をした十代くらいの黒いセーラー服を着崩している少女だった。


「だいじょ〜ぶ。今日はわたしのお・ご・りだから遠慮しないでどんどん食べて」

 

 VISA続いて席に座って余裕たっぷりの笑顔で答えるJCB。セミロングの髪型をして白のブラウスに赤のネクタイそしてチェックのスカートといった制服を着たVISAと同い年の少女。


 ここはすしチェーン店『スモロー』店内。最近出来たこのすし店舗に三人は食事をしに来ていたのである。そして、その食事代を払うのはVISAとMasterCardを誘ったJCB。


「じゃあ、遠慮なくいただくね」

 すしレールの上段棚にある湯のみを三つ取りテーブルに置いていたのはMasterCard。紺色のブレザーに白のブラウスと青のネクタイ、スカートの制服を着たJCBと同い年の少女だ。


「ウェットティッシュいる?」

「ひとつちょうだい」

 MasterCardのとなりに座ったVISAが告げる。


「あ、わたしも」

 JCBもVISAに倣い、言葉を投げる。

 MasterCardはウェットティッシュを三つ手に取り、ふたりにひとつづつ渡す。


「はいどうぞ。抹茶パウダーはいくついれる?」

「私は一回で」

「あ、わたしも」

「はーい、今入れるね」


 VISAの隣に座ったMasterCardはテーブルの端にある抹茶パウダーを取り、さじでそれぞれの湯のみにパウダーを投入し、テーブルに併設してある給湯器からお湯を注ぐ。


「はいどうぞ」

 そして最後にJCB、VISAの手前に湯のみを置いた。


「ありがと。うーん、おいし!」

「ホント、おいしい。MasterCardがいれたお茶ってホントにおいしい」

「えぇ〜、そんな事ないよ。ただパウダーを入れてお湯を入れただけだよ?」

「いやいや、なんていうか、パウダーとお湯の対比が絶妙っていうかさ そんな感じ?」

 JCBがそう取り繕うと、VISAも『そうそう。そんな感じ』とJCBに同意をした。


「ありがと。じゃあ、おスシ食べよう」

 MasterCardは照れ隠しなのか、すしレーンから素早くまぐろを取って『おいしそうだね』とふたりに言う。


「へぇ〜おいしそう。私もおすし食べよう」

 VISAはレーンに視線を向け、流れてくるすしを品定めするかのようになめるように見ている。


「どんなのがあるんだろう?」

 メニューが気になるのか、JCBはテーブル上部に設置してある、タブレット端末を手に取る。


「おお、結構メニューあるね。お、スイーツも充実してるよ」

 端末を指先で操作するスワイプ動作で次々とページをめっくていたJCBに『えっ、ホントどれどれ、見せて!』とVISAが食い入り気味でJCBの方へと身を乗り出してきた。


「ショコラケーキにチーズケーキ、ミルクレープにいちごパフェか……おいしそう」

 テーブルの真ん中でタブレット見ていたVISAに『VISAちゃん。甘いもの食べると太るよ?』と声をかけた。


「うっさいわね。いいのよ。私、食べても太らない体質だから」

 MasterCardの『ホントにぃ〜』の言葉を無視してVISAはチーズケーキをタップして注文を確定させていた。


「ちょっ、いきなりチーズケーキなの!?」

「そうよ。文句あるの?」

「おすし屋さんに来たんだからお寿司食べようよ?」

 MasterCardが進言したがVISAは聞く耳を持たず、『いいの。ケーキは前菜だから』と謎の言葉を残す。


「なにその迷言? 違うからね。ケーキはむしろ食後だからね?」

「何それ? 食後も食前もお腹にはいれば同じでしょ?」

「VISAちゃん……それを言ったら身も蓋もないような……」

 JCBのツッコミに『食べたいんだからいいの?』と応えるVISA


「……さすがカード使用率56%のVISAちゃん。シェア1位は違うなぁ……」

 そう呟かずにはいられいJCBであった。


 ◆


「ハマチおいしぃ〜」

「サーモンもおいしい! これで108円なんてスモローすごすぎ!」

「数の子もおいしいよぉ〜?」

 スモローに入店して早三十分。三人はそれぞれお寿司を楽しんでいたが、ひとつJCBとVISAは気になることがあった。


「次はぁ……うん、これにしよう」

 それはMasterCardが頼んでいるお寿司。注文したお寿司がタッチパネルに表示される


「……」

「……」


 MasterCardが頼んだのは『松前漬け軍艦』

 最初はまぐろ、前はきゅうり巻き。さらに前はたまご。その前は赤貝、数の子。そして、今注文した『松前漬け軍艦』その全てがなんとなくお年寄りが好きそうなお寿司のネタだった。


