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くーろん  作者: 虹ぱぱ
一章:旅立ち
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3話:ロンと飛竜

「はっ!」


気合と共に石を飛竜に向けて投げた。お腹あたりに命中させる。


「ごぉ!!!?」


いきなりの衝撃に驚いて叫びを上げた。

そのまま飛びながらこっちを見て、殺気を飛ばしてきた。

こっちも軽く殺気を返して喧嘩を売る。まずは女の子から飛竜の注意を逸す。

そのまま女の子を追うか、こっちに狙いを変えるか考えたようだったけど挑発するように飛ばした殺気が気に食わなかったらしい。進路を女の子から俺に変えた。


女の子は叫びながらそのまますっ飛んで行くと思っていた。

女の子も何を思ったのかこっちに進路を変えた。


「きびぃ!づがまっでぇ!」

っと叫びながらこっちに突っ込んできた。涙と鼻水で何を言ってるかさっぱりわからない。

こっちに手を伸ばしながら言っている所をみると「きみ!掴まって!」とかその辺りか?

後ろから迫っている飛竜が俺に進路を変えたのに気付いて、殊勝にも必死に逃げている中でも俺も一緒に逃がそうと思ったんだろう。


迫ってくる女の子をよく観察する。この子を女の子と判断した理由は2つ。声と後ろで大きく括った三つ編みが見えたからだ。長い前髪と深く被ったつば広帽子。日光すら遮断しそうなぶ厚い眼鏡のおかげで顔立ちが分からない。黒いストンとしたローブで体系もわかりにくくなっているのでその二つで女の子と判断した。見た目は魔女!ってスタイルだ。地味目を好み、形から入る魔術師にはたまにいる格好だ。箒を使っているのもなんともレトロスタイルだ。

変わっているところは髪が白銀色なのと顔を覆う程の分厚い眼鏡か。


その女の子が伸ばしてくる手と箒をそっと掴んで、突進する勢いを殺す。

勢いを殺しなが横にある川に女の子を放り投げる。


どっぽーん!っといい音がした。


後で話を聞く必要があるのと説教する為だ。



気配だけを追っているときは獲物を狙っているんだと推理したけど様子が違う。

飛竜は怒っていた。怒られるような事をしたんだろう。飛竜は凶暴なものも確かにいるが人と共生出来る竜種だ。比較的に温厚な性格のものが多い。凶暴であれ温厚であれ獲物として追われるのであれば怒りはすまい。この女の子が飛竜に何か余計な事をしたのだろう。

そうゆう意思を込めて投げた。


漢字一文字で3つ好きなものをあげろ!と言われればこう答える。


3位:本


2位:桃


1位:女


12歳で何を言っていると思うかもしれない。けどよく見て考えてほしい。

2番目に好きな桃が女の子には2つもついているんだ!女の子は胸と尻に果実を飼っているんだぜ?

大きかろうが小さかろうがすぃーつを二つも持ってる女の子が一番好きだ!

桃と違って甘くないじゃんって?っ馬鹿!あめぇよ!12歳には女の子の果実は甘いって幻想(ゆめ)くらいみさせろよ!「女なんて顔で寄ってくる豚だヨ?」なんて動物の脚をこよなく愛する変態狸な幻想殺しや本で読んだ伝記の鳥の魔物ををこよなく愛する槍使いの勇者みたいなことは聞きたくない!

そもそもあの二つは揺れるんだ!蠱惑的に!魅力的に!おっぱいを揉む感触を味わってみたくて何度、仙術、気功、武術を駆使して風を掴んでみたことか、、、、。

すごい勢いで走りながら風を揉むとおっぱいの感触がするらしい。やってみてわかった事は虚しさ。所詮は本物を知らないがゆえに「これは本当におっぱいの感触なの?」っとなるのだ。息をするように気を扱えるといっても気を扱うには集中力が大事だ。邪念で気を散らしながらの状態ですごい勢いで風を揉みながら走っていると事故る。頭の中で「おっぱい!おっぱい!おっぱい!」と叫びながら走っていると気付いた時には地面と接吻するか、木や岩や壁と熱い抱擁をかます。気を散らして身体強化が解けかけている状態だからものすごく痛い。痛みと「これは本当におっぱいの感触なの?」という疑問と、本物を知らない無知な己への悔しさと合わさってひどい虚無感に襲われた事があった。虚無感の中自分に問いかけた。

「己の夢はこの程度の痛みに負けるのか?」

「否!」

「己の夢はこの程度の悔しさで折れるのか?」

「否!」

「己の桃源郷へかける情熱はこんなもんか?」

「断じて否だ!」

「「本物を知らないならばいつか本物を知ればいい!!」」

そして俺の熱い思いは更なる高みへと────、、、、



閑話休題。


俺が好きな女の子だが10歳くらいの「ちんちくりん」だから川に叩き込んだわけではない。

女の子には誰でも優しく接するように心がけている。

例え相手が「ぼんっきゅっぼん」のナイスバディのお姉さんでも川に放り込んだだろう。濡れて張り付いた服や透けた服の上から凝視とか放り投げるまでの間に揉んでみる位したかもしれないが。


