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すり替え  作者: 大和香織子
第二章 自白
46/49

古部洋

 殺害しようとまで思ってはいませんでしたから、直美を刺してしまった後、血まみれになったナイフを直美の車に乗っていたエコバッグに入れて、その場から立ち去りました。


指紋が検出できなかったのは、社長を車で送迎する為の綿手をはめていたままだったからでしょう。外すたびに忘れてしまうので、送迎の必要がある時には、なるべく外さないでいるようにしていましたから。


 ナイフを山中に捨てなかったのは、山中に捨てると警察犬が必ず見つけるだろうと危惧したからです。


 直美を刺した後は、かなり動揺しましたが、なんとか山を下りて、タクシーを拾い、何もなかったようにして自分の車の所まで向かい、そして、花川公園に上る途中の、急斜面の木の下にそれを埋めました。


 花川公園なら、警察犬はこないと思いましたから。

 こうやって捕まってしまった、ということは全国のニュースでながれるのでしょうか。


 勝手な事とは承知していますが、もう少しだけ時間を下さいませんか。


 一日、いえ半日でいいのです、それだけ時間があれば、私は家内の所にいき、離婚届を提出して来ますから。


 捕まる前から、考えてはおりましたが、私の代わりに逮捕される人たちを見て、つい決心が揺らいでしまいました。


 私はもう捕まることはないのだから、離婚なんかして娘の受験に響くような事をわざわざする必要ない、そう油断してしまいました。


 欲が出てしまったのでしょう。


 今こうして話していましても、私は直美よりも娘の事を愛しているようですね。直美は永遠に私の中で永遠に不動の一位だと思っておりましたが、時間と共に心が揺れ動いて行くものなのですね。


 刑事さん、この通りです。


 私は逃げも隠れもしません、自分が犯した罪をしっかりと償ってまいります。

 い、一時間で結構ですので、何も悪くない娘に免じて時間を下さい、おねがいします。


 早く離婚届けを提出し、妻の名字を名乗って娘が後ろ指を指されないように手配しなければなりません。


 どうか、どうかお願いします。


 私からの一生のお願いです。


 そうだ、刑事さんお金が必要ではありませんか?


 代表の秘書をやっている身として、億は軽く引き出すことが出来ますよ。


 それだけ金があれば刑事さんだって、誰かに使われたりしないで済むのではないでしょうか?人の下で動くという事は楽ではないでしょう?


 それ以外にも、野球の試合とかはお好きではありませんか?


 下請け会社から年間指定席のチケットが頂けるんですよ。


 かれこれ二十年前は、野球席がこんなに満席になるなんて考えていらっしゃらなかったでしょう?昔は自由席でさえいつ覗いても空席なんてザラでしたから。


 しかし、あの時は良かった。野球を本気で好きな人しかいませんでしたから。

 ・・・・・・。


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