「……MasterCard。あんたおすしのセレクトが渋いわね」

「ん? そう? 普通だと思うけどぉ?」

 答えたMasterCardはレーンからホタテを取り、一貫をひとくちで食した。


「サーモンとかはまちとかは食べないの?」

「サーモン? はまち? 食べるよ? 食べたくなったらね」

 JCBの問いかけに答えたMasterCardは残ったホタテを箸でつかみ口へと放る。


「そうなんだ……なんかごめんね」

 JCBは流れてきた期間限定品の『かりかりこ』を手に取り食べたのだった。


 ◆


「ふぅ……結構食べたわね」

 テーブルに重ねられた皿を見てVISAが呟く。


 積み上げられた皿はふたつの塔を築いていた。その数はざっとみ十皿以上はあるだろう。


「ひぃふぅみぃ……十八皿かぁ……けっこういったね」

 塔の皿を数えたJCBが皿の数をVISAとMasterCardに告げた。


「さらにぃ……」

 MasterCardは視線をVISAに向け、『デザートもあるからね』と言の葉をこぼす。


「デザートはVISAちゃんだけどね。五皿か。太るんじゃないのぉ、これは?」

 形の違うデザート専用皿を数えたJCBがVISAにジト目で口に手を当てて苦言を告げると『う、うっさい』とすこし焦りと恥ずかしさの混じった、微妙な感情の言葉で返したのだった。


「で、まだ食べるの?」

「食後のデザート! これでフィニッシュよ」


 軽くキレ気味で、VISAはタッチパネルでカッププリンを注文したのだった。


「……デザートは前菜じゃないの?」

 JCBのツッコミを華麗にスルーするVISAであった。



 ◆



「……JCB大丈夫なの? 結構な金額になりそうよ?」

「大丈夫、大丈夫。ヘーキヘーキ」


 テーブルに積み上げられた皿の塔の精算が終わり、レジへと向かい順番を待つ。


「……」

「? どうしたの? VISAちゃん。お腹をさすって? もしかして痛いの?」

「あ、いやそうじゃないけど……」

 MasterCardの言葉に、相づちを打つが、お腹をさするのを止めないVISAはお腹をなぞるように両手を何度も動かし、スカートとブラウスの間に親指を押し込んでへりをなぞる謎の行動を繰り返している。


「やっぱり、自分でも思うんじゃないの? 食べ過ぎたって」

「思ってない」

「ホントにぃ〜? 帰ったら体重計に乗って腹筋、腕立て、背筋やったり、明日の朝は

早朝ランニングとかするんじゃないのぉ〜」

「腹筋……ランニング……」

「あれぇ〜VISAちゃ〜〜ん。もしかしてぇ、トレーニングプラン思考中ですかぁ?」

 VISAは逡巡の後「……し、してないし、トレーニングなんてしないわよ!」と

JCBに言葉を投げ返す。


「ホントにぃ〜」

「ホ、ホントに……し、しないんだからね!」

 ジト目でVISAを見やるJCBの言葉に、動揺を隠せないVISAだった。


「ツンデレVISAちゃん……かわいいですよ」

 MasterCardの小さいつぶやきは、ふたりには届いていないのであった。



 ◆



「えっ? えっえぇえええええ〜〜〜〜〜!! なんでぇえぇえぇええ〜〜〜!!」

 レジカウンターでの店員一言。その言葉に大きな声でJCBは驚きと、疑問の声を

上げる。


 それは、いざお会計金額を告げられ、JCBが『JCBゆびさきスラッシュ一括で』と言ったときに起こった。


「申し訳ございません。当店ではJCBでのお支払いは対応しておりませんので……」


 二十代前半くらいの女性店員が申し訳なさそうに言葉を漏らす。


「ほ、ホントですか……?」

「はい……すみません」

 そうなのだ。ここスモローではJCBで決済はできない。。


 その証拠にレジにはVISAとMasterCardの二種類のロゴが掲示されているのみだ。

 例外などは許されない。それは絶対的な、覆ることのないレジで告げられる

無言の事実なのだ。


 スモローで使えるのはVISAとMasterCardの2種類のみ。揺るぎない事実


「でも、でも、スモローは日本生まれの日本企業ですよね?」

 食い下がるJCB。


「はぁ……たぶん……」

「じゃあ、日本生まれのJCBカード。100%日本産企業のJCBが使えないって……

それって、どうゆうことですか? 寂しいじゃないですかぁ……」

「あ、その、寂しいと私に言われましても……」

 食い下がるJCBに困った店員は、しもろどもろの対応を余儀なくされている。


「じゃあ、QUICPayは? JCBcontactlessは使えますか?」

「コンタクトレス? えっと…… それはタッチ決済の事……ですか?

