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不思議を見に


「いや、川って言ったって、たいした情報得てないし、行ってもどうせ何もないぞ」


「いいんだよ。気分転換に散策だ。それに、ここからならちょっと近いだろ」


 俺はラウンジに備え付けてある時計に目を向ける。今は四時前、行って四時……十分ってとこか。で、帰るのに四十分見ておけばまあ時間的には間に合うか……。


「な?」


 トモヒロは俺の顔色を伺い、いけると踏んだのかさらに推して来る。

 まあ、俺だってさすがに気分転換したいけどさ。


「は~、仕方ねえな。どうせここにいても身にならねえんなら行くか?」


「イエーイ」


 エイコも実は聞き込みにうんざりしていたようで嬉しそうにしてる。ちーちゃんはちょっと戸惑っているようだ。真面目なやつほど損する世の中だよな。


 こうして俺たちは川へ向かうことにした。

 実際に行くのと行かないのとじゃ資料まとめるときも雲泥の差だもんな。


 川へは、さっき神社から来た道を公民館を超えてさらにまっすぐだ。住宅もだいぶ少なくなり、田園風景色が濃くなってくる。


 日も傾いてきた事だし少し暑さが和らいで来たかな。

 そんなことを考えながら、俺ら一行はあぜ道をつき進む。


 到着だ。

 この土手の向こうが川になる。まずは土手を登ろう。

 競争だ! よし、不意をついた俺の優勝。

 さて、着いてみたものの、ここからどうしよう。もっとちゃんと調べて来ればよかったかな。


「とりあえず、ヘビの神様だろ。祠みたいなのが近くにないか探してみよう」


 遠くの空はもう橙色になってきている。土手沿いはジョギングをしている人たちがたまに通るくらいだ。目に止まるようなものは特にないなあ。


 そこでふと、川にかかる橋が目に入った。この川には近いところに三本も橋が集まって架かっている。

 一番新しくて大きな橋は道路から繋がってて車が通っている。次に新しい橋は歩行者専用だけど、かかってる場所が悪いんだ。ほとんど使う人はいない。みんなこっちの一番古い橋を渡る。そのいちばん古い橋のちょうど真ん中ほどに女の人が立って川を眺めてるな。


 何を見てるんだろうか。目線を追うが川しかない。……そういえばあの橋も、出るって聞いた覚えがあったような。

 俺は少し気持ち悪くなったのでその場を離れる。


「な、なあ。トモヒロ。あの橋の上から川を見てる人さ、何してるんだろうな」


「えー、どこだよ。何にも見えねーぞ」


 何だと! はっきりとこの目に写ってるぞ!


「嘘つくなよ! ほら! はっきりといるじゃん!」


「おい……冗談だろ。やめろよ……」


 トモヒロは驚いたような顔でこちらを見てくる。

 そこへエイコとタクヤがやってきた。


「どう~? なんかあった~?」


「エ、エイコ。橋の上、女の人立ってるよな」


 俺は慌ててエイコに聞いた。


「え、うん。それが?」


「えっ?」


「えっ?」


 エイコは狐につままれたような表情をしている。たぶん俺も同じだろう。


「おい……トモヒロ……」


「あっはっはー、もうばれちまった」


 このやろう! かつぎやがったな!

 クッソ! いや、べつにビビったわけじゃねーし! ……はぁ、疲れる。


「ね、ねえ。あそこ。ヘビとネコがいる?」


 ちーちゃんが走り寄ってきて土手の下、河川敷を指して言う。

 指された方向を見ると、ネコがヘビにちょっかいを出しているようだ。


「んん? 何にも見えねーな」


 また! こいつは!


