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捨て子のお客様

また、夜がやってきた。

種族は夢魔むまという。

お客様の夢に入り込みそこで楽しんでもらった後に、夢を食べさせてもらうという仕事をしている。

そして、今日もまた配達員につれられて

私のところへ一人の女性がやってきた。

「ここは?あなたは誰?」

「おっと、お客様そんな物騒な物はお下げください、ここは夢と魔法の世界の狭間決してあなたを傷つけたりはしませんからご安心ください」

お客様は、マグナムをしまってカウンターの席についた。

「分かってくれましたか…こちらをどうぞ

本の幹からとれるハーブティーです」

「本当に夢なのね?」

「ええ、でなきゃこんな狐の尻尾をもった

人形のマスターなんていませんよ」

夢ということを理解しているのか…じゃあマグナムを構える必要はあったのか?

お客様は、赤いハーブティーを一口飲んだ。

「うん、美味しいわね…どこかで飲んだことあったような?」

「同僚のところで飲んだんでしょうね」

カウンターに戻りつつ、お客様を観察する。

20代くらいだろうか?

身長は180センチはある。

髪はショートで、目は緑色だ。

そして、白衣を羽織っている。

研究職なのだろうか?

「おや?あなたは洞窟で生まれたのですか?」

お客様がハーブティーを飲んだことで、

辺り一体に洞窟のような景色が広がった。

「私は捨て子なの…

 ここは、私が捨てられた場所、別に

 ここで生まれた訳じゃない」

「そうなんですね…過去を見てみたいですか?」

「そうね、もう一度見たいかしら」

お客様は、辺りを見回す。

「そうそう、この端にいつもあの人が

 食料を置いてくれて助けてくれたな、

 体調も管理してくれたし…でも、あるとたんにいなくなって、蜘蛛に助けて貰ったな」

「お客様、もうすぐ過去に行けますよ、

そのためにも、ご注文をお伺いします」

彼女の胸から、光輝くレシピと材料が、

現れた。

「ワインですか…10才ぐらいから飲んでたんですか?」

「それが、水の代わりみたいな物なんだから仕方ないでしょ?

 それに今みたいに法律もないんだし」

まあ、そういう世界もあるのか。

「さて、調理に取り掛かりましょう」


「まず、少しだけワインを味見しましょう…

 中辛口のドイツワインですね、適正保存温度は10度ぐらいですので、

 洞窟の少し深いところにある宝箱にしまっておきましょう」

「なんで、あんた洞窟の中入れてんの?」

「夢魔だからです。

 次に天井に張り付いている、コウモリさんに許可を得て洞窟を掘り進めていきましょう。

そうすると、たまに光る鉱石を掘り出す事ができます。

十分手に入ったら、コウモリさんに代金を渡しましょう…

300mlか、結構高かったな」

「献血かな?」

「さて、次の工程です。

 ワインを取り出しに戻ったら、宝箱が予想通りミミックになっていました。そんなときこそ先程掘り出した鉱石の出番です。

この鉱石には、毒があるので鍵穴に詰めて食べさせてあげれば…

ありがとうミミック、安全に宝箱を開けることができます。

おや?今回はタイムミミックでしたね、タイムミミックが入った宝箱は一分で一年の時が経ちます。

狩りをするときも、一旦獲物を噛んで体力をなくしたあとに捕食するそうですよ?」

「そんなの知りたくないからね?」

「大丈夫です、夢限定の魔物なので。

 ほら、ずいぶんと長い間ここにいたみたいでもう何十年物のワインかわかりませんね」

「それ飲んでも大丈夫なの?」

「害はありませんよ、それよりほらタイムミミックの亡骸を見てください。

 この魔物は、亡骸になっても能力だけは残るんです…だからほら、

 もう消えてなくなった、そして胃の中からは先程食べさせた宝石が入っていますね」

「ちょっと?それ食べる気?」

「この宝石は一度胃に入ると毒性を失いますし、更にタイムミミックは

この宝石を消化できないので、胃の中で熟成します」

「まあ、そういうのなら食べてもいいかも」

「最後に、宝石を潮風にあてて乾燥させ、砕けば宝石のおつまみナッツの完成です。忘れ去られたワインと一緒にどうぞ」


「ありがとう…調理工程に無駄があったような気がするけど、

 カリカリしてて美味しいわね、それにこのワインの味あの人が

 置いていった物とよく似てる」

「もうすぐ、本物を飲めますよ」

お客様は頷いて、ゆっくりと眠りについた。

そうすると、大きな皿がお客様の前に現れた。

そこには、刺し身が敷き詰められ、パンが数枚のっていた。

「真ん中には…ペンダント型の機械?これは食べられませんね、

 持ち帰ってもらいましょう」

私は、刺し身やパンをちょっと食べてほかは冷蔵庫にしまった。

「おや、もう目覚めたんですか?」

「うん、たっぷり楽しんだからね」

「では、そちらの機械をお持ち帰りください」

彼女はペンダントを首にかけ、黒く薄い手袋を外し机に置いた。

「また来るわ、その手袋は預かっておいて」

お客様は、背を向けながら手を振る。

その手の甲には、クルガー家の紋章があった。

「そうか、あのお客様はあの人の妻だったのか、

 つまり、捨て子だったお客様を拾ったのは…

「パリン!」

「ああ、もう閉店時間か今日は早かったな…私も眠ろう、次の仕事のために」

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