もしそうなら各社のタッチ決済と電子マネーは対応しておりませんので。申し訳ございません……」

「うそでしょ……」

 肩を落としうなだれるJCBの肩に手を乗せたVISAは『あきらめなさい』と残酷な

言葉を投げた。


「かわりに私が払うよ」

 VISAが自分の人差し指を胸元移動させ、店員に『手のひら決済は使えないから……VISAゆびさきスラッシュ一括でお願い』と店員に言葉をかけると『かしこまりました』と店員は笑顔で答えた。


「少々お待ちください……では、こちらのスリットに指乗せてを下にスライドさせて

ください」

 店員の言葉通りにVISAは右手の人差し指をスリットに置いてそのまま指を下まで

一気に振り切るように自分の体の方向までスライドさせた。


「ありがとうございます。レシートがでますのでお待ちください」

 店員がレジ操作をしている最中でもJCBは今でも信じられないのかレジに掲示されているVISAとMasterCardのロゴをマジマジと見ていた。


「ロゴを見たってJCBのロゴは無いわよ」

「……ううっ……そうだけど……」

 未練がましくJCBがロゴを見ていると『お待たせしましたこちらがお会計レシートとクレジット決済の控えとなります』と、店員が二枚のレシートをVISAに渡す。


 VISAは『ごちそうさまです』と店員に言葉を伝えた。


「ほら、行くわよJCB」

「ううっ……ちょっと待って」


 未練がましくVISAとMasterCardのロゴに熱視線を……いや、恨みを含んだ視線でロゴを見ていたJCBを無理矢理引っ張り出して、MasterCardの元へと戻っていく。



 ◆



「……VISAちゃん……ごめんね。お金払うよ」

「あ、いいよ。別に。今回は私のおごりって事で」

「だめだよ。わたしが最初に『今日はわたしのおごり』って言ったんだもん。払うよ」

「いいって」

「VISAちゃん。大事なことだよ。これはわたしが払うはずの金額で、VISAちゃんは

払わなくていい金額なんだよ。それにほかのブランドにポストペイするなんて

VISAとJCBの信用問題になるから」

 JCBはVISAを目をまっすぐに見て、それは睨むと似た視線。それほどJCBにとって

ほかのブランドからの借入金は心が痛む行為。苦痛だった。


「……そうだね。わかった。ちょっと待ってね」

 VISAはJCBの言葉を汲み取り、スマホをカバンから出して『コネクト』アプリを

起動させた。


「えっと……二千……四百……」

 レシートを見ながらフリック入力を手早く終わらせ、VISAはJCBに『2487円ね』と

金額を伝えた。


「2487円ね。オッケイ払うよ」

「送金はどうする? コネクトのQRコードでいい?」

「うん、お願い」

 JCBも同じくスマホを起動させて、コネクトを立ち上げ、アプリ内カメラを

起動させた。


「オッケイ」

 VISAはQR作成ボタンを押して、QRコード作成を確定させる。


「ほい」

「そのまま持っててね」

 スマホのカメラをVISAのスマホに表示されているQRコードに合わせ、

オートフォーカスで自動ピント補正で読み込む。


「終わったよ」

 スマホからピロンと電子音がなり、決済が完了したことを知らせる。決済を確認した

VISAは『うん、ちゃんと入金されてるよ』と金額を確認。


「こっちも、完了っと」

 コネクトPayから出金完了を確認し、スマホをしまう。


「じゃあ、お会計も終わったことだしぃ〜帰ろっか?」

 一連の行動を見ていたMasterCardがふたりに声をかけ促す。だけど、JCBは唇をとがらせ『う〜ん……納得できない』とVISAとMasterCardに問いかけるように、聞こえるように言葉を漏らす。


「何が?」

 と、VISA。


「JCBが使えないって事。だって、スモローは日本企業なのに。日本で営業してるのにどうしてJCB(わたし)が使えないの? 海外カードのVISAちゃんはMasterCardちゃんは使えるのに……わたしやっぱり納得できないよ」