「うん……どこ?」


 俺がトモヒロに怒鳴ろうとした時だった。

 どうやらエイコにも、さらにはタクヤにも見えていないようだった。

 どういうことだ……? 俺には見えるぞ! いや、確かに……ぼんやり……かすむような……。


「よくわかんねーけど、ヘビってここの神様だろ? 神様とネコはどうしてるんだ?」


「ネコがヘビをいじめてるみたい……」


 ちーちゃんの言葉に一同が反応する。


「それってやべーんじゃねーの? こっちの方か? ……それっ!」


 トモヒロは方角を確認すると足元のあった石を手にとりそのまま投げた。

 が、全然関係ないところの飛んでいく。


「どうだ?」


「全然違う方に飛んでった」


「あーもう! 見えなきゃ無理だよ! ちーちゃん! お前にしかできない!」


 トモヒロはそう言うと足元から石を拾い、ちーちゃんに差し出す。

 ちーちゃんは戸惑いつつも石を受け取った。

 そして、振りかぶって……投げた。


 カツン。


 石はネコのそばに落ちた。ネコはその音に一瞬気を取られたようでそちらを向く。その隙にヘビは川に逃げていった。


「どうなったの?」


「ヘビが……川に逃げてった」


「おお! よくやったなー、ちーちゃん!」


 ちーちゃんはトモヒロやエイコたちに賞賛されている。

 にしても何だったんだろうな、あれ。ちーちゃんと俺にしか見えなかったみたいだけど、おばけの類いなんだろうか。不思議と怖くはなかった。少なくとも橋の上の女の人よりは。

 ふと、橋の方に視線を向けるとちょうど女の人も顔を上げて向こう岸に歩いて行った。あの人にも見えてたのかな……。俺って霊感があったのだろうか。初めて見ちゃった……。


「まあなんだ。自由研究に書けるようなもんはこれといってなかったなー」


「うん、そうね。いいんじゃないかな。川には神様が宿っていると伝えられる、とかで済ませば」


「え、今の出来事は書かないのか?」


「おいおい、現地に行ったらヘビ神様が野良猫に襲われてたからお助けしたぜーって書くのかよ」


 ……確かにトモヒロの言う通り、突飛すぎる感じがするな。でも事実なのに。……いや、事実だったのか? 自信がなくなってきた。


「さーて、じゃあぼちぼち帰りますかー。いい時間だぜ」


 トモヒロの言葉でみんなは帰路につくことにする。俺とちーちゃんは後ろ髪を引かれる思いで振り返りは川の方を見ていた。




「ただいま~」


「おかえりー」


 家に着いたのは五時ちょいだ。

 ふー、疲れた。俺は部屋に入ると椅子に座った。今日起きた出来事を振り返る。

 結構濃い1日だったな。結局ノートなんか使わなかったし。

 そう思い、ノートを取り出すと、白紙のページを開いた。

 箇条書きでもいいから書いておくか。

 俺は今日の出来事について、資料にまとめるための文章を書いておくことにした。




「ユウー。ご飯だよー」


 俺はハッとして起きる。

 なんだ、寝てしまったのか。

 時計を見ると六時半。一時間くらいか……。

 寝起きのだるさにさからい、重い体を引きずりながら食卓へ向かった。


「おかえり、父さん」


「ああ、ただいま」


 父さんとばあちゃんはもう席についている。


「なんだい、ぼーっとして。疲れてんのか?」


「うん、帰ってノート取ってたらいつの間にか寝てたみたい」


「早めに寝ることだね」


「そうだね、そうする」


 今日の晩御飯はカレーだ。

 寝起きで食欲がないと思ったけど、一口食べたら復活した。さすがはカレー。


「ところでお昼は何食べたの?」


 パクパク食べていたら母さんが聞いてきた。


「なんだ、どこか行ってたのか?」


「ええ、今日はお友達と外食したのよ。ほら、あの山の方の図書館で」


「ほー、そりゃあいいなあ。楽しかったろ」


 父さんもガツガツと食べながら話しかけてくる。


「カツ丼を食べたよ」


 そう伝えると父さんは、いいなあ明日の昼は俺もカツ丼にしよ、など言っていた。

 確かに楽しかったな。なんというか、大人の階段を一段上がったというか。大げさかな。


「あ、そうだ。お金は大丈夫なの? やろうか?」


「ううん、いいよ。俺もちゃんと持ってるもん」


 ここでもらったら大人の階段を一段下がる気がしたから断っておいた。


 ご飯を食べ終わり、風呂に入る。

 明日は神社集合で、午前中に残りの二つについて聞き込みだな。

 明日も公民館に人いるかなあ。ちゃんと予定を見ておくんだった。何かは書いてあったけど、時間がわからん。まあ、明日行ってみてダメならその時だな。

 風呂から上がると、疲れはだいぶ吹き飛んでいた。腹が減ってただけだったかもな。適当に宿題でもして寝るか。


 俺はドリルを二ページ終わらせて寝ることにした。もう残りは四ページ。明日には終わるな……。



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