第2話≪初クエスト≫
パート2です
キャラのデザインが決まりつつある今日この頃
私は初めてのクエストを受けるために、クエストが書かれた紙が貼り付けられている『クエストボード』の付近に来た。
クエストボードの付近は、沢山の冒険者が行き交っていてスゴく賑わっている。
美しい装飾が施されているクエストボードには、沢山の貼り紙が貼ってあって、その全部がクエストなのね。
私が冒険者になるために使った制度にテストはなかったけど、実は隠れたテストがあるの。
前まで対人とのテストがあったみたいだけど、実践と違って命の危険がないから、意味がないってなったみたい。
魔物とのテストをするにも試験官が必要だし、なにより私が受けるテストの方が効率がいい。
・周りの冒険者に話しかけに行ける
・身の丈に合わないクエストを受けたりしない
・クエストを成功できる
の3つを確認して、不合格ならFランクに落とされるって。
まぁ、『氷の狼』が帰ってくるまでの暇潰しだし、簡単なのしか受けないけどね。
その前に、テストの一つをクリアしなきゃ。
「お姉さん、クエストの受け方を教えてください。」
私は、一人で椅子に座っていた女性に声をかけた。
私が今いる所は『ロビー』って呼ばれていて、隅の方に休憩所が設けられているの。
魔法の術式を組み込んだローブとブレスレット型の魔導具なんて、そこら辺にいる魔法使いみたい。魔法媒体を持っていないから暇で来たのかしら。
ちなみに、私の魔法媒体は傘。日傘にも雨傘にもなるし、骨組みを魔素を通しやすい金属にしているの。
「ん?あなたは確か、ヴァン様の一人娘だったかしら?」
あぁ、お父さんのファンか。
お父さんは毎日冒険者総本部に来るから出待ちしていたのね。だって、私のこと興味深そうに見ているもの。
面白くなさそうな目。子供に向けるものではないと思うわ。
「はい。お父さんが『わからないことがあったら、ここにいる女の人に聞け』って言っていたので。」
聞かれていないことまで言えば、子供っぽく見えかな。
別に子供に見られたいわけじゃないのだけれど。
「あそこにあるクエストボードに貼られている紙を、クエストの受付に持っていけばいいわ。冒険者カードがなきゃダメだけどね。後、ランクごとにボードが分かれているから気を付けるのよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
貴女にもう用はないの。魔導具とローブを観てみたけど、大したものじゃないみたいだわ。
ローブは魔法を撃つために必要な集中力を回復させる《回復魔法:気力回復》の術式が組み込まれているけど、効果が弱いし。
魔導具なんて、肝心な魔核がボロボロになっていて使えないじゃないの。酷使し過ぎたら壊れるのは魔導具も同じなのに。
まぁ、いいわ。重要なのはクエストよ。
お姉さんの言うとおり、クエストボードは各クエストごと一列に並べられている。装飾がランクと同じ色をしているから、分かりやすいわ。
Eランクのクエストには、討伐クエストと難しめの採集クエストがあった。魔物に名前はないから、正確にいうと全部採集クエストだけれど。
魔物は肉以外は武器や防具の素材で使えるけど、魔素の影響で肉質が変化して草食動物の肉でさえ食べれないのよね。
生態系は変わらないから、毎日お肉食べれるけど。
私が選んだのは、オルト周辺によくいる狼型と兎型の魔物の素材集めだ。
その紙をクエスト専用受付カウンターに持っていくと、クエスト開始になる。
受付カウンターも一列に並んでいて、リリィのいた総合受付カウンターは真ん中。クエスト専用受付カウンターは、クエストボードと同じ右側にあった。
受けたクエストは冒険者カードに書かれて、成功した数に応じて特別クエストが受けられる仕組みなの。
クエストも冒険者登録と同じように、魔導具でカードに記録する仕組みだ。
