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くーろん  作者: 虹ぱぱ
一章:旅立ち
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5話:ロンと燻製

キイにちょっかいかけ過ぎたので少し急いで家まで戻ってきた。

熊をとりあえず家に持って行って裏にある泉で汗を軽く流しておく。

汗を流したついでに水を汲んで家に戻る事にする。


狸親父はまだリンちゃんとやらの所に出ているみたいだ。多分帰ってきたら賢者みたいになっているだろう。変態め。


少し離れた所で母さんとウーロウの気配がする。大気を震わせるほどの怒気(かあさん)歓喜(ウーロウ)の感情が伝わってくる。きっと修行と称したSMプレイだろ。変態め。


俺は水浴びをしたので『全裸』で家路を闊歩(かっぽ)する。堂々と誇らしげにドヤ顔で。自然の中にあふれる気を肌を外気にさらして取込んでいるのだ。狸親父の国では仙人は霞を食べて過ごしていると勘違いされていたらしい。気を取込んで循環させている所を勘違いされたのだろう。俺はそれをしているだけだ。断じて変態ではない。断じて否だ!


「変態がいるヨー」


見られた!恥ずかしい!抹殺せねば!と声のした方を向く。

俺に気配をここまで殺して近づけるのは変態達しか知らない。俺が互角にやり合えるのはウーロウくらいしか変態の中にはいない。つまり殺せない。返り討ちにあうだけなので気を落ち着かせる。


「仙人の品位を下げるからそんな変態行為はやめてほしいヨ。外気取り込むのに服を脱ぐ必要がないって何度言えばわかるの?」


変態に変態と呼ばれる屈辱に耐える。平常心を失えば何日か飯が食えない身体にされる。

飯が食えない身体に強制的に肉体改造だ。「やめろ、狸ー!! ぶっとばすぞー!!」と何度抵抗してもバットエンドしかなかった。


なので無理やり話題を逸らす。


「・・・・リンちゃんとやらの美脚は射止めたのか?」

「くっ!僕にメス鹿ビッチの事思い出させるなんて!あいつ男がいたヨ!何匹も!僕以外のオスなんてみんな去勢すればいいんだヨ!」

なにか哀しい事があったようだ。てかやっぱり鹿だったようだ。俺の歓喜が大気を震わせる。狸親父の不幸とか嬉しいだけだった。

「そうだ!去勢しヨ!」


そんな軽いノリで言われても。こいつはそれをやる実力があるから性質が悪い。


「僕の不幸で歓喜した馬鹿弟子とかからまずは去勢しヨ!肉体改造だヨ!ひゃはーっ!!」

言うや殺気を纏って襲いかかってきた。


『全裸の弟子VSイケメガネ狸仙人』


そんな発酵少女しか得しない状況で俺は全力を賭して闘った。

大切なナニを守る為に。

「今わたしはあなたを超える!!」

そんな人生で一度は言ってみたい台詞を言いながら全力で迎え撃つ!『全裸』で!

ナニを振り回しながら攻防を続ける。暫くすると狸親父はうずくまった。

「汚物が視界にちらちら入ってきて気持ち悪いヨ、、、。ただでさえ心折れてる所に僕の弟子がこんなに阿呆で変態なんて落ち込むヨ、、、。」

言いながらしょんぼりしている。俺は勝った!大切なナニを守りきった!まだ付いてる!俺は男だ男だぞー!────しばらくして哀しくなった。争いはいつも哀しみしか生まない。



