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くーろん  作者: 虹ぱぱ
一章:旅立ち
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2話:ロンと山道

「うん。上々だねー。欲を言えば脚も縛ってその場から動かずに倒すのが理想だったけどねー」


言いながら狸親父がぱちんと指を鳴らした。ビクともしなかった縄がスルリと解けた


「まあまだ遠くの気脈の操作は無理かな?それにそうゆう楽を覚えるのはもう少し経験を積んでからの方がいいかもしれないヨ」


「で、狸親父。俺はクソ重たそうなこれを担いで帰ればいいのか?」


熊を指しながら聞いた


「うん。あっちの方に向かって山を4つ位越えたら家に着くヨ。

しかしロンは飛虎と小夜みたいな脳筋コンビから生まれたとは思えないくらい素直で賢いねー。

熊倒す時も観察して色々試して考えてたみたいだし。

・・・目つきと口調はそっくりなんだけどねー」


頭は良くならないと馬鹿には厳しいドSがいたからな、、、。


「んで、ご褒美ってなんだよ?飯か?それとも本か?」


本は貴重品だ。物語や知識や経験といったものが文字で詰め込まれている。

俺は本が好きだった。イケナイ聖書とかもこっそり持ってる。


「んー。帰ったら教えてあげるヨ。まあ楽しみにしててヨ。

晩御飯までには帰っておいでヨ?」


まあ縄が解けて気が練れる状態なら問題はないだろう


「わかった」


「じゃあ先にリンちゃんに熊討伐報告して報酬にその脚ぺろぺろさせて下さいって言ってくるヨ!」


変態狸親父は文字通り風のように走り去って行った



気を練り巡らせて自身状態を確かめておく────問題はない

しかし普段当たり前のように感じてる気を練れないという状態は中々気持が悪かった。

ただ気が練れない状態に陥る可能性も今後あるかもしれない。

その時に戦えなくなるような事態を避けるためにも気を使わない状態も慣れておくべきだろう。

出来ること、出来ないことの把握は大事だと思った。


「うしっ!俺も帰るか」


修行と称して狸親父と母さんの突飛な行動には慣れている。

だから切替もすぐに出来た。

とりあえず熊を背中から担いでみる


・・・・でかい・・・・


このまま進むと引きずってしまうだろう

折角綺麗に仕留めたのにそれでは毛皮を駄目にするし、俺の美学に反する


担いだまま跳躍し木々に飛び乗っていく。

引きずったりぶつけたりしないように気にしながら狸親父の示した方角に向かって進んで行く。



山4つ分。前に進みながら考える。重い熊を担いで進むには遠い道のりだと考えていたわけではない。

俺自身それなりに強くなってきたと思っていた。実際、気に頼らず熊を倒すことも出来た。

仙術や相手の気を使わなくても地形や罠で十分倒せることもできただろう。

それなりに気配に対しても敏感になったつもりだった。

けど狸親父は寝ている俺に気取られる事なく、担いで山4つを越えた事になる。

それを脅威に感じていた。


「いつになったら届くのか、、、、」


そんな事を考えて少し気落ちしながら一つ目の山を越えて更に先へ進んでいく。

進む先の情報を五感と気で探りながら確認する。


後少し進めば川がありそうだ


陽の高さからおおよその時間を確認する

そろそろ昼過ぎか、、、、


「川で魚でも獲って昼飯にするか」


飯の事を考えて少し気持ちを上げながら川までの道のりを急ぎ足で進んだ


川に着き早速、3匹の魚を捕獲した。

時間があれば釣竿で釣りを楽しんだが晩御飯までに帰らなければいけないことを考えてさっさと素手で捕獲した。

川辺で薪を集めて火を起こす。

獲ってきた魚を下処理し、木の棒で突き刺し、火の傍で炙る。




狸親父は仙人で母さんは侍とかいうものらしい。

12歳に至るまでに二人の師の元で山中奥深くに住んで武術や仙術の修行と勉学に勤しんでいる。

仙人修行の中には気功がある。体内や自然の中にある気と呼ばれるエネルギーを使って様々な事象を起こすことができる。

その内の一つ、身体能力の強化を使用して強大な熊を担いで木々を飛んでここまで来た。

自然の気が多い山中のような場所でなら集気法で気の循環もしやすくスタミナも確保しやすい。

気功を使えば素手で岩を破壊する事も、気で足場があると仮定して空を駆ける事も可能だ。

熊を倒したように気脈を乱して心臓を止めることも可能だ。

呼吸法と気功の操作で不老不死のまねごとも可能らしい。仙術は奥が深く、万能に近い。

決して万能ではない。

