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それからの少年たち


 あち~。


 やっとの思いで図書館に到着した。

 あー、中は涼しいなあ。

 えーっと、今何時だろうか。


 ロビーの壁にかかっている時計を見ると、一時二十分って所だった。


 まだちょっと時間があるか。

 どのみち早すぎても面会は出来ないらしいしな。本でも読んで待っていよう。


 そういえば、あの司書さんは居るかな。あの人も父さんたちの仲間だったらしいし、声掛けるとかはともかく、顔を見に行って見るか。

 そう思い、受付の方へ向かう。

 

 受付に近づくにつれて、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


「まじかー。俺のおやじとエイコのトーチャンもユウキのカーチャン狙ってたのかよー」


「ええ、そうよ。もう、見てて呆れるといった感じね」


「お姉さんはアプローチ掛けられなかったんですか」


「あらあら、あなたはお父さんと一緒で命知らずさんね」


「おねーさんキレイなのになー」


「あなたはお調子者のスピリッツをしっかりと受け継いでるわね」


 トモヒロとエイコが司書さんと愉しげに話し込んでいた。

 お前たちってやつは……ほんと、見習いたい。


「あら、リーダーさんが来たみたいよ」


「あ、こ、こんにちは」


 司書さんに不意に声をかけられて言葉に詰まってしまった。


「よー、早かったなー」


「お前たちもな。ノブとタクヤは?」


「タクヤはその辺で本読んでると思う。ノブはまだ来てないよ」


 午後はしっかりと来たんだな、タクヤのやつは。

 まあ、お見舞いだしな、ましてちーちゃんの。仕方ないか。


 そうだ、みんなもいるし、司書さんにも掻い摘んで昨日の話を教えてあげよう……と思ったらもう既にトモヒロとエイコで説明済みだったそうだ。


「まあ、私も忘れてたけど、あの山の宝物。これはなかなか見つけるのは大変だと思うわよ。がんばってさがしてみ?」


 司書さんまで、俺たちの探究心を刺激してくるか。いいだろう。全力で探し出すぜ。


 俺がそう宣言しているところで、ノブがやって来た。今回もチビ共はお留守番らしい。

 これから病院へ行くことを考えると心底ホッとした。


「じゃあ、みんな集まったしぼちぼち行きますか。エイコ、タクヤ呼んできておくれ」


「あいよっ」


 そう言うと本棚の陰に消えて行った。と、思ったらすぐに戻ってきた。

 すぐそこに居たそうだ。


 こいつもなんだかんだ心配でこっちの様子を探ってたんだな。そう言うことだろう、わかるぞ。


 じゃあ、いち早く向かいたい人もいるようだし、さっさと出発しよう。


 俺たちは司書さんに挨拶して図書館を後にした。


「病院ってこっちだよなー」


 トモヒロが指を指す。


「そうだな、山と反対の市街地側だ。ここからなら十分くらいで着くだろう」


 俺たちは病院へ向かって歩き出す。




「そういや、ナオはそろそろ県外まで行ったころかな」


 思えば、どこから来たかも聞きそびれちゃったな。


「そうだなー。そういや、ちーちゃんはもう意識あるんだって?」


「え、ああ、そうだな。朝食もしっかり食べたそうだ」


「そっかー。よかったなー。病院の飯って味気ねーって言うよなー」


「耐えらんねぇやつは持ち込んだり抜け出したりって話はよく聞くな」


 そこから俺ら得意の食話になった。

 トモヒロとタクヤは腹減って来たとか言い出す。

 お前らは飯食ったばかりじゃないの?




