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調査2


 休憩所に入り椅子に腰かける。


「どうしたんだ? 新聞の方はもう終わったのか」


「ああ、あれ以上めぼしい情報は無かったよ。そっちはなんか収穫あったか?」


 俺はさっき得た十二年前の失踪事件についての情報をかいつまんで教えてやる。


「……なるほど。まあ、未解決事件を僕らがどうこうするってわけではないけど、山を重点的に調査してみてもいいだろう。なんかそれっぽい場所を見つけさえすれば、こじつけで記事に出来るかもね」


 そうだな。新ベースも活かせるし、探索は当初の予定通りだから異論はない。


「書籍組はどうなったろうね」


「行ってみるか」


 ナオと連れ立ってトモヒロたちの様子を見に行くことにした。


 本棚の間を順々に見ていくと、トモヒロとエイコを発見した。意外と二人は真面目に本を探しているようだ。近くまで寄って声をかける。


「どうだ、見つかったか?」


「おお、ユウキ。地元の歴史っぽい本は無かったけど……」


 そう言ってユウキが目配せをすると、エイコは一冊の本を差し出してきた。


 ……なんだこれ?


「……妖怪辞典?」


 ナオも本に視線を向けたまま問いた。


「これが……この本の内容がこの地と関係あるのかい?」


「そういうことだ」


 トモヒロは自信ありげにそう答える。


 こいつだってそんなに馬鹿じゃない。それにエイコが付いているんだ。エイコが口を挟まないということは、ちゃんとした根拠があるんだろう。


「説明してくれ」


「おう、よく聞け。この本に記されてる妖怪の話のな、その一部がこの土地に酷似してるんだ」


「なるほど……つまりどういうことだ?」


 ナオ……その真顔やめろ。


「だから難しい言い方しないでそのまま言ったほうがいいって言ったじゃん」


「う、うるせー」


「あのね、さっき別れた後本棚見てたんだけど、もう、どう探していいかわからなかったの」


 うん、今度は理解できそうな話だ。


「でもって、受付の人に聞いてみたんだ。この辺りの不思議な話の本とかありませんかーってな」


「聞いちゃったの?」


 追従するタクヤの言葉に、俺はおもわず口を挟んでしまった。


「え、ダメだった?」


 エイコは戸惑い聞いて来る。

 俺はナオの顔を見た。するとナオは、


「いや、別にダメじゃないよ。どうせこの後は聞き込みとかするし」


 だ、そうだ。なんか他人の力を借りたら自分たちだけの成果じゃないというか、負けというか。エゴだったかもしれん。そんなことなかったようだ、悪かった。


「うん、ごめん。続けて」


「うん。それでね、この本を勧められたの」


「ほう、この本は一体?」


「実はだな、この本の著者はこの街出身なのだよ」


 これはトモヒロの言葉じゃないだろうな、多分受け売りだろう。


「へえ、君たちは知ってる人? まだこの街にいるのかな」


「ううん、全然知らないよね。もう二十年以上前に街を出てるらしいよ」


「それも司書さんがいってたのかい?」


「受付の人? そうだよ」


 さすが本にまつわる仕事をしてる人だ。知識深いな。


「それでどの部分がどう、この地に関わってくるんだ?」


「えっとね……えっと、あれ、どこだっけ……」


「山と神社と川と沼のやつだ。確か十七ページと三十一ページ、五十五ページに百三ページのとこ」


 みんなが一斉にトモヒロの方を向く。


「な、なんだよ……」


「ページまで覚えてたのか?」


「大体だよ。そこらへんかなーって」


「あ、でもすごい。合ってたよ」


 こいつにこんな才能があったとはな……。

 時々、驚かされる奴だよ。


「司書さんの説明も覚えてるか?」


「いや……、なんならもっかい聞きに行くか?」


「そうしよう」


 そうして俺たち四人は連れ立って、受付の人のところへ向かった。


「すみませーん」


「……はい?」


 流石はトモヒロ、物怖じしないこの性格、立派だよ。

 こっちはさっき怒られそうになった事を、ものすごく気にしてるってのに。


「すみません、さっき聞かせてもらったお話をもう一度だけしてくれませんか? 友達に伝えようと思ったんですけど上手く話せなくて」


「ええ……いいわよ」


「やった」


 やったね。エイコも人当たりがいいね。

 司書さんは肩まである黒髪で、綺麗な人だけど少し冷たい印象だ。だからさっき睨まれた件を根に持って教えてくれないんじゃないかと思った。


「それであなたたちがお友だちね。新聞君とパソコン君」


「……よくご存知で」


 司書さんはニヤリと笑いながらこちら向いて言って来たので

 俺はナオと顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。


「今日は他にほとんど人がいないからね」


「それで、この本がこの地に関わる……と」


「ええ、その本の著者がこの街出身なの」


「それはどこから読み取れるんですか」


「どこにも書いてないわ。知っているだけ。でなければ結び付かせるのは不可能ね」


「そうですか。この本の四つの話がこの地に関わってると聞きました」


「そう。山、川、沼、神社の四つね」


「これの根拠も知っていたんですか?」


「ううん。こっちは推察。一つの妖怪紹介について、一つ以上のエピソードが書いてあるんだけど、その情景から推測するに、そう考えられるの」


 すごいな。こんな分厚い本の隅々まで読み込んで、推察までしてるんだ。


「まあ、あなた達はどうせ、危ないからこれ以上の詮索はやめなさいって言っても聞かないでんしょうね」


「よくわかってますね」


 挑発するように机に肘つき手に頭を乗せて、上目遣いでそう言って来る司書さんに、こちらもまたニヤリと笑いナオが答える。二人とも表情こそにこやかだが交わる目線の中心では火花が散ってるかのようだ。


「まあね。でも、絶対守ってほしい約束事があるの。私からの忠告よ」


 司書さんは体制を変えて背もたれに寄りかかる。


「な、なんですか」


 何を言われるんだろう。それも、忠告って……。

 俺は息を飲む。


「絶対に一人では行動しないこと。一人で向かうことや現地で一人で探索するようなことは避けて。中には本当に事故が多いところもあるの。一人で行動してるともしもの時に……ね」


 助けも呼べないからか。

 これはもう一人で行動したら何か起こると暗に示しているってことも同義だな。


「よし、わかってもらえたんなら良かった。それじゃあこの辺にしましょうか。もうそろそろお昼よ。私も午前中に片付けないといけない仕事があるし」


 もうそんな時間だったか。俺たちは司書のお姉さんにお礼を言って場所を離れることにした。


 休憩所まで戻ってきた。とりあえず午前中の調査はこんなもんでいいだろう。

 しかしまだ昼まで微妙に時間があるな。

 タクヤもまだ来てないので、それまでは自由行動にしよう。


 トモヒロとエイコは漫画を読みに行くと言って、本棚の向こうへ姿を消した。

 ナオはさっきの辞典に目を通すとのことで、ソファーが置いてある読書スペースに行ってしまった。俺も辞典を読みたかったが仕方ない、ここは譲ってやろう。いろいろ考えた結果、俺も漫画を読むことにしてトモヒロたちの元へ向かった。


 それから十五分もしないうちにナオがタクヤを連れてこちらのスペースにやってきた。


 時間も十二時を過ぎていたので俺たちは昼食へと向かうことにした。



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