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くーろん  作者: 虹ぱぱ
一章:旅立ち
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1話:ロンと熊

「いいかい? ロン。熊は偉大なんだヨ! 食べることも出来るし、毛皮にもなる。仙丹や薬の材料にもなる。」


 グルル……


「あいつはここら一帯を縄張りに暴れまわってる暴食熊だよ。」


 でかい。いままで見た熊の中でも桁違いに大きい。

眼鏡の位置を直しながら眼鏡が言葉を続ける


「この前仲良くなったリンちゃんが言うんだヨ。助けて!って。森が壊れちゃうって。……女の子が言うといやらしいヨね?壊れちゃうって。」


 そんな事より腕の縄を解け!と意思を込めて殺気を送る。

 今は片時も目の前のものから視線ははずせない、、、、


「ん? リンちゃんって誰って? すごくきれいな脚をしてるんだヨ! あれほどの美脚はなかなかいないヨ! 脚フェチとしては口説かれずにはいられなかったねっ!」


 狸親父の言うことだ……。きっと鹿か何かだろう……。変態狸親父めっ!

 てか、そんな事はどうでもいい!


「この縄を解けっ! 狸親父!」


 両手を縄で縛られ大熊と対峙し、睨み合いながら叫ぶ

 クソ! なんだこの縄! 普通の縄なら引きちぎる位出来るが、全く外せる気がしない!

 なにか仕掛けがあるのか気が練れない!


「ロン。君ももう12歳。ハンデ付きで熊くらい倒してみヨーヨ?」


「縄は解けよ!」


「ほんとは両足も縛りたっかたんだヨ?でも本当に小夜ちゃんは怖いねー……。それ言ったら首のあった位置に居合一閃だもんねー。あやうく首ちょんぱだヨ。 超過保護! 飛虎が言うにはあの貧乳絶壁自称美少女(笑)はドMのはずなんだけど超攻撃的! 君の出産手伝ったりと頑張ったんだけど恩を仇で返すってこのことだヨね!」


 そういう事を言いつつけしかける為か熊に石をぶつける。


 カチンときたのかまずは目の前にある獲物な俺に襲いかかる。


 右腕を振り上げ横薙ぎの一閃を靴を脱ぎつつ軽くバックステップで避ける。

 バックステップで着いた足を一転、右腕を振り切った状態の熊の顔面目がけて蹴りつける。


 顔をしかめる程度で効いていない。

 蹴りつけた勢いを使って今度は大きく距離をとる。


「ちなみもう気付いてるみたいだけど縄に細工して気を練れないヨうにしてあるヨ。気を必要とするタイプの仙術や武術は使えないヨ」


 熊は効いてはいないが反撃をくらうとは思っていなかったのか少し警戒したようだ。

 多少眩暈くらいは感じたのかもしれない。でかいだけあって経験値もそこそこにあるなのだろう。少し様子を見ている


「腕と気を縛られたままで君にできることでその熊を倒すんだヨ。ちなみに気を練れないロンじゃ一撃もらった時点でやばいからね」


 朝起きて気付いたら手と気を縛られて、強大な熊の目の前で転がっていたから少し焦ったがとりあえずまずは冷静に。自身を落ち着ける。

 己と現在の環境をみて出来ることを考える。


 先の熊の右腕の一閃を見る限り受けると死に繋がる。

 が、遅い……。遅いと感じる。

 あの狸親父や母さんに比べるべくもない。


「ちなみにその熊を倒すことが出来たらご褒美をあげよう!」


 めずらしい……。この狸がご褒美だと言ったら本当にご褒美だ。

 性格が歪んだ変態狸だが「ご褒美に新しい修行だヨ!」とか気の狂ったことは言わない。


「・・・・倒せなかったら?」


 ……にたぱぁああ……と狸は笑った


「我々の業界ではご褒美という褒美を授けヨう」


 色々つらい目にも恐怖を感じる体験もしてきたが今日が一番恐怖を感じた!目の前の熊より怖かった。

 超ドS変態クソ狸親父めっ!


