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6 【騎士団隊長会議】

2345隊長集合

 城内騎士団棟の一角にある会議室にて、全てを遮断する厳重な結界の張られた中、本年度の隊割り会議が執り行われていた。


 出席者は、総括である騎士団長ヨハン。

 参謀司令の第二騎士隊隊長クロード。

 隠密部隊の三番隊隊長エリック。

 救護部隊の四番隊隊長フランツ。

 魔物討伐部隊の五番隊隊長ジョージの五名である。



「身体強化に完全防壁、それから超回復を無意識下で発動していました」

 自ら手合わせをしたフランツが淡々と告げると、それを見学していたジョージ、クロードの両隊長が補足する。


「なるほど。そこにエリック仕込みの剣術とゲオルクの遺伝子が加わるわけか。そりゃ、あぁなるわ」

「でも年齢的にも成人前だし、全てが未完成なんだろうね」


 そこで一呼吸を置き、エリックが爽やかに返答するが、眉間に皺を寄せたフランツと対立する。


「そのことはご心配なく。自分の配下に入れ、成人までに完成させますので」

「はっ、ふざけないでください。あれは我が四番隊かセルゲイの七番隊案件でしょう」

「ふざけてるのはお前だよフランツ。あれだとか案件だとか、スイートアンジェを物扱いするってお前何様?」

「大聖女レベルの聖属性魔力を無意識で発動し続けているというのに、コントロールが全くできていないのですよ? エリック貴方、剣舞ばかりでそれを教えなかったのですか?」


 過熱する討論を遮るように、クロードが問う。

 ところがその質問に答えたのは、エリックではなくヨハンだった。


「ねぇエリック、君は事の重要さを解っていながら、隠し続けようと目論んだの?」

「いやクロードよ、それはオレだ。あの力の隠蔽を企んだのは」

「団長が?」


 クロードは後の言葉を見失い、代わりにジョージがエリック問う。


「待て待て。それよりもこのことはゲオルクもアヴァも知っているのか?」

「両親は知りません。アンジェは三年前に突然目覚めたようでした。団長に指摘されたあの日まで、自分もアンジェの力に気がついていませんでした」


 覚悟を決めたように一息吐き出し、エリックが続ける。


「気づいてからは自分なりに観察を繰り返しました。発動条件は音楽です」

「音楽?」

「はい。当初は楽器を弾いたときだけ発動するようでした。けれど今は、音楽を脳内で奏でるだけで発動しています」



「顕著なのは楽器演奏時ですが、鼻歌だったり口笛だったり、脳内から音が体外に飛び出すと、その音が届く範囲にも効果を齎すようです」


 更に躊躇いながらも、一つの事実を吐き出した。


「本人は…前世が異世界のピアニストだったと言いました」

「転生者? そんなバカな……」

「うーん。召喚者は彼の方がおられるが、転生者はお伽話の域だからねぇ」


 皆の意見は解るとばかりに深く頷きながら、エリックは続ける。


「だから両親も自分も、幼少期に有り勝ちな妄想の類だと思っていました。けれど……」

「チェンバロか……」

「はい……」


 先ほどの団長の言葉を繋げ合わせ、クロードがつぶやく。


「ふむ。彼女の演奏を聴いた事のある者たちが押し黙るほどの腕前。というレベルなんだね」


 そこで団長が深いため息を吐き出した後、過去の事実を告げる。


「三年前、オレが許可を出し、聖都教会のパイプオルガンを弾かせた」


 他の面々がその言葉を聞いて、一斉にハッとする。


「三年前って、まさか、あの聖都教会の奇跡ですか?」

「おい、それって教会内の入院患者が全員治っちまったっていう、あの眉唾ものの奇跡か?」


「二人がそう断言しても、俺はまだ信じられねーよ。そんな奇跡があってたまるか」

「けれどそれが事実だと仮定すると…あの幼子を教会どころか他国も狙う」

「はああああああ。そりゃ死に物狂いで隠すわな、エリック」


 エリックの表情から何かを察したフランツが囁くと、エリックが不安な胸中を呟いた。


「その顔は、どうやらそれだけではなさそうですね」

「……自分が最も恐れているのは、アンジェがピアノを弾いたらどうなるか、です」

「では、まだ一度も?」


 エリックは、こくりと頷き肯定を告げる。


「あの日からあの手この手で止めています。板で作った模擬鍵盤を無音で叩いているだけです」

「なるほど、それで発動条件に脳内音楽が増えたのか」

「だと思われます」


 誰もが眉間に皺を寄せて言葉に詰まる中、はたと気づいたようにクロードが言った。


「彼の方が伏せっておられなければ相談に伺ったんだが…と思えばフレデリックはどうしたの?」


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