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すり替え  作者: 大和香織子
第二章 自白
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石丸順子1

石丸 順子 1


 実は、施設の方から手紙が届いたのです。


『 順子へ


この手紙を読んでいる時、順子はきっと苦しんでいる時なのでしょう。


順子、私は、あなたの母親です。

随分と身勝手な母親で、あなたはきっと憎んでいる事でしょう。

 

 順子が生まれた日、雪が深々と降り積もる真夜中でした。とても寒い日でした。

 順子は、私が愛した人との間に恵まれた子です。

 あなたのお父さんは、とても優しい方でしたが、既に家庭を持っていた方でした。


 私は一人で育てる覚悟で貴方を産みました。


 だけど、順子が1歳になる前に心筋梗塞で倒れてしまいました。気が付くと病院で、順子は施設で見てもらっていました。


 愛おしくて寂しくて、はやくあなたの事、私の娘の事を抱きしめたくて、だけど発症してしまった心筋梗塞は思ったよりも重く、退院なんていつできるのか分からない状況でした。


 退院できてからも、後遺症が残ってしまい、不整脈の発作が出ては、動悸やめまいがして、順子のお世話を見られる状態ではなくなってしまいました。


 順子はきっと辛い思いをいっぱいしてきたでしょう。お母さんが恋しくて沢山涙を流したと思います。

 順子、ごめんね。ごめんね。ほんとうにごめんなさい。


 謝っても順子との時間は帰ってこないわよね。


 たった一人の我が子に会えないということはとても辛くて。体調の良い時には小学校から施設へ帰っている姿を見に行ったりしました。


 チョコレートを持って一度だけ話しかけたことがあるのよ。覚えていないことでしょうね。

 目の前にいる愛おしいあなたを私のこの腕で抱きしめたくて、涙が出そうになる所をぐっと、堪えました。


 お母さんだよ、そう言っていいたかった。


 でも、私と二人で暮らしをしても、順子には苦労を掛けるだけだから……。


 この手紙は、私の古い友人に、順子の身に何か起こったら送って欲しいと言って頼んであります。


 私はいつどうなるか分からないから、せめて手紙だけでも残そう、とそう思いました。

 それから住所を書いておきます。


 結構いい所に今は住んでいます。あなたの部屋も用意しています。鍵も同封しておきます。

 いつでも、待っています。


 格安物件を買えて喜んでいましたが、あなたのお父さんが、私達の為にお金を支払ってくれていました。これは後で知った事です。

世間を知らな過ぎたということかもしれません。


私の事を無理に、許そうとしなくても大丈夫です。

私が一番分かっているから。

                   順子の母 日比ヨネ子



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