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編成


 図書館で調べ物班とベース整備班だな。まずは希望を聞いてみるか。


「じゃあ図書館がいい人~」


 トモヒロとノブ以外の手が上がった。これはまずい……。


「ベースがいい人~」


 トモヒロだけが手をあげる。


「ノブはどっちだ」


「俺はどっちでもいい。足りない方に入る」


 あ、そう。

 正直なところなぁ。このチビ共は図書館に連れて行っても戦力にならないんだよな。どうせ騒ぐし、できれば置いて行きたい。


 まず、俺とナオは図書館確定だろう。あとはエイコだな。それとトモヒロ、ノブ……つまりは上級生グループか。


 思案しながら周りを見渡すと、ナオが目配せしてくるのに気が付いた。

 何か策があるのだろうか、任せてみよう。


「あー、いいかな」


「なんだ? ナオ、いい案でもあるか?」


 少しわざとらしかったかな。


「そうだね。ここから先は未知との戦いになるかもしれない。調査対象を決めるのと同時に準備を進めなければならない、と僕は思う」


 なんだなんだ。

 意外な切り口にチビ共は興味をそそられたようでナオの言葉に食い入る。

 加えて若干ワクワクしている自分もいた。


「な、ロード・オブ・スミス」


 ナオはそう言いながらタクヤの元に歩み寄り肩を叩いた。


「え? ろ、ろーど……おぶすみす……?」


「ああ、そうだな……神格級の鍛冶屋といった感じか? 君には僕らの武器を調達してほしい。僕の希望は、うーんと、これくらいのナイフかな。ただこんなのはコモンナイフだ。君ならもっといいナイフを見繕えるだろう?」


 そう言いながらナオはその辺の落ちていた二十センチほどの棒切れを拾うと、器用に手元でで回転させながら放り投げてはキャッチしている。


「なるほどね、わかったよナオくん。俺なら最強のを拾って……いや、作れるぜ! ナオくんにはえっと、超スーパーウルトラ……ハイパーナイフを用意してやるぜ! ユウキくんは……刀だな! トモヒロくんは二刀流! ノブくんは大剣しかないな! ねーちゃんはなんだろうな…… 」


 すごい、上手く乗せてしまった。聞いてるこっちは恥ずかしくなるような、ワクワクしてくるような。当のタクヤはブツブツ言いながら一生懸命に何か考えているようだ。


「それから、パーティには母性あふれる回復役が不可欠だね。なあ、レジェンド・プリースト」


 ナオはノシスターの方を向き、言い放つ。


「え? わたし?」


「あたしじゃないの?」


 エイコがナオの話に横槍を入れた。


「おめーきいてなかったのかよー。ナオはな、母性あふれるって言ったんだぜ。おめーのどこにぼ、ぶっ!」


 エイコはトモヒロの腹に正拳を入れた。


「そ、そうさ。伝説級の僧侶だ。ほら、僕にはこの程度の薬草しか拾えないけど君ならもっとすごいのを調達できるんじゃないかな?」


 足元の葉っぱを拾いながらナオは語っている。


「うん! 死んでも生き返る薬草をいっぱい取ってくる!」


「いや! いっぱいはダメだよ。そういうありがたいアイテムは持てる数が決まってるんだ。そうだな……一人一枚しかもてないんだ」


「そっか! わかった!」


 二人目も言いくるめてしまった。


「なあ! ナオくん! おれは!?」


 ノブラザーが耐えかねてナオに詰め寄る。


「うーん? そうだね……えっと……か、カースオブ……ニート……」


「かーすおぶにーと!? 意味は!?」


「……はっはっは、こいつはすごいよ、えっと……冒涜的守護者だ」


「ぼうとくてき……しゅごしゃ……すげえ! なんかかっこいい!」


「だろー。君は拠点守護するんだ。一番大切な役割だね。帰る場所は大切」


「おれにまかせろー!」


 あっさりと三人をこの場に留めさせる事に成功しやがった。やっぱすごいやつだな。

 ちなみに今の流れだと俺は何になるんだろうか。すごい気になる。トモヒロとエイコは既に自分は何だって言いながらつめ寄ってる。ナオがこっちに助けを求めるように視線を送っていた。


