表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/57

51 愛をとりもどせ!!

 見た目がその、えっと、キメてるモヒカンのクジラです。

 視点が定まらず、涎を垂らしたモヒカンとも申しますか?

 それがオラついて蛇行しながら、群れでこちらにやってきております。


 先ほどの衝撃は、このクッソでっかクジラの一頭が、バック宙を決めたことによる衝撃波動だったようですよ。

 ヒャッハーな感じで。


 私の中のクジラさんは鮫やシャチとは違い、温和で人間に優しいイメージだったのですが、この行き場のない想いを吐き出させてください。


「なんか今、私のクジラ概念が破壊された……」

「奇遇だな、お前もか? 俺もだ。なんだあの髪型……」


「その前にさぁ、クジラに髪型があるって自体おかしいことに気づこうか」


 ルロイが私たちの傍らに立ち、冷静なツッコミを入れるから二人で問い返す。


「あ、そうじゃん!」

「じゃ、なんだあれは髭か、髭なのか?」


 顎に手をやり、珍しく戸惑う上司が自身の見解を呟く。


「私もあのような形状を初めて目にしますが、藻か何かがくっついたのでしょうか?」


 フレデリックをはじめとする団員たちが、荒海と化す水面から続々と船に戻り上がってくる。

 誰彼もがおぼれることなく済んだのは、火サスのおかげでした。フフフ。

 そんな団員たちとクジラを何度も交互に眺め、相変わらず抱き上げられたままセルゲイ隊長に問う。


「ね、セルゲイ隊長、あれ一頭を普通は何人で倒すの?」

「んー、教本には普通のケートス一頭につき百人って書いてあったなぁ」


「でもあれ普通じゃないよ?」

「うん、ちょっと普通じゃないなぁ。髪型が」


「てか、こっち三十人ちょっとで、あっち十頭はいるよね?」

「まぁ、一頭を三人くらいで頑張るしかないなぁ」


 このテキトー無責任男め!

 我が上司が常に牙を剥くのが分かったよ。


「そんなの無理に決まってんじゃん!」

「そんなこと言ったって無理でもやらなきゃだろ」

「むぅぅぅ」


「アンジェリク、私が戻るまでセルゲイの指示に従いなさい」

「え? 隊長どこいくの?」

「クロードと指令の確認をしてきます」


 私に返答をしている癖に、私を一切視ずセルゲイ隊長を見つめて上司がそう言った。

 けれどセルゲイ隊長は、上司を見返すことなく左手に魔力を集め始める。


 この二人に余裕がない。

 ただそれだけで、思うよりも状況は良くないのだと察した。

 私、空気読めるんで。フレデリックとは違うんで。


 だけれど何となく、これまでの遠征は、魔獣たちを簡単に掃討できてしまっていたから、今回も何だかんだ楽勝なのではないかと思っていた。

 いかんいかん。初心忘るべからずでしたね。


「アンジェリク、全員にシールドを張り直す。行くぞ」

「はい!」


 セルゲイ隊長と分担して、全員に新水陸両用シールドに張り替えたものの、それでは到底防御などできない。

 なんたってヒャッハーだし。


「おおおお、お任せくださいませ!!」


 ちょっと『お』は多めですが、流石は大聖女様。

 船全体を包む、強力な結界を一瞬にして張ってくださいました。

 セルゲイ隊長は、その結界をベースに更に上からバリアを補強している。


 隊長たちは有能な出来る人間的に、テキパキと戦闘態勢を整えている。

 大聖女様の護衛騎士さんたちも、協力体制でそれに付随する。


 この状況で、何やら手持無沙汰の暇人は、転生ズッコケ三人組だけだったりします。

 そして暇人たちは、会議での団長予言の通り、勝手なことを始めます。




「あ、わかった! モヒカンだし、秘孔を突けばいいんじゃん?」


 暇すぎて閃きを口にすれば、ルロイがケンシローと化す。


「お前はもう死んでいる……」


 ケートスに向けて指差しながら神谷ったアテレコに、大聖女様と交互で断末魔を叫びます。


「あたたたたたーっ!」

「ほ、わちゃーーっ!」


 そこで三人顔を見合わせ、サムズアップでオヤクソク、と。


「てか秘孔がどこにあるんだよ、あのデカさのさぁ!」

「そんなんステータスオープン検索すればいいじゃん」

「ググレカスですわぁ!」


「っあ……」


 うっかり忘れていたね、君だけに与えられたその素晴らしい機能をさ。

 それを上手いことツッコむ大聖女様はかっこいいよね。


「ユーはショックですわね♪」

「ルロイの鼓動早くなるね!」


 だから負けじとツッコんだけれど、なぜか私だけ怒られました。


「うるさいよアンジェ、黙って!」


 なんで私だけなんだ!

 と文句を言いたいところですが、愛を守るために明日を見失られても困る。

 だから検索を待つ間、大聖女様とコントで遊ぼうと思います。

 観客はいないけれど。


 ソフィアの手を取り、ターンを決めてから跪く。

 そしてキリリと凛々しく歌いながら、最後に手の甲へ口付けた。


「大聖女様の……微笑み忘れた顔など見たくはない……のでございます。チュ」

「まぁ騎士様! 愛~を~取り戻……してくださいませ!」


 大聖女様が、意味もなく回る。そして、腕を最大限に伸ばして舞う。

 だから負けじとキビキビキレある動きで、大聖女様の周りを旋回した。


「おまえら、ヅカるのやめろっ」


 ルロイが文句を放っておりますが、大聖女様のピルエットが止まりません。

 あ、いや、止まりました。流石ルロイ!


「わかった! 秘孔はあのモヒカンの下だ!」

「ほぉ。秘孔を隠すためにあのモヒカンが生えたのだね」

「まぁ! そういういことでしたのね! ゼハっ」


「潮吹く器官あるじゃん? あれ鼻孔なんだって!」

「まぁ! 頭頂部に鼻があるんですの? ゼハっ」

「えぇ……じゃあのモヒカン鼻毛じゃん……」


 肩を竦めて言い放てば、気づきたくなかった状態で、三人げんなり沈み込む。

 

「あれ? ということはさ、あそこに水入れて固めちゃえばいいんじゃね?」

「息ができなくなるってことですわね?」

「あ! じゃあさ、ごにょごにょ……」


 円陣を組み、三人で顔を見合わせ、サムズアップでオヤクソク、と。



◆◇◆◇◆◇◆



 色々な意味で顔面蒼白なフランツが、セルゲイに声荒く問う。


「セルゲイ? アンジェリクはどこですか?」

「ん? そこにルロイと……あれ?」

「どこにいるのですかッ!!」


 緊迫したフランツの叫び声を聞きつけ、フレデリックが鯉口を切りながら真顔で凄む。


「セルゲイ? 事と次第では貴様を斬る……」

「待てフレデリック、どこかにはいる。どこかには。さっきまでここでルロイたちと寸劇を」


 両手を上げて後退するセルゲイの首に、瞬時に影から現れたエリックが、背後からダガーを当てがい耳元で囁く。


「僕のハニーアンジェを探しているんだが、この状況からするに、お前が罪人か?」

「いやエリック、これには深い事情があってな? さっきまで確かにここで……」


 右斜め明後日な方向を見上げて、どう言い逃れようかと画策するが、その明後日へ向いた目に入ってしまった。


「あ、いたわ、白竜王の上で歌ってるなぁ、大聖女と」




「「「セルゲイ!!!」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