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すり替え  作者: 大和香織子
第一章 証言
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石丸順子

私はこの頃、夢か現実なのか分からなくなってしまいそうな時があるのです。まさか、直美ちゃんが、あの生意気だった直美ちゃんが、殺されてしまうなんて。

 背中をナイフで刺されたんでしたっけ。


 ですが、何度も言いましたが、直美ちゃんが私に「ねぇ施設って、お家がない人とか、お母さんとかいない人が住むところなんでしょう?お母さんが言ってた。順子ちゃんのお父さんとお母さんは、どうしているの?」と言ったのは、既に過去の事ですし、今殺すんなら30数年前に殺していたと思います。


 あの時の方が、私の硝子のハートは傷ついていたのですから。


 それから、先ほどもお話ししました通り、直美ちゃんのご主人は学でないことは、きちんと分かりましたし、学でもない人の事を取られたと言って騒ぐことはしませんよ。私だってそれくらいの節度はありますから。


 今になって考えてみても、学はあんなに太っていなかったし、もっと顔が艶々でしたから、あれは他人のそら似というものでしょう。

 多分、学に似た人が現れたことで、骨格が似ている、というだけで直美のご主人が瓜二つに見えてしまったのでしょうね。性格も違うでしょうしね。


 それに、今、学が私の所に戻って来てくれたとして、直美のご主人と学を隣に並ばせたら、全然似てなかったりするのでしょうね。

 この十年、学に会っていなかったにしても、学の顔を忘れる事なんてない、と思っていますが、人間の記憶と言うのものは、機械じゃないので曖昧な物だったりしますしね。そして古い記憶は時が経つと共にどんどん美化されてゆくものですよね。


 直美のご主人が、学であったらそんな風には考えていないと思いますが、学でなかった以上、異常なまでに期待してしまった自分の心を、どうやって楽に考えさせるのか、それを考えた時に、学はきっと私に忘れないで欲しいという気持ちをもっているでしょうから、いいえそう信じたいだけかもしれませんが。

 どこかで私を思って寂しがっている学のそっくりさんを神様が愛に飢えている私の所に運んできてくれたのではないか、等とそんな風に思っています。


  直美のお母さんは大丈夫でしょうか。……先ほど、名前にだしませんでしたが、エプロン姿のお母さんに憧れたっていう人物、あれは直美のお母さんのことです。


 憎らしいはずの直美のお母さんに憧れているというのは、プライドが許さず、さっきは名前を出しませんでしたが、亡くなった直美の事を考えると直美もまた可哀相な人生だとそう思います。

 直美が羨ましかったけれど、今は羨ましくはありませんから。それは負け惜しみではないですよ、決してね。


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