一話 昏睡
これが恋なのか? まったく眠れない。もうすぐテスト期間に入るというのに、授業にも身が入らない。このままじゃ俺の高校生活は落ちていく一方だ。
猛勉強の末にようやく入った高校だし、この階段を踏み外したくはない。
「章和。いつまで勉強してるんだ。さっさと風呂入ってトイレ行って寝ろ」父親。
「分かってるよ」
眺めていた教科書を鞄に入れ、明日の用意を済ませて時計を見た。時刻は十二時を少し回ったところだ。
急いで風呂場に行き服を脱ぐ。
「大分なまっちまったな」大鏡の前でうなだれる。
お腹の辺りに少しだけつまめる脂肪がある。中二からは部活も遊ぶのもやめて、勉強漬けの日々だったからしょうがないと言えばそうだ。
高校に入ってからも部活はせずにいつも勉強ばかりしている。おかげで進級した今のクラスは特進クラスだ。
ゆっくりと湯船に浸かりたい気持ちを抑えてシャワーで済ます。
全身を隅々まで洗い、男らしく荒ぶる。水を出しっぱなしにはせず、その都度、キュッと締めるマナーが子供の頃からお気に入りだ。
風呂を出た後は、腰に手拭いを巻き、頭を拭きながら冷蔵庫に向かう。そして、コーヒー牛乳をコップに注ぎ味わいながら飲むのも癖だ。
「おほほ、夜遅くまで勉強か? ご苦労だな。ア~ズちゃん、でも、こんな時間にジュース飲むと~、おねしょすっからな~。トイレ忘れるなよ~」
「分かってる。じいちゃんこそ飲み過ぎて二日酔いにならないようにね」
「大丈夫だぁ~。明日四時入りの現場あっから飲んでない」
嘘つけよ。ベロベロじゃねえかよ。
「ほらぁ、水」
俺は介抱しながらおじいちゃんを部屋まで連れて行き布団へ寝かせた。
うちの家族は、俺とお父さんとお爺ちゃんの三人家族。物心ついた時からずっと三人で暮らしている。
男しかいないからか、家中のバランスがバラバラだ。ちぐはぐかな?
お爺ちゃんは建築関係の会社を経営していて、まさに『男は』という性格や趣味で部屋を飾りつける。一方お父さんはレストランを経営していて、なぜか熱帯魚やら変な生き物にこっている。
お母さん的な存在やおばあちゃん、もしくは俺に姉か妹がいれば、きっとキモイだのウザイだのと言って、もう少し家の中が統一していただろうが、男しかいないせいで、わがままな趣味が溢れかえっている。
唯一お爺ちゃんとお父さんが一致しているのは、車やバイク、あとアイドル……というか女性の趣味?
お金に不自由な思いはしていないが、やはり母性という優しさを求めてしまう。
知り合いによく言われるが、俺は女性に幻想を見過ぎているらしく、姉妹がいる者の認識との差、特に、俺の勘違いが笑えるらしい。
でも、何度知人に説明されても、実際のとこ感化できない。
俺の目に映る女子は皆――、とても可愛いいから。