「よ、よし。じゃあ決まったな。スミスとプリーストとニートは山だな」


「おー」


「ならそこに俺が入ろう。チビ共だけだとまずいだろ」


 あー、ノブが取られてしまった。まあ、それくらいならやむを得ないか。……いや、むしろすごいありがたい提案だ。自ら面倒な役をかってでてくれたんだな。


「それからもう山の人手は十分だろ。トモヒロは図書館に行け」


 ノブ、お前はどんだけ空気が読めるんだ。ノブに心から感謝の意を持って視線を送るが、気付かないふりをして視線を外された。


「じゃあ、決まりだな。図書館は僕とユウキ、エイコにトモヒロの四人だ」


「異議なーし」


 ナオがまとめたところで次に進むとしよう。


「オッケ。じゃあそれぞれ作業にかかろうか。とりあえず午前中いっぱいはそれぞれの場所で作業だな。昼後にまた山で集まって成果報告。その後の動きはその時に決めよう」


「あ、昼なんだけどさ。僕は今日も図書館で済ませるつもりだけどみんなもよかったらそうしないか? 金持ってなかったら貸すし、家に連絡するなら公衆電話もあったしね」


 なんと、ナオのやつは魅力的な提案をしてきやがった。実は子供達だけで外食なんてしたことない。これは興味がそそられる。


「わりぃな。うちらは帰って食うよ」


 ノブは即答だった。チビ共は不服そうだが。


「そうか、わかった。じゃあ昼飯後に山で再会だな」


 俺はどうしよう。やっぱ母さんに聞いてみないと……。


「あたしたちはお母さんに聞いてみる〜」


「おれもー」


「あ、お、おれも。」


 エイコたちとトモヒロは参加の意思だった。

 おれも一旦同意しておく。


「ねーちゃん、おれは?」


 ああ、そっか。タクヤは山組だったな。外食の許可が出ても伝わらないじゃん。


「わかった。じゃあ、あんたは昼になったら図書館に来な。許可取っといてやるから」


 勝算があるのか、すごい自信だ。


「昼になったらって、十二時でいいの?」


「そうだな十一時五十分位に切り上げて来るといいだろう」


「どうやって時間を見るの?」


「……」


 しまった。時計がないのか。


「なんとなくなら昼頃って分かるが、待ち合わせるんじゃきついな」


「しょーがねーな。だから俺は山って言ったんだ。ほら、時計貸してやるよ。丁重に扱え」


 そう言うと、トモヒロは腕時計を外してノブに差し出す。


「……いいのか?」


 ノブは一瞬躊躇したが、それを受け取った。


「図書館なら時計もあるだろうし問題ねーよ」


「いや、そういう……。そうか、わりいな。じゃあ借りるわ」


 ノブは何か言い返そうとしたが、言葉を飲み込むと腕に装着した。

 その後、俺らは細かいスケジュールを確認し合った後に図書館メンバーで山を降りた。


 出発前に時間を確認すると十時前だった。ちょうどいいな、確か図書館は十時に開館だったはず。


「図書館に着いたらそれぞれがこの土地の歴史を調べることになる。僕とユウキは過去の新聞から漁っていこう。トモヒロとエイコは歴史的な本がないか探して欲しい」


「オッケー」


 俺も本探しがいいなあ、新聞記事漁りは地味だしつまんなそうだなあ。


「新聞の方はしんどいだろうね。ユウキじゃないと頼めないから、頼りにしてるよ」


 え、そう? なら仕方ないか。


 俺らは図書館に到着した。

 十時はもう過ぎているようで開館していた。

 作業を始める前にみんな家に電話をする。一応俺は何かあった時の為に常に千円札を持っているけど、これで大丈夫かな。念のため聞いてみよう。


「俺は千円持ってるけど大丈夫かな」


「十分すぎるよ」


 大丈夫とのことです。


 トモヒロもエイコも金は持ってきているようで、後は家の了承を取るだけ、今電話中だ。


「うん、大丈夫。うん。みんな一緒だから。うん。いつもくらいの時間。はーい。……いいって」


 電話を切りながらエイコは許可を得たことを告げる。タクヤの件もあったし、俺はほっと一安心だ。

 トモヒロも大丈夫だった。でも、ちょっと手間取ってたかな。

 じゃあ俺の番だ。小銭は持ってなかったので結局十円玉を借りた。


 トゥルル……トゥルル……ガチャ


 出たのはばあちゃんだ。


「なんだ、ユウキか。どうしたんだい? 」


「うん、実は昼飯なんだけどね、いま図書館に居て、みんなでここで食べようかってことになってるんだ」


「みんなってエイコちゃんたちかい? 」


「そう、トモヒロとか」


「まあ、いいんじゃないか。お金は持ってるのか」


「うん、大丈夫」


「はい、わかった。じゃあお母さんに伝えておくよ」


「うん、お願い、じゃあ……」


 思ったよりすんなり話がついて、ほんと拍子抜けだった。母さんが出てたらまた違ったかな。

 なぜだか少し背徳感を覚えるが、ともあれこれでガッツリと調べ物ができる。そうだ、宿題の為だもんな。

 帰ったらそこんとこもちゃんと伝えようと心の留めて、みんなに許可を得たことを報告する。


「やったな。じゃあ何食うかー」


「おいおい、まだはえーよ。まずは調べ物だ。はじめるぞ」


 トモヒロは相変わらずだ。



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