第1話≪冒険者登録≫
GWが終わり、小説書き再開です。
寝ていたら終わっていたけど。
≪エレフセリア≫の人間領にある街『オルト・レウ』。王国騎士団と対になる組織の冒険者組合総本部が置かれる街で、人間領で位の高い街に送られる『レウ』の称号を持っている。
世界に住む全ての種族の存在を脅かす『魔物』と呼ばれるものを討伐することが、冒険者の役目だ。
魔物は『動物』が何らかの影響を受けて、体の一部が変化し強くなった生き物のこと。原因はわかっておらず、魔力の源となる『魔素』を浴びて進化したという仮説が、今のところ最も可能性が高い。
冒険者は初心者から上級者までランクで分けられており、FランクからSランクまである。
Fは初心者の証しとBからは上級者と呼ばれていて、Sは勇者などの伝説級の者に送られるが、その数は少なく生きている者はほとんどいない。
冒険者のランクはカードで管理されており、ランクによって色が違う。
登録は男女とも十歳から、Fランクからスタートだ。
特別クエストを達成することでランクが上がるが、そのどれもが討伐クエストとなっていた。
しかし、両親が上級冒険者で戦闘訓練を積んでいる者に限り、Eランクからスタートすることが出来る。
まだ十になってからそれほど経っていない[サヤカ]も、父の[ヴァン]に連れられ冒険者組合に来ていた。
ーーーー
父が冒険者組合のドアを開けると、珍しいものを見る目が降り注いだ。
仕方ないのだけれど、こうも大勢の目が向けられると居心地が悪くて気持ち悪いわ。
仕方ないと言っても、父はAランクになったばかりの新参者。最近人気のイケメン冒険者ってやつなの。
背が高くてイケメン。無口だけれど仲間思いの愛妻家。自然と人気が集まるのは当然だった。
その人気冒険者の父が愛娘を連れているのだから、興味を持たれない方がおかしかった。
「あ、ヴァン様!いらっしゃいませ、今日はどうされましたか?」
父に明るい受付の女性が声をかけてきた。
明るく元気で可愛いの三拍子が揃った女性[リリィ]。日替わりで受付が変わる本部で、リリィが受付のときは人が溢れかえるほど、人気の受付嬢だったっけ。
誰に対しても礼儀正しく、Fランクの冒険者にも様付けする人って聞いたわ。
その受付嬢が父のときだけ嬉しそうに笑うものだから、嫉妬の目が怖いって父も言っていた気がする。
「今日は、娘のサヤカの冒険者登録をお願いしたい。Eランクからで頼む。」
父が私の背中を押して前に出す。
もう。人見知りじゃないことぐらい知っている筈なのに。
リリィは私を見て優しい目になった。確か噂で子供が好きって流れていた気がする。
「はい。冒険者登録ですね。念のために確認しますが、お嬢さんはおいくつですか?」
「十歳だ。魔法使いとして鍛え上げたので、護身はできる。」
十と言った途端、本部の人たちが驚きの声をあげた。
いくら十歳から登録できるとしても、登録する人は少ないの。ましてや、危険なところに自分の子供を行かせるわけにはいかないしね。
身分証として冒険者カードが使えるから、利用している人もいるらしいけど。
『魔法』は、魔素を使って《物を燃やす》などのイメージを具現化すること。力の弱い人間が生み出した戦う方法だった。
魔法を使うには、適性と『魔法媒体』と呼ばれる"魔素を通しやすい物質"が必要だけど、極めればとても強くなれるの。
「わかりました。冒険者登録のために魔導具に血を注がないといけないのですが、大丈夫ですか?」
『魔導具』とは魔物から取れる『魔核』を使って作る装置のことだ。
魔核には豊富な魔素が含まれていて、術式を組み込めば半永久的に魔導具として使える。
魔物発生の仮説で「魔素を取り込んだこと」が可能性が高いのは、魔核があるからだった。
