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おかしな魔女  作者: 螺旋
第一章≪鍵の迷宮≫
1/4

プロローグ≪おかしな魔女≫

今年から土日の休みが増えたため、週一で投稿できればなーって思ってます。

過去作品を放置しちゃうのは申し訳ないと思っておりますが、これだけでも完成させたいと思います。


【追記】

6.3 修正

科学の代わりに魔法学が発展した世界≪エレフセリア≫は、北の<人間領>・南西の<亜人領>・南西の<魔族領>・三大陸の中央に位置する<天空の大島>と無数の小島から成る球体の星だ。


人間領の中心にある<アナナス>は、小国であるが貿易で栄え、毎日人で溢れかえっていた。

暖かい気候や豊富な水のお陰で果樹園が多くあることから、別名<果物の街>と呼ばれている。水路を利用した美しい設計の街並みは、娯楽の少ない世界で人気が高い。

だが可笑しなことに、夕方になると商人は急いで店を閉め、人々は宿へ戻り、騒がしかったのが嘘のように静まり返る。

皆、何かを恐れているかのようだ。


その夜。建物からの光もなく闇に包まれた街中に、1つだけ明かりが漏れる家屋があった。生活魔法の1つの《ライト》で照らされた寝具に、五つに満たぬほどの子供を母親が寝かし付けている光景があり、とても微笑ましい。

キレイな子守歌がとても眠気を誘うが、子供は眠れないみたいだった。心地いいリズムでお腹を叩くが、それでも寝ようとしない。

母親が、寝ない子を心配して話しかけた。


「眠くないの?」


「うん。」


「早く寝ないとダメよ。」


「なんで、早くねないとダメなの?」


エレフセリアの日が落ちる時間は、季節に関係なく8時だが、眠るには早すぎる。

たまに、物作りの仕事で母親が起きていることもあるが、《ライト》の光が外に漏れぬよう細心の注意を払っていた。

母親は、子供におとぎ話を聞かせるように答える。


「それはね。『クスクスさん』って怖い怪物が、悪い子を食べちゃうからだよ。」


クスクスさんとは、悪いことをしないよう子供に聞かせるおとぎ話だ。悪いことをする子供を食べに来る怖い怪物で、クスクスと笑うことから名がつけられた。

風の音が笑っているように聞こえるだけでも子供は怖がるので、効果が高いのだ。


「ボク、食べられちゃうの?」


「良い子にしていると食べられないわよ。だから、早く寝なさい。ティス。」


[ティス]と呼ばれた少年は母親の言葉を信じ、眠りにつく。そして、街の明かりが全て消えた。


明かりが漏れなければクスクスさんは来ない。

そう考えたズル賢い大人は、宿屋の窓から一切の明かりが漏れないよう細工し、酒場でどんちゃん騒ぎができるようにした。

そのため、≪エレフセリア≫には宿屋になる酒場が多い。

男女が酔った勢いで...何てこともあるため街の課題となっていたりするが、今は関係のない話だ。


街の隅にある酒場『宵闇の館』もその1つ。

暗い色で統一した落ち着く雰囲気の店内に、執事の格好をしたマスターがいる宵闇の館は、常連客に大人気で。今夜は常連客と勧められて来たウワバミの男がいた。


大勢と騒ぐよりも、チマチマとお酒を飲むのが好きな男にとって、宵闇の館はとても良い酒場だった。

その隣に座る常連客は、人間ではなく[炭鉱夫(ドワーフ)・ルナ]だ。

≪エレフセリア≫に住む種族は世界を創った絶対神の名を借りて『ソル』と『ルナ』に分けられる。[人間(ヒューマン)]はソルしかいなく、ルナは[魔人]にあたるなど、種族は細かく分けられていた。

ドワーフのソルは物作りを、ルナは戦闘を得意とするなど同種族でも違いがあり、他にも多数の種族がこの世界で生きている。


ドワーフの[ガジル]はルナであるため、岩のような体を持ち、身の丈ほどの(バトルアックス)を扱う。

一般的に想像されるドワーフと同じで、豪快で懐が広い性格の男だ。ガジルもまた大酒飲みであり、仲間を連れて各地の酒場を訪れるほど酒好きであった。


「ガハハハ!どうだいあんちゃん、ここは良いところだろう?」


ほろ酔いで気分が上がっているガジルは、ウワバミの男と酒の話で盛り上がっていた。数本の空酒瓶がカウンターに転がっており、飲み始めてから時間がたっているようだ。


「ええ、とても!なんで今までここに来なかったんだろうって思うぐらいですよ!」


ウワバミの男も酒に酔い、気分が上がっていた。

マスターはウワバミの男に礼を言うと、1つの瓶を取り出す。グラスに注がれる、果物の甘い香りが漂う澄んだ赤色の液体から、男は目が離せなくなっていた。


「こ.これは?」


「こちらは、私の故郷に伝わる酒『ワイン』でございます。懐かしく思い、知り合いに取り寄せて貰ったのです。」


「ワインだと?!」


男はワインの事を知っていた。

果物の街と呼ばれるアナナスではワイン作りをやっておらず、魔族領にある小さな村で作られていると聞いた。市場に出回ることがないため、貴重性から貴族の間でしか飲まれないほど高級な酒なのだ。

その高級酒が目の前ある、男は今までにないほど興奮していた。マスターが裏手にいるなにかに指示を出しているのに気付かないほど。


「いいのですか?ワインを頂いても。」


「ええ、お客様は今宵の"招待客"ですから。」


その単語を聞いたガジルの目の色が変わったことにも気づいていない。男は物珍しさからワインの色と香りを堪能する。


「では、遠慮なく。」


男はワインを飲み干した。



「いいのですか?夜に出歩いても。」


マスターが心配そうに声をかけた。

店の前には、帰ろうとする男がいた。男は"夜に出歩いてはならない"という掟を破ろうとしているのだ。


「大丈夫だよ。アナナスは魔女の被害を受けていないから。」


魔女とは大人たちに伝わる怪物の名前だ。

クスクスさんは本当に存在している。『おかしな魔女』として。

夜に出歩く者をお菓子に変えていく可笑しい魔女。そこからおかしな魔女と名前がつけられた。

アナナスは、魔女の被害が確認されていないが、いつ犠牲者が出るかわからないので、夜に出歩いてはならない掟を守っているのだ。


男は破ろうとしていた。だが、男にはわからない。何故その掟が出来たのか、自分も魔女を恐れているのに外に出歩けるのか。


「じゃあな!また来るよ。」


「ええ、お気をつけて。」


男は、星々の輝きよりも暗い闇のなかに消えていった。


「お嬢様、獲物が噴水広場に向かいました。」


ガジルが何者かと話していることも知らないままに。


男はアナナスの中央にある噴水広場に来ていた。水源から湧き出る水は止まることを知らず、噴水を常に稼働させても大丈夫なほどであった。

月夜に照らされ、キラキラ光る噴水はとても幻想的な美しさをもっていた。

男は噴水の美しさに魅せられ、足を止める。


「へー、夜の噴水ってこんなにキレイだったんだな。皆も見ればいいのに。」


その時、背後から笑い声が聞こえてきた。


「クスクス.クスクス..ねぇ、ネズミはお好き?」


男は幸運だったのかもしれない。痛みを感じる前に殺されたから。

翌日、男は変わり果てた姿で見つかった。小動物に食い散らかされたような血塗れのチーズケーキとして。

よろしければ、不自然なところや誤字脱字のご報告などお願いいたします。

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