呼吸法と気の操作で不老不死に近い事は出来ても呼吸を乱される事態になれば使えない。

治癒術も怪我や病気を自然治癒出来るものであれば治癒が可能だが、不治の病や怪我は治せない。

事象の改変ではない。事象の『強化』、『加速』、『減速』、『変化』が仙術の基本と狸親父は言っていた。


例えば治癒術は自然治癒力を強化、加速する。自然治癒という本来ある事象を『強化』、『加速』している。


例えば火を出すという仙術も己の熱であったり、摩擦熱等を『強化』させている。


ゆえに仙術には限界があると狸親父は言っていた。

治癒出来ない事象は治癒出来なく、熱がなければ火を出せない。


この国には魔術が存在する。事象の改変特化が魔術。

大僧正クラスの治癒魔術は不治と言われる病も癒し、何もない所から火を生み出す。


それが仙術との違いらしい。過程や制約、万能さで一概に仙術と魔術どっちがいいかはわからないけどねと狸親父は言っていたが。

仙術を極めた狸親父を見ていると仙術の方が強いと俺は思っているけれど。


閑話休題。


幼い時からの修行のおかげで病気や毒にはかからない。山中だけあっていろんな寄生虫や蟲がいるが体内に入っても気功で退治出来るので問題もない。

川魚には寄生虫がいる事が多いが生で食べても気のおかげで問題はない。

が、食べ物はおいしく頂くがモットーだ。

生物は命を食らって生きている。肉であれ、草であれ。

自然の摂理として命を食らうことへ罪悪を感じるのではなく、己が日々を生きる為の糧となった食材に感謝を持って食べろ!というのが母さんの教えだ。

おいしく食べる方がより感謝出来るというもの。


自分が一番川魚をおいしく食べる為の方法が単純に塩を振って火で焼く事だ。


両手をぱんっと合わせて「いただきます!」と挨拶をする。


よく焼いてから真ん中からかぶりつく。川魚にも鱗はある。

鱗はあるが海の魚に比べて小さく、薄い。食べても鱗とわからない程度に。

炙った魚の皮と淡白なほくほくとした白身を一緒に咀嚼する。

香ばしい皮と淡白だが脂ののった白身、振った塩気が合わせって「うまい」と言わせる。


しばらく食事を楽しんで後片付けを行った。

終わったら次は出発の為の準備を行っていく。

警戒の為に周囲を巡らせていた気を念のため広域に広げる。

広域のある程度の情報を得る。

こんな山奥に人がいることはまず滅多にないが場合によっては冒険者や狩人が血迷って入ってくることがある。狸親父の調べではこのあたりは霊山で巨大な「龍脈」といわれるが自然の気の通り道が近くにあるらしい。

そうゆう所には強い竜種や魔物が住みつきやすいという。

竜種や魔物目当てに来る冒険者や狩人もゼロではない。山という地形も強い魔物も問題にならない位の冒険者達ならいいが、そうでないものは簡単に遭難して死ぬ。

死んでも土に還ってくれるならいいが人は死んだら迷いやすい。死霊や屍人といった類になりやすい。

特にこのあたりは霊山の為、死霊や屍人になりやすい。そして強い念で動く危険なものになりやすい。

そういうものを放っておくと山が荒れる。部屋が散らかっていると気になるのと一緒でなんとなく放っておくのは気持ち悪い。

だから人で遭難や襲われている者を見つけたら助けるし、もう死んでいるならきちんと供養するようにしている。

広域に広げた気での情報収集はそれが一つの目的。

あとは単純に己の安全確保の為。



ひと通り周辺を気で探索して一つだけ気になるものがあった。


川の上流でこっちに向かって追いかけっこをしながら飛んでくる気配が2つ。

追っている側は飛竜っぽい気配。昔見たのと同じような気配がする。

追われている側は、、、、、よくわからない。人、、、のような気もする。でも人ではない何か。


食事の為に飛竜が獲物を追っている、、、て所かな?

追われている側の気配がよくわからないので一体何が追われているのか気になった。

人のような気配もしたので人なら助ける。後は何なのか気になるっていう好奇心で少し待ってみることにした。


少し待ってみると木々で視認は出来ないが音が近づいてきた。


「ぃぃぃぃぃ、、、、ぁぁぁあああああ!!!」


女の子の叫び声に聞こえる!助ける必要があった時の為に少し大きめの石を拾って構えておく。


「だあぁぁぁぁあああずげてぇえええええぇぇぇぇえl!!」


声もどんどん近付いてきて視認も出来るようになった。


飛んできたのは飛竜と、、、、箒に乗った10歳くらいの女の子だった。


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