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魂
手離すために一生懸命だったすべてを
持っている人がいる
純情なんて役に立たないし踏みにじられるだけだと
それで捨てようとしたすべてを
持っている人がいる
これは特別な力のある人でないとできない
そんな力なんてない
だけどそれで本当にいいのか
その時はよくてもそれで済むのか
いいと信じ切っていたけれど
どうもそうではない気がする
それでは済まない
解決するわけじゃない
自分を殺すのは自分を助ける一番簡単な方法
しかしそれは悪魔に魂を売り渡すことにもなる
取り残されたこの魂は
瞳を真っ黒に染められた魂よりも
売り渡すことを知らない魂によって
癒され
元気と活力が与えられる
結局自分を殺すくらいじゃ
売ったものも一つの記憶として
鮮やかに蘇ってくるのであり
不快に擦り切れた記憶をなにで
置き換えていけばいいというのか
神秘的な慰めがあれば
なにもかもが笑って話せる話
それでも汚れのない話
犠牲は仕方のなかった話
人が人と出会うことで人生の意味があっさりと変わる
これを人は
「神の御加護」
「奇跡」
と呼ぶ