石丸順子
第二章自白
石丸順子
数日前に私の元に一通の手紙が届きました。
驚きました。
『拝啓 石丸 順子様
お元気でしょうか……。
僕は元気です。君にそんな当たり前の事を聞く権利すらないとは思っています。
ごめんなさい。
君の前から姿を消してしまったことを、本当に申し訳なく、そしてどんなに謝ったところで許してもらえるものではないと、そう思っています。
こうして、君に手紙を書く資格すらないとは思っています。
しかし、何も言わずに姿を消してしまったままでは終われない、そのような思いから手紙を書かせて頂きます。
もしかしたら、僕から手紙が届いたと分かった時点で捨てられてしまうかもしれませんが、それはそれで仕方ないと思っています。
僕は、随分と酷い過ち犯してしまいました。
それは、ここでは言えません。本当ならこうして手紙なんかで自分の気持ちを伝えるのではなく、実際に会ってからお話ししたいのですが、どうもそれを叶えることは出来ません。
しかしながら、僕が君の夫であり愛されてもらえるような男ではないと言う事は明らかです。
君の辛い過去を知っておきながら、同じような思いをさせてしまったこと……。
ごめんなさいという言葉なんかですむものではない。
君は大きく傷ついただろうし、きっと沢山泣いただろう、そうやって考えると胸が苦しくなる。
自分でそういう事をしておきながら、悲しいというのは自分勝手だってわかっています。
しかし、僕はもう君の事を好きではありません。すまない。
君への申し訳ない気持ちはあります、だからこそ、こうやって君へ謝罪することで少しでも自分の罪を軽くしたいのかもしれません。
僕はそういう男なんです。
君の為に手紙を書いているようでいて、自分の為に書いている。
僕の事は、人生の中で出会った一番最低な人間だと、そう認めてもらって構いません。
全て、僕が悪い、僕の中の悪魔が悪い、君は悪くない。
さようなら。お元気で。
学』
本日はここまでです。