クエスト専用受付のお姉さんにもらった冒険者カードを、腰にぶら下げたポーチの中に入れたのを確認してから、ロビーの隣の部屋に向かった。
冒険者総本部は、入り口から入ると各種受付カウンターとクエストボードがあるロビーに出る。
そこから左側が酒場兼食堂、二階からはパーティー用の各施設があるの。
右側は、街の東南北の門に転移できる魔方陣がある部屋に続いてる。西側にはお城があるから、門はなかった。
冒険者総本部は街の中央付近にあるから、混雑している時は門まで1日もかかるのよ。
この転移魔方陣があれば門まで一瞬で行けるし、無料で使えるから使わない冒険者はいないの。
自分で転移できる人もいるけど、《空間魔法:転移》って魔法でね。
魔法は七属性に分かれているの。
火水風土の基本属性と、光と闇の特別な属性。それ以外の魔法は無属性となる。
強さの順で言うと、火>風>土>水>火・光←→闇となるわ。
私は全部使えるから関係ないけどね。
室内は、出入り口を西側として各方角に分かれていて、中央に魔法制御装置がある。
私は草原に近い東門に転移した。北は大森林、南は海に続いてるから東門の通行量はスゴいわ。
混雑を避けるためにも、武器や防具のお店などは総本部近くにまとまって、ここには小さな道具屋しかなかった。
馬車が行ったり来たりしてて、事故が起こりそう。通り抜けるのも一苦労ね。
オルトは城壁に囲まれていて、門で検問と監視を行っている。
冒険者対応専門の門番の人に冒険者カードを見せると、すんなり通ることができた。てっきり、確認をするのかと思っていたけれど。今の私は子供にしか見えないし。
「やっぱり、街って窮屈ですねご主人様。」
門から少し出た所で話しかけてきたのは、テイムモンスター登録をした[クロエ]だ。
クロエは話すことができる。モンスターじゃないから。
クロエは私が小さな頃から一緒にいる[悪魔]の一人だった。
悪魔は<魔族領>に住む種族の一つでルナソルの組分けはなく、人の生気を主食としている。
貴族階級を重要視した完全な実力主義種族。
助け合いの精神もあるって聞いたけど、本当かしら?
「仕方ないじゃない。話せるモンスターはいないんだから。」
話せるモンスターがいないのは本当の事だ。
大昔の勇者のモンスターだって話せないし、オウムやインコのモンスターは、風魔法の代わりに声を失うの。
「もう少し、何とかならないのですかぁ?」
「ならないわ。室内なら良いけど。」
「そんなぁ。」
クロエは頭を下げて、いかにも残念そうな表情をするけど気にしない。クロエのこれは演技だし、それほど気にしていないみたいだから。
私たちは草原を真っ直ぐ歩いていた。所々、大岩が転がっていたりするけど、背が低い草しか生えていないから視界は良い。
兎型も狼型も、草原を歩いていれば襲ってくるから直ぐに見つかるわ。
今だって、目の前に血走った目をした牙が大きな狼が走ってきているもの。
魔物の進化は、その個体が最も得意とする攻撃手段から進化する。
兎の場合は前歯や後ろ足から、狼は牙や爪から進化し、長く生きた魔物ほど進化する箇所が増えていく。
魔物は、進化したて一匹だけでも手強い。更に進化した魔物は、上級冒険者が対処しないといけなかった。
ま、関係ないからパパっと終わらせるわ。
「クロエ、あいつの弱点は?」
魔物が取り込んだ魔素は、各基本属性に変化することがあるから、それを見極めるのは戦いの基本だ。
無属性で戦うより、弱点属性で戦う方が有利なのは言うまでもないわ。
クロエよりも鑑定に優れた仲間がいるけど、そいつは仕事に出しているから、クロエに頼るしかない。
クロエも属性くらいならオーラで見えるから、助かってはいるけどね。
「オーラが見えないので、無属性です。」
「ありがとう。クスクス、狼さん。水はお好き?」
私が放ったのは狼が入るほど大きな水球。名前もないほど、水魔法の基本中の基本の水生成だ。
