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すり替え  作者: 大和香織子
第二章 自白
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加瀬信也

 身体は痛くても、口を動かすことは難なく返事をしたら先生が三本の指を目の前に立てて「何本に見えます」というので「三」と答えた後に「ご自分の名前分かりますか?」そうやって言ってきました。


 名前を聞いてくるなんて馬鹿げていると思いましたが、医師がいうのですからこちらも真剣に答えなくてはなりません。


 しかし、僕の口から名前と言う物が出てきませんでした。


 それは、事故に遭った衝撃で記憶喪失になってしまった、という事を意味していました。


 僕は車に轢かれた衝撃で、2~3m上空を舞い上がったそうですが―――加害者の証言から―――しかし、それほど酷い事故ではなかったようです。 

 実際、腰の骨は折れていましたが、その他は軽いかすり傷程度でしたし。


 ただ、搬送されて数日たっても、目を覚まさないので心配されたようです。


 目を覚ましてから、脳の検査などしましたが、どこにも異常はないらしく、おそらく強いショックによる記憶喪失と言う事でした。


 名前だけでなく、自分に関する一切の事を忘れしてしまっていたのです。住所や自分がどこの誰で何をしていた人なのか……それが分かりませんでした。


 病院では、焦って思い出そうとする日が続きましたが、無理に思い出そうとするほどに、頭が割れそうになってしまいました。


 退院してからも、それらは相変わらずでした。しかし、そんな事ばかり言っていられませんでした。

 生きていかなければならない。


 就職が厳しいご時世ですから、こんな僕を雇ってくれるところなんかなく、なんとかそれでも雇ってもらったのが、ガソリンスタンドでした。


 もちろんアルバイトです。一生懸命働きました。


 人のいい店長は、行く宛てのない僕を家に泊めて下さいました。本当に感謝しています。給料がでるまでは、食事も作ってくださいましたし。もちろん後から、その分のお金はお返ししましたが。


 そして、直美と会ったのです。


 直美が驚いたようにして僕の事を見た意味がその時にはわかりませんでした。

 その後、直美を付き合う様になり、自分が誰だか分からないこともきちんと話しました。


 それを知ったうえで直美は僕との付き合いを深めました。


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