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すり替え  作者: 大和香織子
第一章 証言
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石丸順子

私や施設で育った他の子たちだって、好きでそんな所にいたわけじゃないんです。

 ある日、男の子が30センチ定規を施設外の子にとられたのですが、取り返すと、その定規には「ステゴヤロー」とか傷つく言葉が書いてありました、私も後で見せてもらいましたので、本当の事です。


 その男の子は、当然ながら怒って、定規を奪った子を突き飛ばして怪我をさせてしまうという事件が起こりました。


 その夜、就寝時間だというにも関わらず、確か仕事が終わってそのまま来たとかで、22時過ぎとかそんな時間だったと思います。


 そんな夜遅くに大声で、怒鳴り込んできたのです。先生はご立腹の相手に仕方なくその男の子を起こして、謝罪するように促しましたが、「ごめんなさい」なんて言葉は中々言いませんでした。

 しかし、先生も時間の都合かどうなのか知りませんが、男に対して保護者と一緒になって男の子に怒鳴り始めたのです。


 その勢いに圧倒された男の子は、右手拳をギューッと強く握ってから「ごめんね」って謝ったのです。

 ねぇ、これを聞いてどう思いますか?何故、こちらは悪くないのに、理由も聞かないでこっちばかりに非があるという言い方をされた上に、問答無用で謝らなければいけないのでしょうか。


 その事柄は二十年以上経った今でも忘れられない出来事の一つです。

 いくら向こうが悪くても、こちらが謝らないと、私達の居る施設全体のイメージが悪くなってしまい、苦情もまた増えてしまう、だからこそ理不尽でも仕方ない……。

 もしも、その男の子の両親がすぐそばに居たとしたら―――?


 施設の子じゃなかったら?

 その時には相手の人がそれほどまでに、男に対して文句を言ってきていたのでしょうか?私たちはいつも、我慢をし続けないといけないのでしょうか?


 私たちが暮らした施設が、そんな感じだっただけで、他の施設がどうなのかは知りません。

 あくまでも、私が育った施設と言うのは、こんな風に理不尽でした。


 それから私には、反抗期と言うものはありませんでした。

 いいえ、ないと言ったら嘘になるでしょうか。


 周囲の大人に対して不満をぶちまけたいというのならば、それはいつも心の中にありました。


 でも反抗期を迎えれるって言うのは、傍で我儘を聞いてくれる人ありきなのではないでしょうか。


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