「納得できないってあんた……」

「そうだよ。使えないのはスモローの方針だからしょうがないんじゃない?」

「だったら……その方針をわたしは知りたい! すみません!」


 と、JCBは振り返り、レジカウンターにいる顔が引きつっている店員声を上げた。

この時の店員はきっと『いやな予感がする』や『厄介ごとに巻き込まれる』と

思っていたに違いないだろう。


「あの、店長ちゃんを呼んでくれませんか?」

「は、はい?」



 店員のさらに引きつって青くなっていたのは言うまでもないだろう。


 ◆


「よし、子連れが増えてきたよ! サーモンや、スシドックを回して! それとスイーツの注文も増えるよ! 注文に気を配ってね!」

「はい! 店長ちゃん!」

 従業員に檄を飛ばすのはスモロー店長のスモローちゃん。


 見た目は十代前半そこそこのハッピとヒザまでのハーフパンツをはいた子供だが経営手腕は子供とは思えないほど有能だ。


「今日の営業が終わったら、敵情視察を兼ねて、くの寿司で慰労会だよ! 閉店まで気張って働いてね! くの寿司は私のおごりだから気にせずどんどん食べて! そのかわり閉店まで気を抜かないでね!!」


 それを聞いた従業員は『イヤッホ〜』やら『店長ちゃん、あざっすです!』やら

『くの寿司、最高かよ!』などと叫ぶ。

 スモロー店長ちゃんは従業員の間で親しみを込めて『店長ちゃん』と呼ばれている。


「おっと、くの寿司の賞賛はそこまだよ! 敵情視察って事を忘れないで!」

「うぇええ〜〜〜いいぃいいィイィ!」

 まるで勝ち鬨をあげたような声を上げるスモロー定員一同。


「あ、あの〜店長ちゃん……」

「どうしたのぉ! 我がかわいい従業員さん!」

 水を差す形で、ひとりの除せ店員がスモロー店長に申し訳なさそうに声をかける。


「あの、その……店長ちゃんに会わせてほしいってお客様が……」

「私に?」

「はい……その」

「その様子だと。何かのトラブルかな?」

「はぁ……トラブルって言えばトラブルなんですけど……」

「わかった状況と、お客様の居場所を教えて」


 こーして、先ほどレジにいた店員はスモロー店長ちゃんに事の概要を話したの

だった。


 ◆


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


 案内待合席で響く粗食音。


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「店長さんまだかな?」

「そうね。ちょっと遅いわね」


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「お客さん入ってるし。忙しいかもね」

「そうだね」


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「……」

「……」


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「あ、あの……MasterCardちゃん……」

「なに?」


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「えっと……その『かりかりこ』なんだけど……食べ過ぎじゃない?」

「そうね……えっと……私もそう思う。た、食べ過ぎなんじゃない? さっきまで

私たちってお寿司食べてたじゃん?」

「わかっているんだけどぉ……かりかりこって一度食べたら止まらないんだよね? 特にこの『無限かりかりこ 梅こんぶ味』は。やめられない、とまらないってくらいに手が止まらないおいしさって感じなんだよねぇ〜〜」

 円形の容器からスティック状の整形されたジャガイモのスナック菓子を

一本取りだし、口に運ぶ。


「えっと……」

 MasterCardの言葉に戸惑いを隠せないJCB。


 そのときふたりの心の内はこう思っていた。『無限かりかりこってなに!?』と。


「あれ、VISA? それにJCBにマス子もいるじゃん?」

 と、『無限かりかりこ』でもやもやしているところに、来店したのはショートカットヘアが似合っているアメリカン・エクスプレスと背が低い事がアクセントとなっていてボブヘアがかわいいダイナースクラブだった。


 ふたりとも赤と黒の色違いの長袖パーカーに膝まであるチェックのスカートとパーカーの下には青と白のTシャツを着ていた。


 ちなみにマス子はMasterCardのあだ名だ。アメリカンエクスプレスが『名前が長い』とMasterCardに抗議して、マス子になった。それと同じ理由でアメリカンエクスプレスも『アメリ』のあだ名を襲名した。