「大丈夫、お父さんから聞いているから。」
「少しチクっとするだけだからね。」
血を注ぐと言っても、数滴で十分だからそこまでではないのよね。
カウンター横の魔導具に血を垂らすと、私だけの冒険者カードが出てきた。
≪サヤカ≫
人間
女
10歳
Eランクからだから、緑色のカードだった。ちなみに、Fランクは青色なの。
内容はリリィが入力したものだけど、血を使うことで盗難や不正利用を防ぐ効果がある。
クエストを受けるときに、こっそり本人確認がされるの。と言っても、簡易的なものだから不正利用もあるって父が言っていたわ。
「登録が完了しました。早速、クエストを受けますか?」
クエストとはそのままの意味で、魔物の討伐や薬草などの採集、お手伝いなどだ。
Fランクに討伐クエストはないけれど、特別クエストで魔物を討伐しないといけないから、戦えることが冒険者になれる条件の一つでもある。
「嗚呼。『鍵の迷宮』で修行をさせたいので、良いパーティーに入れさせてもらいたい。」
『迷宮』とは、魔物が発生しやすくなった洞窟や建物のこと。
外の世界よりも魔物が多いから、パーティーを組んで行かないと死ぬ危険が高い。
鍵の迷宮は洞窟型の迷宮で、何かの"鍵"があることから名前がつけられたが、最深部を探索しても未だ誰も見つけていなかった。
だが、パーティーで戦う練習をするのに大人気の迷宮でもあった。
パーティーは二人以上から組めて、パーティー用の食堂とかもあるから組む人は多い。
その代わり、クエストで得た利益は均等に分配されるけどね。
父はパーティーを組んでいないのに迷宮でも死なない化け物なのよねー。
「それでしたら、『氷の狼』が良いと思いますよ。サヤカ様の一つ上のDランクですし、迷宮攻略の為に魔法使いが足りないと言っていましたから。」
「ふむ、『氷の狼』か。そいつらの活躍は耳にしている。パーティー申請をお願いできるか?それと、テイム申請も。」
「わかりました。今はクエストを受けていますので、伝えておきますね。では、モンスターを連れてきてくださいませんか?」
『モンスター』は魔物同じ魔核がある動物のこと。魔物と違って人を襲わないが魔法が使えるので、『テイム』しようとする冒険者が多い。
乱獲を防ぐ為にテイムモンスター保護法もあるけど、密猟問題が消えないのが課題らしいわ。
「ええ、クロエおいで。」
私のテイムモンスターは、紫に光る毛並みと紫の目をもつ黒猫。
足元の影から出てきたクロエは、カウンターの上でなあんと鳴くと丸まって寝てしまった。
ホント、自由ね。あなた。
「暴走したときに強制的に眠らせる首輪や、人にテイムされたモンスターだとわかるようにする首輪などもありますが、どうしますか?」
「要らないわ。後でリボンを買ってあげるの。」
「わかりました。では、冒険者カードをお願いいたします。」
私の冒険者カードに新たな項目が追加された。
≪サヤカ≫
人間
女
10歳
≪クロエ≫
テイムモンスター
首輪なし
首輪は強制的に眠らせる首輪のことかしら。
おそらく、暴走したときに飼い主が首輪を持っているか持っていないかの確認の為でしょうね。
パーティーメンバーと一緒に居るときに暴走されたら困るもの。
「有難う。サヤカ、俺は先に帰っている。好きにクエストを受けるといい。日が暮れる前に帰るんだぞ。」
「わかった。お父さん、バイバイ。」
お父さんはいつもの注意を言って帰っていった。
さてと、初のクエストは何にしようかしら。
少し小説の書き方を変えてみました。今までの書き方じゃ、一話が短くなっていたので。
なるべく、会話文以外を多くして話がスムーズに進むよう頑張ります。
それと、リリィの敬語がガバガバなのはわざとです。