表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷口と、春  作者: 罰歌
4/5

桜色の告白

 「大好きでした」


 今までの人生で、初めての恋。それと告白。



 風が強く吹いて、私たちの上から桜の花びらがいくつも舞った。


 視界がピンク色でまばらになる。

 その先では少し困ったような顔をした彼。


 ああ。駄目なんだろうな。

 ふと、わかりたくなんか無いのに、わかってしまった。


 彼はどう言ったらいいのか困ったようで、口を少し開きながらも声は発せられなかった。


 だから代わりに、微笑みながら言う。


 「なんてね、うそだよ」


 はっと開かれた彼の眼。少し開いていた口を、きゅっと結ぶ。

 そんな反応だけで、彼が何を言いたいのかはっきりわかってしまう。


 わかりやすすぎるよ。

 誰より優しい彼はきっと言えないのだろう。

 そんなんだから私みたいなのが恋しちゃうんだ。

 もっと、はっきり断ることを覚えなよ。


 なんて思った。



 「ひきとめちゃって、ごめんね」

 ぺこりと頭を下げる。


 ひらりと頭の上に乗る軽さ。

 これが彼の手で、撫でてくれたらなぁなんて妄想。


 叶わないんだろうけど、さ。

 そう思ったら、なんだか視界がぼやけてきてしまった。


 最低。こんなの、泣き落としみたいだ。

 絶対に、涙を見せないと誓っていた私は、頭を上げようとはしなかった。


 「おれは……橘の事を、友達としか見た事が無い。 だから、その」


 「うん、大丈夫。 わかってた」


 声が少し震えてしまう。あわてて、何でもない風に、


 「というか、うそだって言った、じゃん」


 なんて明るく言った。




 その時だった。


 「おーい! はやくしろよー!」


 彼の友達の呼ぶ声が聞こえた。


 「あー、今いく」


 友達に返事をした彼が、私の方を見たのがわかった。

 口を開くことも。

 声を発そうとするのも、わかった。



 「ごめん、それじゃあ行くよ」



 彼の高くも低くもない、ちょうどいい声。

 それが私の頭に一言掛けると、呼ばれた方へ向かったのがわかった。



 なにもかもわかっていたのにね。


 馬鹿な私の馬鹿みたいな片思いの初恋いは、最初からわかりきっていたように、終わりを迎えた。




 頭を上げれば彼はいない。


 私と、一本の桜の木だけ。


 涙が、こぼれる。



 桜色に染まった告白が、花びらと散った。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