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15 ハンガリー舞曲 第5番

J.Brahms 作


※注 アンジェが勝手に思い込んでいる役職が多発します。

実際の役職とは異なりますのでご了承くださいませ。


 大公邸の皆さまは、ド庶民な私にとても好意的だ。

 初めてこちらに訪れてから、早いもので半年以上経つけれど、益々皆様お優しい。


 庭師のモーリス様は、今日一番のお花を私の髪に挿してくれるし、家政婦長のリリ様は、自分の若かった頃の服だと言ってドレスを持ち寄り、私に着付けてくれる。


 そして着替えが終わると、家庭教師のナディア様に礼儀作法を学んで、上手くできたと頭を撫でてもらう。

 その後、執事のカール様が、私を抱き上げて邸宅内を超絶早歩きする。


「旦那様が、まだかまだかとお待ちかねですからね」


 という理由なのだが、一応これでも騎士団員なので走れますよ?


 ということで、リリ様の可愛いドレスを着て、モーリス様の花を髪に飾り、カール様に抱っこされて、ナディア様直伝のご挨拶だ。


「ヴォルフ様、ごきげんよう〜」


 そんな私に両手を広げ、満面の笑みで私を迎え入れてくださるヴォルフ様が大好きだ。


「アンジェ! 待っていたよ。そのオレンジイエローなドレスは、夏の陽だまりのようでアンジェにとても似合っているね」

「ありがとうございます」

「昔、娘にせがまれて、そのようなドレスを仕立てさせられたことがあったなぁ。懐かしい」

「そうなんですね! あ、でもこれもリリ様が、私くらいの頃に着ていたものなのだそうですよ」

「へぇ、リリが、ねぇ……」


 広間の隅に陣取り優雅に座るリリ様へ一瞥したのち、溜息交じりにヴォルフ様が続ける。


「アンジェは気づかぬうちに外堀を埋められるどころか固められまくって、抜け出せなくなりそうだね」

「え?」

「いや、それよりねぇアンジェ、連弾しよう! 病み上がりの私では足手まといになってしまうと思うが、一緒に弾きたいんだ」

「喜んで! 何にします?」

「今日はブラームスな気分なんだよねぇ」

「なら舞曲五番はいかがですか?」

「おお いいねぇ。最初はゆっくりでいこう!」


 そんな私達のやりとりを、カール様とリリ様がニコニコしながら見守っている。

 貴族の習慣は全く知らないけれど、今は休憩中なのかな。

 リリ様が椅子に座り、美しい所作でお茶を飲んでいた。


 大公閣下は、おいくつなのだろう。

 孫が成人してるくらいだから、還暦は超えてるよね?

 初見の車椅子に乗っていた頃は、おじいちゃんに見えたけど、今は若々しい白髪のイケオジだ。

 フレデリック隊長のお父さんと言っても、誰もが納得するだろう。


 そんなことを考えていたら、バイオリンを弾く手を止め、ヴォルフ様が言い放つ。


「カール、シンバルをここに」

「はい。旦那様」

「私が合図をしたら、気の向くままにシンバルを叩いてくれ」



 ……。

 えぇ?


 ハードル高っ!

 初見のソレはパーカッション泣かせでしょ、マエストロ!

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