六 不器用な二人
「なるほど、そんなことになってたんだね……」
「まあ、そういうこと」
とりあえずどんなことでも報連相。
さっき部長と話していたことを成島さんに共有する。
今はようやく昼休み、お弁当を片手に俺のおすすめポイントまで向かっていた。
「……まあ、勿論嫌だったらそれでもいいし。
とりあえず、部長に頼まれたから一応相談してみただけだから」
「うーん、初めてだから……ちょっと話すと緊張しちゃうしちゃったりするかも」
まあ、そうだよな。
成島さんが自分の素を出せるようになる手段として同性の知り合いを作るのはありだと思ったが、別に焦ることはない。
「それじゃあ……」
「うん、何なら……今からでも良いよ?」
「おっけー、じゃあ俺から説明してお……え?
今から、部長と話すってこと?」
コクリと頷く成島さん。
……彼女の変わりたいという意思は本物らしい。
まあ部長なら大丈夫……大丈夫だよな?
とりあえず連絡だけ入れておいて再び歩き出した。
成島さんは現状緊張してる感じは……ないと思う。
「よう、お待たせ」
俺のおすすめポイント、学校裏の広いスペース。
そこにはそのスペースを活用するようにテーブルと椅子が設置されている。
俺も友達に言われて初めてあることに気づいた。
中々に良い場所だと思う。
「……よう、お待たせ」
さて、二回同じこと言ってるしそろそろ触れるか。
俺たちが部長に連絡を入れたタイミングは、玄関くらいだったはずだ。
なのに何故かもう部長は、指定の場所に先にいる。
めちゃめちゃ息が荒い、この人ダッシュできたな……。
「成島さん、この人がさっき言ってた演劇部部長。
小浜祭さんです」
「………………よろしくお願いします」
だめだ、やっぱり成島さんも緊張しているようだ。
言葉を発するまでのラグが凄い。
部長もこんな風に奇想天外な行動をとってしまうくらいには、焦ってしまっているようだ。
ここは、俺が何とかするしかない。
「それじゃ、とりあえず座って話そう」
俺の指示でテーブルを囲む。
今回の目的は二つ、二人を知り合い以上の関係にすること、それから演劇部についての話し合いを済ますこと。
二人はテーブルに座って以来、一言も発していない。
やはり、俺主導じゃないと話は進まないらしい。
「とりあえず部長、用事があるんですよね」
「あ、ああそうだ。
あの、部活とか……興味あったりします?
成島さんなら演劇部とか良いと思う……んだけどな」
凄い違和感のある言葉選びだが、何とか言い切った。
まあ実際、俺と話す時ですらほとんどの時間を真顔で過ごしている成島さんは、初対面だと中々凄みがある。
うん、よく頑張ったよ部長。
「……………………」
相変わらず長い無言の時間が流れている。
成島さんは、多分今めちゃくちゃ頭を回している。
そもそも部活に入るかどうか、何故誘われたのか。
どういう言葉選びが棘がないか……etc。
部長ももの凄くビビっている、もしかしたらこのまま返事なしで終わる可能性すら考慮しているのかもしれない。
「…………はい」
「は、はい?」
まさかの一言、長い沈黙の後のはい。
流石の部長も聞き返してしまったようだ。
え……ていうかまさか?
「はい、って演劇部に入りたいってこと?」
「……そう」
今日の成島さんの積極性には驚かされる。
部長ともすぐに会いたいって言うし、部活動勧誘もあっさりと引き受けてしまった。
一応、最終確認を入れておく。
「成島さん、本当に演劇部に入るってことで良いの?
今、勢いで言っちゃったとか勇気がなくて断れないとかそういうので後々自分の首を締めたりしない?」
「……そうだね、ちゃんと入る理由くらいは言わないと。
えと、私は……演劇が好きです。
だから、自分を変えたいっていうのと同時にこうやって好きなものに触れれる時間が増えることは幸せ……だと想像しちゃいました。
だから部長……私も仲間に入れてください」
成島さんもやっぱり同じ演劇好きだ。
こうして演劇のことが絡むと急に話せるようになる。
「……おお、おお!
よろしくな、成島!」
部長と成島さんはガッチリと握手を交わす。
こうして、演劇部には一人部員が増える運びとなった。
「……そんなわけだからさ、石金も部活入れよ」
「え、結局ですか?」
「当たり前だ、お前が入ったら一工程減るんだ。
勧誘は勧誘で続けるわ」
……多分、成島さんが入ったら良くなると思うけどな。
それこそ、俺がいらないくらいに。
まあ、部長も勧誘しすぎて引くに引けなくなっているんだろう。
「ちょっと待って……石金くん入ってないの?」
「ああ、うん……俺は見る専だから」
そういえば、成島さんにはそのことを言っていなかった。それで部長呼びをしてたら確かに勘違いするかも。
「えー!?
う、嘘……石金くんが演劇部なんてこんなにピッタリな部活に入ってないなんて思ってなくて」
「いや、分かるぞ……こいつ頑固なんだ。
でも安心しろ、絶対にこいつも船に乗せるから」
「はい!私にも協力させてください!」
あれ、気づいたら二人は普通に話せるようになってる。
何だかんだ相性がいいのかもしれない。
「そういえば……部長は好きな作品とかありますか!?」
「あ、成島さん待って……」
「す、好きな……え〜ありすぎて困っちゃうな……」
そうだ、部長には致命的な弱点がある。
「わ、私が好きなのは…………………………」
「部長、隠してもいずれバレますよ。
俺以上に演劇好きだって言ったじゃないですか」
「…………私、普段全く演劇見ないんだ。
あ、逆にアニメとかそういうのはよく見るぞ!」
「……そうですか」
さっきまで縮まりそうだった距離は一瞬にして離れる。
俺みたいに演劇の話とか出来ると思っていたんだろう。
「まあ、そういう話も石金が入れば出来るようになる。
頼んだぞ……」
「そうですね……あ、そういえば私タイミングとかは分かるんですけど操作とか技術に関しては未熟なのでそこら辺も教えて欲しいです」
部長は固まったまま動かない。
正直、俺も多分同じような感想を抱いている。
「成島……もしかして裏方やろうとしてるのか?」
「はい、頑張らせていただきます」
「……あのな、ちょっと、話を聞いてくれ」
馬が合うんだか合わないんだかよく分からない二人。
慌てふためく顔の部長と、よく分からず表情を変えない成島さん。
どうやら、昼休みのうちに話がまとまることはなさそうだ。
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