 絶対に勝つ! そう決めた!



 まずは状況を把握してみる。

 蹴り一発でわかったが単純な打撃で倒すのは無理。熊の全長は3メートル超。

 気を練れない状態では体格、パワー共に圧倒的に足りない。


 次に地形。

 どこかの山の中。横には川が流れている。音を聞く限り滝につながっているみたいだ。

 このまま滝の上まで誘導して蹴り落としてやれば勝てるんだろうがきっとお仕置きされるだろう。


 あの狸親父は熊は「食べることも出来るし、毛皮にもなる。仙丹や薬の材料にもなる。」と言った。

 なら毛皮や材料になる部分を駄目にする可能性のある行動もとれない。


 あと近くにあるものは木と岩。他にも毒草や毒蛇を探して使用することも出来るだろうけど食べる事が出来なくなる可能性があるからそれも不可だろう。


 地形や罠にかけて倒す手はいくつも考えつく。

 手と気が使えないといういつも通りの自分とは違った為に焦った部分もあったが

 熊自身に脅威を感じてはいない。


 少なくとも熊の動きは遅いと感じた。狸親父と母さんの所為でというべきかおかげと言うべきか……。


 気の練れない状態では身体能力は熊が圧倒的に上なので油断すれば危ういのは確かだが。


 その油断が出来ない相手の攻撃を受けて流す、そこから接近戦で倒すと決めた。

 そもそも今の状態の自分では熊を綺麗に倒すにはそれ以外の戦法がない。


 狸親父なら指で一突きで熊を殺す。「ひでぶっ」って言いながら死んだ盗賊を見たことがある。


 母さんなら綺麗に倒すっていう狸親父が定めた裏ルールを理解しない。腕が使えないなら多分蹴り殺すだろう。もしくは頭突きか。掌が使えるなら頭を握りつぶすかもしれない。物理的に。


 熊を蹴った時、確認したことが二つある。

 一つは単純な打撃で倒すのは無理だということ。

 もう一つは相手の気を利用できるかということ。


 自身の気は練れない。だけど相手の気の流れは視えている。『見』は行える。普段から視えていてそこにあるものが視えるのは道理だ。なら相手の気を操作できるかを試してみた。


 結論は可。あの一瞬で多少気を散らせるのがわかった。


 なら相手の気をを利用する。熊自身の気を熊自身の急所に目がけて打ち込む。

 ただ難点は気を操作する為に生身を相手にあてる必要がある。

 このあたりは俺の未熟が原因だ。離れた場所にある気の操作がまだまったく掴めない。

 その為に接近戦である必要がある。


 急所は正中線上に多く存在する。要は眉間から股間にかけての間だ。

眉間、喉、鳩尾、股間等だ。


 筋肉のつきにくい場所は急所になり易い。


 頭や頸椎、脊椎等も一撃で倒すことが出来る急所になり得るが筋肉のつきにくい部分を狙うよりも硬度がある分、たやすくない。


 たやすくはないが熊を綺麗な状態で楽に倒すには────


 と、思考をしながら呼気を整え、熊に向かって熊の反応出来る比較的ゆっくりで肩から突進を仕掛けた。


 熊は身構え迎え撃つ為に再度右腕を振り上げる。


 振り上げたタイミングを見計らって突進の速度を加速させる。肩から熊のわきに突進し肩で熊の攻撃を殺す。突進した勢いで肩を視点に息を思いっきり息を吸い込みながら熊に飛び乗った。


 そのまま熊の片方の耳を手でふさぐ。

 もう片方の耳に口を押しつけてふさぐ。


「おおおおおおぉぉぉっ!!!!」


 腹から声を出し大気を震わせる大音声で熊の硬度のある頭の中を直接内側から揺さぶる。


 並みの大音声ではない。気は使えないが大声を出す術を合わせた大音声で熊の意識を刈り取る。


 気を失い倒れ伏した熊の頸椎に掌を押しあて気を操作し心臓の動きを止めた。


 息の根を止めた事を確認して熊から降りて合掌をした。

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