家に戻って服を着る。

「じゃあ飯の材料採ってくる」

「今日は僕が採ってきたよ」

そう言って狸親父が腰に下げている袋から食材を出した。


山菜、茸に肉もある。

「へー。珍しいな。狸親父が食材採ってくるなんて」

「んー?今日はロンがもう少し時間かかるかと思ったんだヨ。熊担いで山4つだからねー。思ったヨり早かったみたいだねー」


きちんと日々修行している。狸親父の想定よりも強くなっているのかと思うと少し嬉しくなった。

「じゃあ飯の準備をするよ。これはなんの肉なんだ?」

鹿肉リンちゃん・・・・・」

「----ぇ・・・・」


カナカナカナ…とひぐらしの声がする。今は夏場だ。蝉くらい鳴く。だけど聞こえる蝉の声は夏風に乗って惨劇の匂いがした。


「そうか!晩飯は美味しくするな!」

俺は必死に恐怖に支配されそうになる心を切り替えた。事実かどうかを確かめる事はしない。感謝を持って美味しく食べる為に迷いが生まれてはいけない。

前にも言ったが狸親父はひどいやつでクズなのだ。


さっさと立ち去って調理に取り掛かる。

何を作ろうか。どう美味しくしてやろうか。メニューを考えて決定する。

山菜や茸を使って炊き込みご飯を作る。

リンちゃんは・・・鹿肉は燻製にすることに決めた。日持ちも良くなるな。

まずは鹿肉の燻製から作る事にする。

鹿肉をブロックに切り分けて細かく穴を開けておく。香草の塩漬けを取り出して細かく刻んで鹿肉に開けた穴に刷り込んでいく。大きな葉を取り出し鹿肉を包んで密閉する。くんできた水の上に板を置く。その上に鹿肉を置いた。普通はここで冷やして1週間程度は塩漬けで寝かせるらしい。が、そんなに待ったら晩飯に間に合わない。待ってたら餓死する。

ここからは仙術を使う。水から登る微かな冷気を感じ取り強化する。板の上を冷やしていく。くるんだ鹿肉に触れながら状態を加速していく。一週間程度寝かせた状態の鹿肉を作り出す。鹿肉を取り出し水につける。塩を抜いていく。これも本来は時間がかかる作業だ。丁寧に仙術を使って状態を整えていく。

庭に出て昔作った手製の燻製窯に並べていく。燻製剤を燃やしてしばらく置いておくことにする。後は肉をひっくり返したりしながら様子見だ。

その間に炊き込みご飯を作っておくことにする。

米は狸親父が作っている。仙術を使って色々作っている。

米を水でといだりしながらぼんやりと今日会ったキイの事を考えた。

今は夏場だ。外は熱い。キイの恰好は暑苦しかった。帽子にローブ。手袋までしていた。本で読んだ知識では吸血鬼は日光に弱いらしいからそれの対策だろうか?眼鏡をとるまではもっさりしたちんちくりんだった。だが、あの尻は素晴らしかった!

等々考えながら料理をしていく。大体の準備を終えた。ご飯を蒸らす。燻製も荒熱をとる為に置いておく。

その間に外に作ってある風呂に湯を張っておくことにする。裏の泉と風呂の距離はそんなに離れていない。まずは泉に行き裸足になる。足に気を集中させる。そのまま水の上を歩いて中央辺りに行く。掌を合わせて集中。合わせた掌をこすり合わせて泉の上に置く。右手に強化した摩擦熱を左手で水を風呂の中に弾いて軌道を作る。その軌道に合わせて右手の熱で暖め、水から湯へと加速させた泉の水を流していく。今ではこの行程が5分程度で出来るようになった。狸親父なら泉に触れる必要すらないからもっと早いだろうが。

風呂を沸かすという修行は目に見えて上達が分かったので楽しかった。

初めは桶に水を汲んで風呂の水を湯に変えていた。一回沸かすのに1日かかった。そこから少しずつ、だが確実に上達して今に至る。

風呂をお湯で満たす。風呂の方に行く。風呂に手をあて気を流す。今度は風呂の熱が下がらないように減速させる。飯を食べている間に冷めてたでは二度手間だ。


全ての準備を終えて家に帰ると母さんが帰ってきていた。ウーロウはいない。大気を震わせるほどの怒気だ。彼の身になにか不幸があったのだろう。あえて訪ねたりしない。母さんが「おかえり」と言った。


「ただいま」


母さんが燻製肉を切り分けてくれてた。母さんは脳筋で絶壁だが料理の腕は俺より上だ。切るのは得意だ。燻製肉を作った時のように仙術を使って行程をすっとばすことは出来ないが腕はいい。

昔、狸親父が「女に胃袋を掴まれたら終わりだって飛虎が言ってたヨ」と父さんの事を教えてくれた。


すすけた背中で酒を飲んでいた狸親父も呼んで食卓を囲む。



手を合わせて「いただきます!」とみんなで言った。

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