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くーろん  作者: 虹ぱぱ
一章:旅立ち
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6話:ロンと選択

まずは燻製肉を一切れ頬張る。野生独特の臭みもなくなってうまい。

鹿肉・・・多分鹿肉には脂身が少ない。だが旨みが詰まっていた。噛めば旨みが口の中に広がった。

次は炊き込みご飯だ。山菜と茸の独特の風味がひろがる。ふんわり優しい風味の山菜と薫り豊かな茸の独特の食感と薫りから感じる風味を楽しむ。米を噛めば噛むほどに甘みも増していく。俺は米を使った料理は炊き込みご飯こそが正義だと思う。まあ毎日食べるには贅沢に過ぎるが。

燻製肉を齧り、飯をかきこむ。風味と食感、旨みが混然一体となって幸福感を生む。美味しい。

俺は今、幸せだ。


涙を流しながら燻製肉を頬張る狸親父を見るまでは幸せだった。


早く狸と鹿の事は忘れよう。これはただの燻製肉だ!齧る!美味い!美味いは正義だ。

母さんには遠く及ばないけど美味ければ料理の腕も上がってきている事を実感出来て楽しい。


息子(ロン)の料理が泣く程、美味いか。そうかそうか」


母さんが狸親父を見て満足そうに言った。違う。あれは想いを寄せた相手がNTRされた漢の哀しい末路だ。


暫く無言で食事を楽しむ。

狸親父は燻製肉を持って縁側で月を見上げながら酒をちびちびやりだした。

母さんはじっくり噛んでゆっくりと食事をしている。母さんは食べるのが遅い。よく噛んで食べているからみたいだ。

俺は食事終えて後片付けに立ちあがろうかとした所で狸親父が声をかけてきた。


「ちょっと待つヨ」

「ん?」

「今朝話していたご褒美の話ヨ」


ああ。そういえばそんな話もあった。リンちゃんとご褒美みたいなキイのいい尻を見たからすっかり忘れていた。結構楽しみにしていたはずなのに。


「小夜ちゃん。ロンはちゃんと僕の注文を頭で考えて読み取って足枷つけた状態で熊を狩ってみせたヨ。約束通りロンに選択肢を与えるヨ?」


ぞくりとした。スッと母さんの顔から表情が消える。あの顔はウーロウがかつて言った人の胸をえぐれる言葉『絶壁』発言した時と同じ表情だ!


「そんな怖い顔しても駄目ヨ?ちゃんと前から言ってたヨね?」


ぎりっ・・・。母さんから歯を軋ませる音が聞こえた。


「ロン。君には二つ選択肢をあげるヨ。好きな方を選ぶといいヨ」


母さんは我慢をしているみたいだ。耐えている事を確認して狸親父が言葉を続ける。


「一つ目はロンに宝貝(パオペエ)を与える。まあただ与えただけじゃ使えないから修業の段階を上げるけど」


宝貝・・・!俺の目標の一つだ。宝貝とは仙人の力が宿った千差万別の事象を起こす道具だ。個人で行う仙術に比べて起こせる事象が桁違いなのだ。

例えば俺が仙術を使って水を生み出すとする。湯飲み一杯位がすぐに出せる量だ。空気中の水分を感じ取ってくっつけていくイメージだ。だが適した宝貝であれ湯飲み一杯分の水を生み出す感覚で豪雨を起こせる。空気中の水でなく雨雲をかき集めるのだ。


「修業は今よりもずっと厳しい。宝貝を使えるようになるまで5年程度はかかると思うヨ」


修業が厳しいのは今更だ。物心ついた時からやってきた事だから5年という数字もまあそれくらいかかるよねって位の感覚だった。


「もう一つの選択肢はこれヨ」


懐から取り出した封筒に入った手紙を渡してきた。

封はされていなかったので開けて中を読んでみる。


「・・・・ヤムチヤ王国魔術学院への推薦状?」


学院長のパオという人が書いたものみたいだ。


学院に入れるって事かな?けど意味が分からない。俺はそもそも


「魔術なんて使えないけど?」


習った事はないし習う相手もいなかった。狸親父も少し研究したらしいが「理論は理解できたけど僕には使えないヨ」と言っていた。仙人として完成してしまった為に駄目らしい。母さんに難しい事は出来ない。

