三十五 ヒントは意外なところに
「よし、全員大広間に集まれー!」
部長の掛け声で夜でも大広間に集う演劇部員たち。
勿論、もう寝たい人や部屋でゆっくりしたい人……とにかく全員が集まっているわけではないけど、それでも遊ぶには充分な人数が集まっている。
「……お前ら、貸し切り状態と言ってくれてはいるがそれはど深夜まで騒いで良いってことじゃないからな……。
日が変わる前には、ちゃんと布団に入れよ!」
先生はそう言うと、自分も部屋に戻っていく。
一応注意はしたが、ある程度俺たちのことを信用してくれているらしい。
そういえば授業を半分すっぽかしたこともあったりしたが、よくここまで信頼を取り戻せたなぁ。
「部長、何持ってきたんですか?」
「ふっふっふ、その言葉を待っていた」
あえて……というか大体その内容はよく分かっていたため触れることはしなかったが、ご飯の後すぐに部屋に戻った部長の背中にはリュックが背負われている。
当たり前のように、その中からはカードやボードゲームがゴロゴロと出てくる。
……小学生みたいな荷物だ。
「すっげー!
俺、これとこれやりたい!」
「おい拓馬……それは初心者だそ……。
私のおすすめはこれだろ?……それからこれ」
「これって、最大何人でできるんですか?
私にも出来そうな簡単なやつ……」
と、周りもその荷物には興味深々のようだ。
……やっぱり俺も少しだけ興味が湧いて、その輪の中を覗いてみる。
「よし、じゃあまずは定番のやつをやるとしよう。
ボードゲーム初心者たちもいることだしな」
そう言って取り出したのは、人狼ゲーム。
流石の俺でもルールも含めてよく知っている。
成島さんの輝いた目を見る限り、本当にこの場にルールを理解していない人は一人もいないらしい。
……そう考えると、凄い知名度のゲームだなと思う。
「よし、ではまずこの演劇部の長である私がゲームマスターをやるとしよう。
今回のルールは……シンプルに村人四人、人狼一人、占い師一人でやるとしようか。
さて、お得意の演技力で見事勝利を収めてくれ」
部長らしい、非常に意地悪な言い方だ。
今回参加するのは、俺ら一年四人と二年からは高橋先輩と……それから戸部先輩がいたのだが、一夜にして姿を消してしまった。
「それじゃ、一日目……話し合い開始だ」
さあ、分かっている人も多いかもしれないが一応この人狼ゲームのルールを確認しておく。
大体のルールはプレイヤーたちの中に一人だけいる人狼という役職のプレイヤーを話し合いをしていく中で見つけ出していけば勝利となる。
逆に人狼は話し合いが終わるたびにプレイヤーを一人ずつ消していくことができる。
この人狼による行動と、話し合いでの摘発。
これにより減っていく中で人狼とそれ以外の人数が一緒になってしまったら人狼の勝利というわけだ。
自分のカードを何度も確認する。
……村人、話し合い以外では特にやることもないまさしく普通の役割、というやつだ。
これが占い師という役職であれば話し合いの前にプレイヤーの誰かが人狼なのかそれ以外なのかを判断することができる。
「じゃあ早速、俺占い師だったぜ」
最初に声を上げたのは純、このまま誰も声を挙げなければ確定で純が占い師ということになるが……。
「わ、私も占い師でした!」
遅れて声を上げた成島さん。
普通、後出しで言った人の方が怪しいが経験的にも性格的にも、まだ判断がつかないところである。
……ただ、少なくとも占い師は一人だけ。
つまり、このどちらかが嘘をついている……つまりは人狼であるという可能性が高いだろう。
「じゃあ、占いの結果聞こうぜ」
「じゃあまず俺から……戸部先輩は白だった。
二年生が二人だけだったから、繋がり的に占ってみることで得られるものも多いと思ったんだが……。
まさか、成島に一日目から先輩を噛む度胸があるとは」
「私は、石金くんを選んだけど人狼じゃなかったよ。
選んだ理由は、部長がいないなら多分石金くんが仕切ることになると思ってたから……味方につけられたら安心かなって思って」
まあ、シンプルなルールだけあって結局特定は難しそうだ。
言い分だったり、挙動だったり……そういうのから判断してみるしかない。
「とりあえず、占い師の二人しか選ぶ以外の選択肢はないから……。
純、お前が本物の占い師か?」
まるでメンタリストのようにじっくりと順のことを見つめる拓馬。
対する純も、しっかりと目を合わせる。
そこで、タイマーの音が鳴り響いた。
結果、指を最も……というか四票全部を集めて脱落することになったのは、成島さんの方だった。
難しかったとはいえ、純が最初に名乗りを上げたことにはやっぱり信頼が伴うし、主張も理にかなっているように感じだ。
「それじゃ、どちらにせよここで決着がつくから人狼の発表……つまり、勝敗を発表する。
人狼は…………純、よって人狼側の勝利だ!」
「よっしゃぁ!」
純がガッツポーズを見せる。
……完全にしてやられたな。
「ごめーん、私の力不足で……」
「おい純、前やった時はそんな感じじゃなかっただろ!」
「まさか演劇やってる恩恵がここで出るとはな……」
わいわい感想戦が始まっていく。
にしても、人狼ゲーム……こうしてやってみると非常に良く出来ている、そんな風に思う。
構造は概ねシンプルで、そのおかげで非常に認知も高い。
やり方に飽きたり、不平等性を感じたならば役職を追加したり新たなルールを追加して難易度を上げても良い。
親しまれるのも良くわかるゲーム性だ。
……ちょっと待て、これって。
頭がもの凄く回る、こんな感覚はいつぶりだろうか。
「部長、ちょっと部屋戻ります」
「?……大丈夫か、石金」
「…………すいません、ちょっと明日の練習参加できないと思います」
「は、おい……ってお前まさか!」
全員の注目を集める中、それでも宣言する。
「面白いもん、作ってきます」
「……!
石金くん、もし必要なものとかあったらメッセージ私に送って!ご飯とか、用意できるものはするから!」
そんな成島さんの言葉を最後、俺は部屋に戻った。
結果、やっぱり二日目……俺は大広間に姿を現すことはなかった。
旅館の方が気を利かせて、部屋にご飯を届けてくれたり実際に、成島さんや純たちがサポートしてくれる場面もあった。
結果、俺が大広間の皆の前に現れたのは三日目のお昼過ぎくらいだった。
「石金……もしかして、出来たのか?」
「読んでみて、下さい」
ぺらり、ぺらりと一枚ずつ捲る部長。
その読む手はどんどんと加速していく。
それを最後まで待つつもりだったが、結局耐えられなくて俺は大広間にあるソファに寝転ぶ。
「これは、面白い……」
最後に聞こえたのは、そんな声。
俺はそれを耳に入れ終えると、条件反射のように一瞬にして眠りにつくのだった。