 程なくして病院に到着。

 受付でどの病室に居るのか確認して、エレベーターで向かう。


 病室の前に到着した。どうやら四人部屋かな。

 でもちーちゃんの他には、おばあさん一人しか入っていないようだ。

 これならゆっくりと過ごせるだろう。


「コンコン」


 エイコが口でノック音を出した。


 おばあちゃんは手前通路側のベットで座って本を読んでいる。

 ちーちゃんは奥窓側のベットに座って外を眺めているようだ。

 向こうを向いているから表情は伺えない。


「よー、ちーちゃん。来たぜー」


 トモヒロが声をかけながら病室へと入って行く。

 全く、相部屋なんだからおばあさんにも気を使えよ。


 俺はおばあさんに会釈をしながら病室に入る。すると、微笑み返してくれた。

 なんだ、いい人そうでよかった。


「みんな……」


 ちーちゃんは、こちらに振り返りながら、か細い声で言った。


「お見舞いに来たよー。手ぶらだけどなー」


「うん……ありがとう」


 ちーちゃんは微笑んでみせた。


「お母さんは?」


 エイコが尋ねた。

 そういえば居ないな。もしかして帰っちゃったのか?


「家から必要なものを持ってくるって言って、一旦帰ったよ」


 ちーちゃんはベット脇の椅子に視線を移す。

 なるほど、ここでお母さんは看ていたのかな。


 ちーちゃんはそこでため息ひとつ。


「それでおめぇ、暇そうにしてたのか」


「別にそう言うわけじゃないけど……」


「ひ、暇なのかっ?」


 後ろの方で腕を組み、仁王立ちしていたノブ。そのさらに後ろから、タクヤが声を張った。


「ううん、大丈夫だよ。すぐに退院するし、心配かけてごめんね」


「すぐに退院か! しょうがねえな。じゃあ俺が退院するその時まで、毎日来てやるよ!」


「……うん、ありがと。嬉しいよ」


 お前は俺が居ないとダメだもんなーと、タクヤ。

 その自信はどこから湧いてくるのか。

 まあ、言ったからには遂行してみせなさい。


「……そういえばナオ……さんは何をしてるの?」


「ああ、ナオならもう帰ったよ」


 俺がちーちゃんの質問に答えると、ちーちゃんは再び視線を窓へ向けた。


「そう……」


 俺たちは事前に相談していた。

 昨日ちーちゃんはなぜ山へ向かったのか。

 そして、そこで何が起きたのか。

 そう言ったことは今日は聞かない、と。


 早く元気になってほしい。

 余計な負荷、不安は感じさせたくない。

 真相なんか、ちーちゃんが元気になってから根掘り葉掘りきけば、それで十分じゃないか。


 ふと俺も、窓の外へ視線をやる。

 今日も良く晴れていて、ついでに暑い。

 この部屋からは、あの山もよく見えるな。


「そうだ、ちーちゃん。元気になったら、俺たちが為すべき使命を発見してしまったのだよ」


「……えー、なにー?」


 ちーちゃんは再び、病室内に視線を向ける。


「それはね、実は俺たちの親の世代が、昔ね、あの山に……」





 そして、ちーちゃんは翌々日後に退院する。

 その後、自宅にて二日の療養を経て、みんなと遊べるようになった。


 その間、俺たちは自由研究の資料を八割がた作り上げた。

 仕上げはみんなで、と約束してな。


 そういや、初めはサボっていたタクヤも、ちーちゃんから何を言われたのか。真面目に取り組み、いい働きを見せている。

 もともとこいつも相応のポテンシャルを持っていたしな。


 それにしても、事あるごとに、あいつが言うからとか、あいつの為にとか。今まで照れて強がってたやつが今じゃ隠そうともしない。

 まるで下僕のように尽くしているな。


 まあ、いいんじゃないかな。

 自分の気持ちには素直になった方が。

 見てて本当に焦れったかったしな。


 一方で、俺は自由研究と並行して夏休みの宿題はほぼ終わらせた。当初の予定通りだ。

 残すところは読書感想文。こいつはじっくり進めるとしよう。


 なにせ、今はそれどころじゃない。

 今日は久しぶりにフルメンバーで集まる日だ。

 決めなきゃいけないこともたくさんあるぞ。

 よし、遅れないように早めに出発するか。


 俺は、机の上に広げたノートを閉じると、部屋を飛び出した。


 居間でテレビを見ているばーちゃんに行き先を告げて家を出る。




 そして、今日も今日とてあの山の新ベースで集合する。


 宝探し。


 ユウキ達の新たな冒険が今始まろうとしていた。



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