それでもこの魔法と剣が栄華を極めるこの大陸でやっていけたのは仙術や気功、武術といった技術が優れていたからだ。比較的に近くにある村の人くらいなら交流もあるが狭い世界で生きてきた。魔術に精通する人とは縁がなかった。今日会ったキイとかは魔術を使えるみたいだから今度教わってもいいかもしれない。


「うん。だから学べる環境を伝手を使って用意したヨ。普通は魔術を使える子だけが12歳から通う学院みたいだけど仙術は他の人から見たら魔術みたいなもんだから問題ないヨ」


「ご褒美からその二つから選べって事か?」

「そう」


考えてみる。

正直、今の生活に不満はない。山の中じゃ刺激がないなんてとんでもない。修行していれば色んな所で色んな体験をする。狸親父の修行はひどいのが多いが感動も喜びも発見もいっぱいある。ウーロウの存在が大きいが共に強くなってきたあいつには負けたくない。狸親父や母さんよりも強くなりたい。『最強』を目指してみたい。漠然とした想いがあった。だから修業も苦ではなかった。いや、しんどいけどな。


外の世界や魔術に関しては興味はある。狭い世界で生活してきたから学院に対して不安に打ち勝つわくわくした期待感がある。今日見たキイは魔術を使って普通に『飛んで』いた。飛竜から逃げる事が出来る程の速度で。俺には出来ない事だ。今俺が出来る事はかなりの集中力と気を要するが空を『駆ける』だ。簡単に出来るなら今日も熊を担いで空を駆ける方が効率的だしな。『飛べる』魔術と『駆ける』仙術の違いについて好奇心が刺激されないかと言うと嘘になる。外には知らない事がきっといっぱいある。


けれどだ。多少魔術を使える盗賊とかも相手にした事がある。正直、雑魚だった。魔術を扱える盗賊は稀少で界隈では有名な盗賊だったらしい。でも相手にはならなかった。


キイを見て少し考えを改めたが魔術は発動が遅いのだ。魔術師の腕にもよるのかもしれないが。無駄が多かった。狸親父の指示で盗賊が魔術を発動させるまで待ってもみた。出来あがった術式は火球を飛ばすものだった。その火球は気を通した俺の拳で吹き飛んだが。


その時に少し思ってしまったのだ。魔術ってこんなもんかと。俺の周りの人達がすごいだけだけだと気付けてはいるけど。

学院っていうのは12歳から入って6年学ぶらしい。

6年もあれば宝貝を使いこなせる程度に仙術を極めてより強い己になる事が出来るはずだ。


それに母さんから感じる『私と6年も離れるなんて!』っていう悲壮な想いがひしひし伝わってくる。めっさ愛されてる。


だからあまり迷わなかった。俺は選択する。

「宝ペ、、、」


「あと伝えておくことがあるヨ」

選択肢を伝える前に狸親父が喰い気味に言ってきた。

「僕は魔術師に負けた事があるヨ」

「えっ」

俺の中の最強は狸親父と母さんだった。


「ロンが生まれて物心つく頃位までの暫くこの大陸を旅していた時の話だヨ。その紹介状のパオって人に負けたんだヨ」


すごく興味のある話だった。驚いてて声も出せなかった。


「それとね。ロン。忘れてないかい?」


狸親父が一拍おいて続ける。


「・・・女学生」


キュン!

俺の胸が高鳴った。


「・・・女教師」


キュイン!キュイン!

俺の胸で名状しがたいパトランプのようなものが鳴り響いた。


「俺、、、、、、学院に行くよ!!!!」

こうして山の引き籠りは学院に行く決意を固めた。

学院に行く決意をしたけど母さんには泣かれ、殴られた、意識を刈り取られた。理不尽!

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