僕と彼女の十年愛
甘やかすのが好きな義兄×秘密を抱えた義妹
ある日、僕に二回りも歳の離れた妹ができた。
可愛い義妹は僕によく懐いてくれた。
僕はそんな義妹が可愛くて大事大事に育て、甘やかす。
毎日が幸せだった。それが、壊れるだなんて思わなかった。
彼女に、秘密があると知るまでは……。
どうして助けてだなんて言えようか。
彼女はそう言った。それに僕は答える事が出来なくて、ただただ、口から紅を流し続ける彼女を見ているしか無かった。
それは、指先が凍る様な、息をするのも辛い冬の日だった。
父に手を引かれてやって来て、粗末なワンピースを着た黒くまあるい瞳の彼女が、僕の妹になったのは。二回りも離れた幼女を、急に妹だと紹介された僕は、酷く戸惑って何も言葉を返す事が出来ずにいた。しかし父はそんな僕に気付くことなく、妹の手を離すと母屋に戻って行ってしまった。残されたのは、小さく痩せっぽちな妹と、僕。
幼い彼女をそのまま玄関先に立たせておくことも出来ない。僕がそっとしゃがみ彼女に両手を差し出せば、彼女はこてんと頭を傾げた後に、弱弱しい力で僕に抱き着いた。僕は少し力を入れれば折れてしまいそうなその体を、淡く抱き返した。
それが、僕と彼女の、始まりの日。
母屋とは中庭を挟んで独立して建っている私室は、個室と言うには違和感を覚える。そんな僕の離れに住人が一人増えた。元より部屋は余っていたので住人が増える事は何も問題は無かったが、彼女は頑なに僕の部屋以外では寝ようとせず。僕は折半案として、彼女と僕の個室の間の部屋を、二人の寝室とすることにした。
最初こそ人見知りしてか、言葉数の少なかった彼女だった。けれど一月も経つ頃にはどこに居るのだって僕の服の裾を離さなくなっていた。丸っきり雛の擦り込みだった。いきなり見知らぬ場所に一人放り出され、そこで優しくされたのだ。幼い彼女にとって、僕は唯一無二の存在になってしまったであろうことは、想像に難くない。
「くぅにぃさま。あやはおなかがすきました」
間抜けな事に、僕は父が後日寄こした書類で初めて妹の名前を知り、妹に僕の名前を教えていないことに気付いた。初めて書類で知った妹の名前を呼んだ時、僕の胸に痛みが走ったのを、今でも思い出す。妹はそれまでの無表情が嘘の様に、顔をしわくちゃにして、大粒の涙を流して大声で泣いたのだ。
突然それまで住んでいた施設から連れ出され、知らない男の家に置いて行かれたのだ。四歳の幼子には、さぞや不安だったろう。
「理、さっきおやつを食べただろう。夕飯まで我慢しなさい」
「でも、くぅにいさまはいまたべてます」
「これは、僕の……空理のだから、理のじゃないよ」
「くぅりおにぃさまの?」
「そう。だから、理は夕飯まで駄目だよ」
「はぁい」
「良い子だね。良い子の理には、これをあげよう」
「わぁ!きゃんでぃー!」
諸事で妹から遅れて間食している僕を見て、自分も食べたいと強請る妹は可愛らしい。しかし来た時よりかはふっくらしているが、妹は未だに少食。これで僕の分の間食までしてしまっては、夕飯を食べられなくなってしまう。僕は胡坐の上にこじんまりと収まる彼女の口に飴玉を放り込み、それで我慢してもらう事にする。
彼女がお腹が空いたから、自分も食べたいというのは、決まって僕だけが何かを食べている時だ。勿論、彼女に与えていない訳では無い。ただ、タイミングが叶わず彼女に先に食べさせて、自分は後で一人で、という事があるだけだ。それでも彼女は僕と一緒に食べたがるので、いつしか僕は彼女のその小さなお願いを叶える為に、家のあちこち、服のポケットに小さな飴玉を隠すようになっていた。
友人の一人は「まるで子持ちの母親だな」と笑い、また別の友人は「甘い匂いさせてんじゃねーよ」と背を叩いてきた。僕はそんな彼らの言動に傷付く事は無く、寧ろ、それだけ妹と僕が本当の兄妹になっていると感じる事が出来た。
小さな小さな女の子の理。頬がふっくらとしてきて、