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洗濯機  作者: 小林 広平
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 確かに賢いやり方ではございますが、どちらに致しましても買い戻さなければならないのでございますから、洗濯代が浮く程度の可愛いものでございました。しかしながらに、質屋さんは損失を(こうむ)っている訳でございまして、これでは商売になりません。


質屋主人:「成程ね。って、全然良くありません。臭いから売れないって毎回洗濯してから流しているんですよ!」


 と、更に怒りを(あらわ)にする御主人に、


客:「しかも、そんな小汚い布団、洗ったって誰も買いはしませんでしょう?」


 と、何故か貧乏神がしたり顔。これには火に油が注がれまして、


質屋主人:「そりゃそうです。だから、いつも苦労しているんです!」


 と、もう主人は頭から湯気が出る程にカンカンでございましたが、


客:「売れ残って安売りになった所で買い戻すんです」


 と、その場の雰囲気はそっちのけ。あっけらかんと言いたい事を述べる貧乏神に対しまして、


質屋主人:「あれま」


 こいつは一本取られたと、思わずのけぞってしまった質屋さん。


 洗濯代だけでなく、しっかりと布団代までも浮かせてしまうとは、金が無いというものは何と恐ろしい事でございましょうか。


客:「凄いでしょう?それで私はこのカラクリを洗濯機と名付けました」


 と、貧乏神は得意満面でございましたが、何かがおかしい。


質屋主人:「ちょっと待ってください」


客:「あ、質屋さんには特別に只で使用する事を許可致します」


 と、制止の声もそこそこに、貧乏神が甘い(ささや)きで耳打ちを致しますが、


質屋主人:「それは、私達が洗濯をしているだけです!」


 流石に気付いた質屋さん。仰る通りでございまして、自分達が貧乏(くじ)を引いているだけでございます。


客:「それなら、洗濯屋に出せば良いじゃございませんか」


 と、悪びれもせずに両頬を膨らませる貧乏神に向かって、


質屋主人:「それでは意味がないでしょうよ!」


 質屋主人も怒り再燃。怒号が店に(こだま)致しました。


客:「そうは仰いましても、以前、(かび)だらけの布団を持って来た時は門前払いだったじゃございませんか」


 と、貧乏神もいじけながらに文句をつけますと、


質屋主人:「それはそうでしょうよ」


 と、()(しゃ)の様な御顔の質屋さん。


客:「それが悔しくて悔しくて、三日三晩寝ないで考案して作り出したのがこのカラクリでございまして…」


 涙ながらに語る貧乏神を見て、何だか哀れみすら覚える言い訳に、いよいよ面倒臭くなってきた質屋主人。


質屋主人:「はあ、まあ良く出来ているとは思いますよ」


 今まで酷い客も大勢見てきておりましたから、怒った所で解決しない事くらいは重々承知でございます。溜息混じりに同情してでも追い払ってしまおうと、こう考えた次第でございました。


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