「あ、アメリちゃん、ダイナーちゃん、ちわっす!」

 JCBが入ってきたふたりに挨拶を交わすとVISAとMasterCardも同じく『ども〜』と

挨拶を交わす。


「お〜どもっす。で、なに? もしかして店、混んでる?」

「ううん、クレームを入れてるの」

「へっ? クレーム?」


 ◆


「と、言うわけでJCB(わたし)が使えない理由を聞きたくてね」

「う〜ん。それならついでに私たちも使えない理由を知りたいなぁ〜」

 JCBの一部始終の解説を聞いて、アメリカンエクスプレスがひとつ頷いた。


 ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、

ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ、ポリポリ。


「どう思うよ。ダイナーは?……ってあいかわらずゲームだなお前は」

 スモローに来店しても一言もしゃべらないダイナースクラブはゲームに勤しんで

いた。しかし、今はやりのスマホのソーシャルゲームではない。


「このまえはビータってヤツだったけど、今何やってんの? うわ、何これ?

色がないじゃん? 白黒画面?」

 画面をのぞき込んだアメリカンエクスプレスはその画面の色のなさに驚く。ダイナーズクラブがプレイしているゲームは色がいっさい無い。いや正確には白と黒の色はある

がそれ以外の色がいっさいなかった。


「……ゲームボーズ……」

 ゲームが画面から目を離さずに淡々とゲーム機の名称を告げる。しかしダイナーズクラブの指は忙しなくボタンを押していてた。まさに押すことに余念がない状態だった。


「ゲームボーズ? なにそれ?」

「弁天堂携帯ゲーム機……」

 抑揚無く淡々と話すダイナーズクラブにアメリカンエクスプレスは慣れた言葉で

『今度はなんてゲーム』と問いた。


「……時空の覇者ga・sa3」

「ふぅ〜ん。ダイナーが楽しいそうで何よりだ! あたしは!」

 話を閉めようとしたところ画面をのぞき込んでいたにVISAは『ずいぶん古いゲームね』と声を振り込んだ。


「うん、確かに。白黒だし……画面も小さいしなんかザラついてるし。ねぇこれって

いつ頃ゲームなの?」

 と、VISAに続いてJCBも声を漏らす。


「発売は1991年……]

 ダイナーズクラブが答えるとふたりは『1991年!』『ふるっ!』と驚きの声を上げる。


「そんな昔からゲームってあったんだ」

「うん……わたしたち(クレカ)も歴史長いけど……意外とゲームの歴史も長いね……」

「……これは携帯ゲーム機……据え置きゲーム機はもっと前から出てる……」

「えっ、そうなの?」

 JCBは興味を持ったのか、ダイナーズクラブに聞き返す。


「……最初のゲーム機ってファミコンが一般的で有名がちだけど……実はもっと前からゲーム機は出てる……」

「へぇ〜」

「ファミコンより以前のゲーム専用機は……1972年のオデッ……」


「すみません! お待たせしました!」

 ダイナーズクラブがゲームの解説が始まろうとした週間、幼い女の子の声が五人の

耳に入ったのだった。



 ◆



「ううっ……遅くなっちゃったな……」

 色々としていたり、指示だしで遅くなっちゃた……急いで行かないと……


 わたしはスモローの店長。この店を切り盛りしているんだ。こんなに小さいし、

年齢も低いけど……この店を任させているんだ。しっかりしないと!


「お客様……怒ってないといいけどなぁ……」

 そんな楽観的希望を持っちゃう……怖いお客さまじゃないといいけど……

 確か女の子の三人組って言ってたな。


 待合い席が迫り、わたしは視認で該当する女の子三人組を探す。


「あれかな……でも……五人居るけど……」

 待合席には、高校生くらいの女の子が五人。話では三人のはずだけど……


 ふたりは後ろを向いていて顔がわからない。そしてひとりは黙々とかりかりこを

食べていて……ひとりは……? うつむいて指を動かして何かを一心不乱にやっている。そしてもうひとりは、そのうつむいている女の子に話しかけている……


 (もしかして……増えた? なんで……)

 胸中で思いつつ、お客様に近づく。


「すいません! お待たせしました!」

 わたしはお客様が待っている待合い席に着くやいなや『遅くなりまして、

申し訳ございません!』と頭を思いっきり下げた。


「スモローちゃ〜〜ん!」

「えっ……あ! ちょっ……とぉ?!」

 突然、駆けだしてきたお客様がわたしに抱きつく。『あ、あの、どうかされましたか……おきゃ』と、言い掛けたそこでわたしは抱きついてきた人物に気づく。

「JCB……さん?」

「スモローちゃん! どうしてなの?! JCB(わたし)よりVISAちゃんやMasterCardちゃんの方がいいの! あ、スモローちゃんすっげえいい匂い……」

「へっ?!」

 何を言っているのかわからない……JCBさんより、VISA? MasterCard? いいってなに?


