石丸順子
顔は変わっても、気が強くて嫌味な性格は小さいころのまま、そのままなのだと、そういう風に思いました。
しかし、驚いたことに、直美ちゃんは私の家の隣町に住んでいることが分かりました。
早速、次の日曜日に直美ちゃんの家の近くまで行ってみることにしました。
大きくて新しい真っ白な新築一戸建てに直美ちゃんは住んでいました。そして、暫く遠くから見ていると、中から男性が出てきました。
その男性は一人で出てきたので、私は距離を開けた上で後ろ姿を追いかけました。
そして、その男性はスーパーに入ったので、私も一緒に入り、初めて正面から顔を見ることが出来ました。
そうです、私の夫である学だったのです……。
私は、なりふり構わずに「まなぶー」と言って精肉コーナーの方へ行こうとする学を後ろから呼び止め、右手で学の左手を思いっきり引っ張りました。
学は驚いたようにして私の顔を見ました。
そして「誰?」と私をまるで初めて見たかのようにして言ったのです。
「何言ってるの?伊都学でしょ?ずっと探していたのよ?どこに行っていたの」そう言って私は、無理やり学の手を引っ張るようにして、公園に連れて行きました。
___が、しかし、その人は私のよく知っている学ではありませんでした。
十年経っているから、顔も変わっているでしょうし……。とにかく、その直美のパートナーであるご主人は、学と違っていい出身校の出で、学は英語なんて喋れるような人ではありませんでしたが、海外生活が長かったみたいで英語堪能でした。
それを見てしまった以上は、学だという事を認めざるを得ませんでした。
それに、もし学が演技をしていたのだったとしても、学があんなふうにして私の事を思い出せないという顔は出来ないと思うんです。
まるで変な人を見るかのような目つきで私を見るんです。
学をやっと見つけることが出来たと思って私は嬉しかったのに、全くの赤の他人だって事に、私のショックは大きかったです。