ちんちくりんは何が起きたのかわかってないのか川から起き上がってぽかーんとしている。

まあ助けてに行って川に放り込まれればびっくりするだろうよ。

とりあえずちんちくりんは無視して飛竜に向き直る。


俺に向かいつつも怒りに染まった瞳で体はちんちくりんを見ている。

さっき飛ばした殺気とは比べ物にならない強大な殺気を飛ばす。気を使って仙術で多少、殺気という事象を強化する。

ここで襲いかかってこない限り、本当に殺すつもりはない。非はおそらくちんちくりんにある。もし非がないなら川に放り込んだことは後で謝ろう。


殺気を感じ取って飛竜が驚いている。怒りよりも恐れの色が瞳に浮かぶ。こうゆう脅しは好きではないが今は手っ取り早い。

飛竜は竜種の中では弱い。あくまで竜種の中ではだが。素早い飛行能力に加え、鋭い爪や牙。優れた視力や今のように殺気を感じ取れる知性は持ち合わせている。

人にとっては十分驚異だ。だが人の中には共生が出来る者もいる。竜騎士と呼ばれる者だ。そういった人達は飛竜をしっかりと手懐けているという。

手懐ける方法は3つあるという。

一つ目は飛竜が幼い頃から暮らすということ。

二つ目は尊敬させること。

三つ目は恐怖。


掌を空中に浮かぶ飛竜に向ける。

掌を下に向けゆっくりっと下ろしていく。重圧をかけられたようにそれに合わせてゆっくりと飛竜も地上へと降りてくる。地上に降りた飛竜の目と視線を合わせる。視線を合わせる事数秒。

飛竜は頭を垂れ服従の意を示した。


「え・・・なんで・・・・・」


ちんちくりんがその様子を見てつぶやいている。

川に放り込まれた事よりも驚きが強かったようだ。

はじめに殺気で恐怖を与え、強者の器で畏怖の念へと昇華した。飛竜に近づき頭を撫でる。

とりあえずさっさと片付けて帰ろう。


「俺はクーロン。ちんちくりんの名前は?」

まずは自分が名乗る。礼節は大切だ。

「ちんちくりん・・・!・・うぇっ・・と、わ、私はキイです。」

「晩飯までには帰らなきゃいけないからとっとと聞かれる前に言うけど、川に放り込んだのはちんちくりんに問題があると思ったからだ。飛竜が餌として追っかけているんじゃなくて怒って追っかけていたからな。

んで?飛竜に何したの?」

「うぇ?お・・・?えぇ?」

会話のテンポについていけないのか混乱している。落ち着かせる為にもうゆっくり一度言う。

「んー。飛竜に聴く限り『この泥棒が!』って感じで怒ってるっぽい。何か盗ろうとしたの?」

「あ、あの、、、。師匠に飛竜の鱗を三枚採って来いって言われて。あ、私は魔術師の弟子でその師匠に言われて。それで巣に落ちてるのをこっそり採って、、、」

「鱗?落ちてるのとか拾う分にはあんなに怒らないと思うだけど?」

「い、いえ!それは私が確かに悪くて、、、、。巣に入った時に飛竜の卵があって、珍しくてつい触ってしまって、、、、」

「卵を盗ろうとしたんじゃなく?」

飛竜の卵の価値は高い。用途が幅広くある。

「ち、違いますっ!ただ近くに飛竜の幼生体もいて!可愛くって!こんなに可愛いのがこの卵から孵ってくるんだと思ったらつい、、、、」


で、それを見られたと。嘘を言っている感じではなかった。

「あの!野生だと思っていたけどその飛竜はあなたの飛竜なの?」

「いや。でもなんとなく伝えたい感情とか雰囲気程度で会話出来るから」

気を通して直接伝えたいことのやり取りをする。相手に触れている必要があるけど。

狸親父は普通に会話しているけど。

「え?あなたの飛竜じゃないの?」

簡単に手なずけたから勘違いしたんだろう。

仙術だとか気功だとかの説明はめんどうなので適当に省いて言った。

「違うよ。こいつとは初めて会った。まあ本で読んだ知識で生態はある程度知ってたし、特別な方法で簡単に会話も出来るからね」

『以心伝心』の仙術だ。自身の気と相手の気を繋いで直接相手に感情を伝える。人が相手なら会話も可能だが、飛竜は言葉が分からないので言いたい事の噛み砕いてイメージを伝える感覚だ。