「やっべ〜いつまでも嗅いでいられる匂い……クセになりそう」

「あ、あの……JCBさん……」

「あ、そうだ! ねぇ、どうして……どうして|プロパー(自社)カードを出してないあのふたりは使えて、プロパーカードを出している私が使えないの? ブランドライセンスばかり企業に貸しているあのふたりは使えてどうして私は使えないの? スモローちゃんは日本企業なのにィ! どうして加盟店になってくれないの! なんで純日本製カードである私が使えないのぉ〜〜!?」

 後ろにいるふたりに指を差してわたしに訴えかけてくる……


「……軽くディスったわね」

「うん、軽くディスったね」


 かりかりこを食べているひととツインテールのひと……そうか、あのふたりが

VISAさんとMasterCardさんなんだ。


「どうして! ねぇ、どうして! スモローちゃん!」

「えっとぉ……ですねぇ……」

 抱きつかれて泣きつかれて、どう考えても脱出不可能な状態。ど、どうしょう……


「JCBさん……えっと……JCB(あなた)が使えない理由はですね……その……なんて言うか……その……」

「お、教えてぇ! お願いだから教えて! 悪いところがあったら私がんばるから!」

「えっと……高いんですよね……JCBさんって……」

「ううっ……高いって?」

「その……加盟店手数料……」

「へっ……?」

「VISAさんやMasterCardさんはその比較してJCBさんより安いんですよね……手数料が……」

「そ、それはその……アメリちゃんやダイナースクラブちゃんを提携(やしなっ)てて

それで……ある程度は仕方ないっていうか……」

 声に勢いがなくなってる……でも、こればっかりはしょうがないんですよ。


「うちって……お寿司の価格を安く押さえるためにはその、申し訳ないですけど……いりいろと切り詰めたり……えっと……JCBさんはその、やっぱり高いんですよね……」

「ううっ……手数料……?」

「は、はい……」

 抱きついたまま、固まってしまうJCBさん……はっきりと言い過ぎたかなぁ……

悪いことしたな。


「じゃあ、あたしたちが使えない理由って? もしかしてJCB(こいつ)に加盟してないから?」

「えっと……すみません。どちら様でしょうか?」

「あ、ごめん。わたしはアメリカンエクスプレスカード。アメックスってのほうが有名かな? で、こっちのずっとゲームをしているヤツがダイナースクラブね。よろしく」

「あ、はいよろしくお願いします……」


 へぇ……この元気がいい人がアメックスさんかぁ……で、こっちのゲームをしているひとがダイナースクラブさんかぁ……ここに来てからずっとゲームをしてて一度もわたしの事、見てないし……そんなにおもしろいゲームなのかな? あ、持ってるのスマホじゃないんだ……なんだろ? 四角いアレは?


「使えないのはわかった……でもね、それはお客様によりよいサービスを提供するために必要な……その経費になるっていうかそのね。うまくえないけど私にとっては必要なんだ……そのごめんね」

「いえ、謝らないでください。わかっていただけて……ありがとうございます」

「ううん……いいよ」

 残念そうな顔をして……とても悲しい顔で、JCBさんは抱きついていたわたしから

離れていった。


「しつこいようだけど……これで最後。今後もJCB(わたし)は使えないの?」

「……はい。本部からはとくに……新規決済方法予定にはありません……」

「そっか……うん、わかった。ごめんね困らせて」


 その笑顔はとても……曇っていて、とても悲しい顔だった



 ◆



「VISAちゃん。MasterCardちゃん。帰ろっか」

 スモローちゃんを見送ってふたりに声をかける。


「JCB。あんた……泣いてるの?」

「かりかりこ食べる?」

「な、泣いてないよ?」

 そうは言っているが、JCBの涙袋には水滴が溜まっていた。


「MasterCardちゃん……かりかりこもらっていい?」

「いいよ」


 カップを取り出しやすいように斜めにして差し出す。かりかりこはまったく減っていない。あんなに食べていたのにぜんぜん減ってない。もしかしてしたら

これがひとつあれば一生、食べるものには困らないんじゃないかとJCBは思った。

 

 だが、斜めにしてくれるのはやっぱりMasterCardの気配りが行き届いて

いる証拠だと心中で思うJCBだった。


 かりかりこをひとつつまみ口元に運ぶ。


(すこししょっぱいけど……おいしい……)

