ファイナル最終戦争 ~エンド・オブ・フィナーレ~
(ニコ生を見てたら「ファイナル最終戦争」でなんか書いてと言われたので、深夜のテンションで書き上げました)
「この世から争いを無くしたい」
それが、俺の幼馴染、灰井路エンマ(18歳男)の口癖だった。
エンマはものすごい天才で、そして大馬鹿だった。
「というわけで、この地球上からすべての争いを無くすマシーンを作った」
「……馬鹿だろお前」
「失礼な。マサチューセッツ工科大学を飛び級で卒業した私を馬鹿だと?」
「で、そのマシーンの名前は何だ?」
「うむ。……名付けて、『エンド・オブ・フィナーレ』だ」
終幕の終了ってなんだよ。そんなに色々終わらせたいのか。
「私はまず世界中の争いというものを考えてみた」
「おう」
「争いというものは、相手の意見を受け入れられないときに発生する。……そう、から揚げにレモンを掛けさせることも、目玉焼きの焼き方も、きのことたけのこも、全てだ」
「どうって何がだよ。ちなみに俺はたけのこ派なんだけど」
「奇遇だな、私はきのこ派だ。さ、きのこに改宗しようか?」
「おう戦争だコラァ」
「そしてここで『エンド・オブ・フィナーレ』を使うと!」
ポチっと赤いボタンを押すエンマ。ピカッと白い光が俺の視界を埋め尽くした。うぉっまぶし。
視界が晴れると、そこにエンマは居なかった。代わりにそこに居たのは、ボンキュッポンの金髪ツインテールという、俺の好みドストライクの美少女が居た。
「私はきのことたけのこだときのこ派なんだけど、キミはどうかなっ」
「えっ?! えー、ええと、そ、そうですね、いいんじゃないですか?」
俺がそういうと、美少女はクックック、と笑った。……ハッ、この笑い、まさか!
「……ふっ。騙されたな。私だよ、エンマだよ。そして私がきのこ派といったにもかかわらず、お前はそれを受け入れたのだ!」
「――なん、だと?!」
いや、まぁさすがに分かってたよ。でも、なんで美少女に見えるんだオイ。
「なんでって、そりゃ『エンド・オブ・フィナーレ』の効果だからさ」
「……どういうこった?」
「細かい理論は説明しても分からんだろうから、効果だけ簡潔に言おう。これは他人が魅力的な人物になるというマシーンなのだ」
「よくわからんのだが」
「分からんのか馬鹿め。人間、相手が好みの人間だと自分の意見を曲げて同調したり、許容しやすくなるということだ」
「へぇ、それで争いが消えると?」
「今さっき実際に体感しただろうに。『※ただしイケメンに限る』とか『※ただし美少女に限る』というようなもんだ。殺されかけても相手が美少女なら許すだろ?」
確かに……と俺は納得しそうになった。が、やめといた。
「いや、さすがに殺されかけたら許さねぇよ?」
「……それは計算違いだったな」
と言いつつ、エンマ(美少女)は『エンド・オブ・フィナーレ』を片付けた。
「で、これの効果はいつ切れるの? 5分くらい?」
「は? 何を言っている。そんな短時間で効果が切れて平和になる訳がないだろう? 一生だよ」
「そうか。……おい、俺は治るんだろうな」
「は? 治るも何も、お前には何も手を付けていないぞ」
「わけのわからないことを……じゃあなんでお前が美少女に見えてるんだよ」
「そりゃ、お前の脳をスキャンして、その結果を世界に反映させたからに決まっているだろう」
……なんか今、とてつもないバカげたことを聞いた気がするんだが、気のせいだよな?
「世界から争いを無くすためだ、世界を改変するのは、まぁその、なんだ。致し方ない犠牲だった」
「いやいやいやいやいや。それだったら俺一人に影響が出る方がよっぽど平和だよね?!」
「馬鹿言うな。1人1人対象にしていたらいつまで経っても世界から争いは消えん。まとめてやった方が効率的に決まってるだろうが。今、全世界全ての人間がお前好みの美少女になっているぞ?」
「うわすっげえバカがいた! こいつ目的のために手段が行方不明になるやつだ!」
「だから私はマサチューセッツ工科大学を飛び級で卒業したと言っているだろうが」
こうして、世界は俺好みの美少女と俺だけになり、
なんやかんやで世界は滅んで戦争は無くなった――
「――と、なる前にちゃんと対処したぞ。私は天才だからな」
「おう自称天才。いい加減お前も戻れよいつまで美少女やってんだよ」
「…………いや、これも悪くないと思ってな? おっと、勘違いするなよ。お前のためじゃない、この姿であれば商店街の肉屋でコロッケをオマケしてもらえるのだ」
「コロッケくらい俺が奢ってやるから勘弁してくれ、俺にTS属性は無いんだ。なのにお前があまりにも俺好み過ぎて色々吐きそうだ」
これは、世界平和を願うマッドサイエンティストな俺の幼馴染と、それに振り回される俺の話。
(続……かない)