「そうなんだ、、。じゃあ、あの、私の言っている事を伝えられる?」

「出来なくはないけど」

「ごめんなさいって!謝りたくて!大切な卵に触ってごめんなさいって、、、」


追われて死にかけた事や川に放り込まれた事とか気になる事とかあるだろうけどまずは自身の非を認めて謝りたいという。飛竜が方向変えて俺を襲おうとした時も真っ先に俺に向かって一緒に逃げようともしたし。まあ川に叩き込んだけども。


悪い娘ではないのだろう。


「いいけど、伝えるのはちゃんと自分でしなよ」

手をちんちくりんに差し出しながら言う。

「え?」

「俺の手を握って。感情と言いたい事をそのままこいつに伝えるから」

戸惑いながらもおずおずと伸ばしてきた手をさっさと掴む。冷たい手だ。川の所為かずいぶん冷えている。

「・・あ・・・」

「深呼吸して・・・・・次に言葉にしながら伝えたい事をしっかり思って」

数回深呼吸して落ち着かせる。なぜかひどく緊張しているようだ。

深呼吸して落ち着いたのか、謝ることを優先したのかちんちくりんは飛竜の目をまっすぐにみる。

「あなたの大切な卵に触ってごめんなさい!」

ばっと、頭を下げる。そのまま思っている感情を伝える。まずは反省の念。後は謝りながら幼生体の事を思い出したのか可愛かったと『喜び』の念があった。

相手は竜なので言葉はそのまま伝わりきらないが卵を盗もうとしたのは誤解だということ。幼生体は可愛く会えて嬉しかった事。悪意はなかったことを噛み砕いて伝えていく。

飛竜はじっとちんちくりんを視て、数瞬考えたのち「ゆるす」気持ちを伝えてきた。一度俺と相対した時に怒りより畏怖の念を抱いて落ち着いた為かあっさりと許したようだ。その気持ちを今度はちんちくりんに気を伝って返す。

気を伝ってくる感情の感覚に驚いたのかちんちくりんはびくっとする。

伝わってくる気持が理解が出来たのか下げていた頭を上げた。

「本当にごめんなさい!その、、、許してくれてありがとう」

真っ直ぐに目を見ながら言った。

「ぎゃう!」

一声鳴いた飛竜に対してもう帰るように伝えた。もう少し俺といたかったようだけど「またな」と伝えて帰らせた。

手を通してまだ気持ちを伝えようとしていたちんちくりんが名残惜しそうに飛竜を見送っている。

許されてからはちんちくりんと飛竜を繋いでいた『以心伝心』を切った。

ちんちくりんはずっと飛竜への幼生体への熱い気持ちを伝えようとしていた。可愛かった!もう一度会いたい!撫でたい!抱きしめたい!ペロペロしたい!と欲望がダダ漏れだった。今度は幼生体が狙われていると話がこじれても困るので早々に帰ってもらった。

時間があって、ちんちくりんもいなかったら少し背中に乗ってみたかった。まあまた今度暇があったら会いに行ってみよう。こっそり竜騎士ごっことか胸が熱くなる。今度は友人のウーロウと遊びに行ってみよう。


飛竜が見えなくなってしょんぼりしていたちんちくりんの手を離す。

まだ手を握ったままだった事実に今頃気づいたのかびくっとしていた。こいつはびくびくしてばかりだな、、、。まあ真っ直ぐにちゃんと謝ることが出来たこいつをもう悪くは思っていないけど。

、、、しかし、魔術師はみんなこんなんなのだろうか?

はじめは手が冷たいのは川に入った為と恐怖心で冷えてたんだろうと思っていた。『以心伝心』してる時に手を繋いで少しは温めたと思うし、多少緊張はしていたが、あの時はもう恐怖心はなかったと思う。

気を飛竜とちんちくりんに循環させたから多少わかるが心臓の鼓動がひどく小さい。

生きてるのが不思議なくらいに。体中に廻っていたあの不思議なのが魔力だろうか?魔力は魔術の素となる力だと言われているもの、、、だったかな。魔力のおかげであれだけ鼓動が小さくともなんとかなるのだろうか?

あれが魔力だとするならあの『血』に宿る力の奔流はなんだろうか?禍々しい感じもしたがそれよりも高潔さを感じた。山中に住むおかげで交友関係は狭い。魔術師はみんなこんなものなのかもしれない。飛竜に追われている気配を探った時も変な気配だったのもこの所為だろう。あの時、人のような気もするが人ではないと思った。だから好奇心が刺激された。


色々考えながら川に向かって歩いて行く。目的のものを見つけて拾い上げる。それを持ってちんちくりんの傍に戻っていく。俺が手に持ったものを見てちんちくりんは顔を強張らせた。


「・・・?ほら?」

緊張する意味が分からんが拾ってきたちんちくりんの分厚い眼鏡を返した。


深く被った帽子の陰から覗く顔立ちはものすごく整っていた。

銀髪に色白の肌。整った目鼻立ち。ちょっと鋭い犬歯。特に目を引くのは綺麗な眼だ。変わった、、、綺麗な紅色をした瞳だった。



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