 口の中で広がる塩味を噛みしめながら胃袋へと流し込む。


「無限ソフトクリーム持ってくればよかったな……」

「マス子よ。それは無理だって。いくら無限ソフトクリームでも溶けるだろ?」

「うん、そうだけど……」

「まぁJCB、あ〜そのなんだ、元気だせって。スモローだけが使えないってだけで他のところでは使えて決済できるからさ、気にすんなって!」

 アメリカンエクスプレスはJCBに元気づけようとして、JCBの肩をバンバンと

数回叩いた。


「……ん」

 気を利かせているのか、ダイナースクラブはゲームボーズから指を離して、

シリバーサンダーを差し出す。


「ありがとう。いただくね」

 ダイナースクラブが差し出したパッケージには若い女性に大ヒット中! 銀色の雷神とかかれている黒いパッケージ。

 その黒いパッケージをJCBは躊躇無くあけて、ひとくちでほおばる。


「んぐっ……ふぅ、うん、まだまだだな……わたしって……よし! ちょっと待ってね」

 自分の頬を両手でパチンと叩いて気合いを入れる。そして、スマホでエゴサーチ

してリサーチをかけた。検索は【JCBカード 使えない店】


「何見てんの?」

JCB(わたし)で決済できないところ」

 VISAの声かけに目も合わせずに、検索をかける。検索結果を見て『結構、わたしで決済できないところが多い……』と小さく言葉をこぼす。


(モストコやブランコロビーが使えないのは驚いた……お父さん……言ってくれないんだもんな……)


 意外な店舗がJCBを使えないと知って落胆を覚える。JCBはさらに画面を下へと

スクロールさせて、一文に目が止まった。


「……やっぱり……手数料がネックか……」

 目が止まったページには『手数料が高い』『売上が大きく減少する』や『VISA、MasterCardのみの決済が増加』との提示がある。控えめに見てもいいことは

なにひとつ書かれていなかった。


「JCB? 大丈夫?」

「あ、うんごめん……」

「じゃあ、帰ろっか」

 VISAとMasterCardの言葉にJCBはひとつ頷いた。


「スモローちゃん……」

「は……はい」

「お寿司おいしかったよ。またくるからね」

 JCBは精一杯の笑顔をスモローに向けたのだった。


「じゃあな、よし! あたし達は寿司を食おうぜ! 寿司!」

 アメリカンエクスプレスはダイナースクラブの肩に腕を回し、店員に案内されて

いくのだった。



 ◆



「最低でもMasterCardちゃんのレベルまで押し上げたいな……」

 自室のベッドの上でスマホを見ては何度も同じ言葉を繰り返す。


 少なくともにこの『最低でもMasterCardちゃんのレベルまで押し上げたいな……』は

7回以上は口にしている。


「でも、加盟店手数料がネック……手数料が高い……高いかぁ……」

 スマホの画面を見ては『手数料……高い』を繰り返し言葉にしている。


「……」


 JCBはベッドに仰向けに大の字に寝ころび、天井を見上げじっと一点見つめで

思考を巡らせる。考えを張り巡らせ思考をまとめる。

 どうすればMasterCardレベルにまでできるのか? 手数料は下げられるのか?

手数料を下げられないのならどうすればいいか? スモローでの決算可能を含めて

考えに考えを重ねて、頭の中で高く高い思考の塔を築きあげる。


 JCBも手数料を下げれないいなんて単純な事じゃないことはわかっている。JCBの父親もバカじゃない。手数料を下げれられるならば、下げているだろう。


 仮に手数料を下げてしまうとサービスの質に関わる。何かのサービスが終了したり、

ポイント還元率が下がってしまうかもしれない。空港などのラウンジ利用のサービスの質も落としてしまうかもしれないし、各種保険のサービスの補償金額も下がるかもしれない。


 手数料を下げると言うことはそれだけのリスクが孕むこと。これだけの事が起きる確率があるからこそ、『手数料を下げる』なんて一言ではすまされない。手数料を下げて現状のサービス維持は難しい問題だとはJCBも理解している。