その発達した牙で喉を噛み千切ろうと突進してきたから、面白いほどすんなり水球に填まった。
毛皮はどの魔物も変わらない値段で売れるし、牙が立派だったから傷つけなくなかったのよ。
毒だと、品質が変わるかもしれないし。
「流石はご主人様!魔法を使わず基本だけで倒すとは、『おかしな魔女』を名乗っているだけありますね!それと、口癖が出てますよ。」
クロエが言った通りよ
私が、私こそが
この世界の住人を、恐がらせている張本人
『クスクスさん』や『おかしな魔女』と呼ばれている魔女[サヤカ]
...口癖は仕方ないの
「クロエ、誰かに聞かれないようにしているのよね?」
「大丈夫ですよ!防音結界と幻術魔法はバッチリですから。」
お調子者の癖に用意周到なんだから。まったく。
水球に填まった狼はそのまま窒息死したわ。自分で剥ぎ取りできるけど、血が付いたら厄介ね。主に、心配の目が。
それと、今来ているワンピースお気に入りの一つだし。
「残りも早く片付けるわよ。《幻術魔法:甘い香》」
この魔法は私が作り出したオリジナルの魔法、魔物を誘き寄せる効果があるの。
元々は人や魔物を操るためにつくった魔法だったけど、魔物を誘き寄せることが出来るのがわかってからは、そっちの方に特化した魔法に仕上げた。
「さてと。引き寄せられたのを倒して、さっさと帰るわ!」
「了解です!」
私は向かってくる魔物に対して、魔法の術式を構築し始めた。
水球をつくって窒息死させるには数が多いし、なにより気力を多く使うから面倒くさいのよ。
そうだ、簡単な魔法があるじゃない。
「生けるものを死へと導く危険な香りはお好き?≪闇魔法:死の眠り≫」
この魔法は、命を砕く魔法。肉体を破壊せずに生けるものを殺すことが出来るの。
ただ、自分に降りかからないように風魔法も使わないといけないから、一匹だけに使えないのが難点なのよ。
広がりすぎないようにもしないといけないし。
「凄すぎます!ご主人様!」
「うるさいわよ。クロエ。」
クロエは怒られてシュンとなった。大袈裟なのよクロエは。
幻術魔法を常時発動させてるから、この魔法が使えるから感謝しているけど。
こいつはそれを知ってるから止めないのよね。実際、鬱陶しいわけではないし。
まぁいいわ。魔物の片付けをしないと。
「≪召喚魔法:ドロドロさん≫」
私の目の前に展開した魔方陣から、どす黒い色をしたドロドロしたスライムが現れた。
眼孔からそのまま取り出したような視点が合ってない目玉が2つと、大きな口を持つこの子の名前はドロドロさん。
回復魔法が使えるのを作ろうとしたら失敗して、気持ち悪いのになったの。
でも、回復魔法は使えるしスライムと同じ事が出来るから、使えるっちゃ使えるのよね。
「お願い、ドロドロさん。ここら辺にいる死んだ魔物の、肉以外を頂戴?」
ドロドロはちゃんと命令を言わないと失敗する。
この場合、使えるところと言ったら魔核まで食べてしまうのよ。
生まれてまもない魔物の魔核は、それほど価値がないから。
「兎と狼の皮と、牙と爪。それと、魔核。全部あるわね。クロエ、帰るわよ。」
集めた魔物の素材を、腰にぶら下げたポーチにしまう。
ポーチには≪空間魔法:魔法箱≫の術式が組み込まれているから、いくらでも道具が入るようになっている。
この世界の≪魔法箱≫は、珍しいものじゃなかった。
高いお金を払えば、帰る魔導具の一つでもあるの。
魔導具には色んなのがあるけど、主に2つに分けられる。
・魔核を使用したもの
・術式が組み込まれているもの
どちらも、攻撃や防御や生活魔法を気力を使わずに発動できるの。
術式の方の効果対象は、自分だけだけどね。
「また、黙り続けないといけないんですね...」
そう嘆くクロエを無視して、私は街の方へ歩き出した。
主人公が魔女だったって公開するの、もう少し上手くできなかったのかと反省
次は『氷の狼』が登場!