適当1
タイトル変えるべきですかね?
新たなる旅路へと至り皆々が期待に胸を膨らませる季節。
「まあもし本当に男の胸が膨らんだら恐ろしいが」
……あと、膨らみたくても膨らめない哀れな奴も居るけどな。
などと知人の顔を思い浮かべた瞬間怖気が走った。立ち止まり、すかさず辺りを見渡す。
が、周囲には顔見知り特にこの瞬間に遭遇しては不味いモノの姿は確認できなかった。
安心からため息をこぼし再び歩みを始めようとした刹那。
「何頭おかしい動きしてんのよ?」
「うをぅっ?! ぐへぇ!! ……っ」
驚き飛び退ろうとした直後、後ろから襟首を掴まれ強制的に動きを止められた。その反動で結構な勢いで首が絞まる。ヤバイ。
若干意識が飛びかけたがそんな余裕は無い。この声の主こそが遭遇したら不味……。
俺は油が切れたブリキのオモチャの如く後ろを振り向くと、そこには思ったとおり遭遇してはならないはずのモノが居た。
その人物は俺の行動をみて何かを悟ったのかボソッとつぶやいた。
「ああ、やっぱり? 私の事を考えてた訳だ? ……悪い意味で」
やばい、この口調、このトーン、俺の命の危険が危ない!!
必死で襟首を掴んだ手を外そうするが、万力で押さえられているかのごとくビクともしない。気を失いそうになるほど首が絞まりはしないが、逃げ出せる気も全くしない。
その気の利かせ方は、優しさと言うよりはむしろ楽に終わらせるという気はさらさら無いと言っているに等しかった。
「どうせ「期待に胸が膨らむとか言うけど私は一向に膨らみそうにない」とか思いやがったんでしょう?」
「良くわかったな。……あ」
雰囲気の割にさらりと言われたので、つい反射で正直に答えてしまう。思いっきり失言だった。
俺は若干怯えつつ、そろりと後ろを伺う。
「うん、何か言い残す事はあるかしら?」
とても良い笑顔を張り付かせながらこちらに死刑宣告をしてきた。後ろに般若の幻影が見える。
笑っている様に見えるが目は笑ってないし、そこかしこに青筋が浮かんでとても残念な絵面だ。……あ、思ってる事が見透かされたっぽくて惨劇レベルが上がった。
もう、開き直って火に油を注ぐ以外に俺に残された道は無い。もしかした俺はMなのだろうか。
「っはは、例え俺が死んだとしても第2第3の俺ぐばぁ!!」
言い残す前に殺しに掛かるな……と思いながら流れる様に延髄に向かって放たれた蹴りを避けるまもなく喰らわされ、俺は無様に昏倒させられたのだった。