 わかっている。わかっているからこそ今回の一件で思い悩んでいるのだ。


 どうすれいいかなんて今のJCBにはわからない。経営の勉強も経験も何も積んでいない若いJCBには荷が重い考えだった。


「ふぅ……よし!」

 悩みに悩んだ結果。父親に今回の件を報告しよう。という考えに至った。


 父親もスモローでJCBが使えないことはわかっているはず。だからこそ自分から

提起して見ることに意味があることを信じて。

 だが、提起したところで、どうなるわけでもない。が、このままこの現状を黙っているわけにはいかない。そんな思いでJCBはベッドから飛び起きて景気付けに勉強机に置いてあるボノボルをひとつ口にして、部屋を出たのだった。



 ◆



「ふう……これである程度変わればいいけど……無理……かな」

 父親に報告を終えたJCBは再びベッドに仰向けに倒れ込む。


 JCBもわかっているが、自分の発言だけでは現状は変わらない。問題定義として認識してもらうだけが関の山で精一杯でこれが限界だろう。


 そして、定期的に現状を見極めて、父親に報告する事しかできない自分にいらだちを

覚えていることも事実だった。


 これ以上、JCBにはできることはない。JCBもそう判断してか、掛けふとんを頭からかぶり暗い眠りの世界に落ちていったのだった。



 ◆



 一週間後。


「う〜〜〜〜〜〜ん! サーモンおいし〜〜〜ィ」

 JCBはVISAとMasterCardの三人でスモローに来ていた。


「エビアボカドロールってけっこうおいしいわね」

「数の子もおいしいよ」

 三者三様。それぞれ思い思いの寿司を取り食事を楽しんでいる。


「本当にJCBのおごりでいいの? JCB(あんた)は決済できないんでしょ?」

「大丈夫。ご安心あれ! じゃ〜ん!」

 JCBは自信満々でピンク色で赤いリボンがワンポイントのラウンドファスナーのサイフから樋口一葉が描かれた紙幣を一枚取り出す。


「今日は久しぶりに見る現金があるのです! これで支払いは大丈夫! どんどん食べていいよ! あ、でも五千円までね。それ以上は自腹だよ! これ絶対!」

「おおっ〜五千円札だ。ホントに久しぶりに見るわね」

「懐かしいね。この手触り。暖かみがあるザラザラ感。ホントに懐かしいなぁ〜」

 VISAとMasterCardはJCBの出した紙幣を懐かしむようにマジマジと見た。


「おっと、懐かしむのはそこまだよ。さぁ、食べよ。VISAちゃんはどんどんと

スイーツを食べてね。そして太ってね」

「ちょっ! なに言っての!? ふ、太らないから! 私、太らないんで!」

 JCBの言葉に反応して反論したVISA。だがしかしその手にはしっかりとショコラケーキが乗った皿が握られていたのだった。



 ◆



「ありがとうございましたぁ〜〜」

 三人は店員(あの時とは別の店員)のかけ声を後に店を出た直後にMasterCardが

『スモローちゃんいなかったね』とJCBに言葉を渡す。

「うんそうだね。この前のこと、もう一度謝りたかったんだけどな……出張ならしょうがないよ」

「さっきのレジ店員の話だと自分から本社に行くって行ってたわね」

「どうしたんだろ? 自分から本社に行くなんて……」


 スモローが自分から本社に行った事を疑問を覚えるのと同時に心配してか

三人は次の言葉が紡がれずに、口を閉ざす。


「来週、もう一度こようよ。スモローちゃんに会いに」

 JCBが提案してMasterCardが『そうしょう』と提案に乗る。


「もちろん私も賛成」

 VISAが最後に賛同したところでJCBが『来週から期間限定抹茶スイーツがはじまるからね』と茶化し、『ち、違うから』とVISAがいつもの返しをしたのだった。


 JCBカードが使えない店は多い。だが決済方法は現金やクレジットカードだけ

ではない。今や幾多にものぼる決済方法。

 電子マネーやデビットカード。さらにはスマホ決済など実に多彩だ。その多彩な決済方法の中でJCBがどう立ち回るのかは、神のみぞ知る事だろう。

 未来は未確定。時代は不確定。この言葉を残して今回の物語を締めるとしよう。


 ◆短編その2『JCBカードちゃんの日常』 完

こんばんは、間宮冬弥です。

まずは、この稚拙な作品を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


今回は擬人化を意識した作品となっています。

擬人化のジャンルは今に始まったことじゃないですが、自分の中で書いたら面白そうと、

思い書いてみました。


次回作ですが……なんかの短編を書いたら『アンブレイド』関係の話を書こうかなと

思っています。『バレンタイン大作戦』の続きを書くかまったく別の話を書くかは未定ですけど……


それでは、これで失礼します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