菊池なのに……。
コロンさま主催、菊池祭り参加作品
俺の名前は、菊池 雪春。
しがない町のしがない中学生。
学生なので今日も歩いて登校する。
ねーちゃんは、高校生でチャリ通できて、羨ましい……。
教室に入ると、すでに登校しているクラスメイトからおはようのあいさつがくる。
「きくいけ、おはー」
俺の苗字はきくちだが、きくいけと呼ばれてしまう。
その一端はこいつにある。
「おう、きくぢもおはよー」
隣の席の菊地だ。
その後ろにいるヤツも挨拶してくる。
「イッケー、宿題やった?」
「やらなきゃゲームさせてもらえないから、やったよ……。そういうよしくいけは?」
喜久池に言葉を返す俺。
「おなじくだよ……。かーちゃん、宿題終わるまでスマホ奪いやがるからよぉ」
喜久池の隣にいる木口も大きく頷いている。
「お、こぐちも同じ感じかぁ」
「そらそうだろ……。宿題あるの、なぜかカーチャンネットワークで広がるんだぜ、おれらが帰る前に」
「誰がそんな恐ろしいことを……」
カーチャンネットワークでなんてあったのか。
盗聴器でも仕掛けられているのか? と辺りを見回す俺ら。
すると、委員長の貴口が近づいてきた。
「あたしがおかーさんに教えてるからじゃ無い?」
「はぁ?! たかぐち、おまっ、何余計なことしやがるんだ!!」
「おかーさんが、晩ご飯の時間考えるのに、宿題とか教えてって言うしー」
ざわざわと『きくち』たちが騒ぐ。
チャイムがなって、担任の鞠智先生が入ってきた。
ちなみに、呼ばれ方はまりちゃん。
まりちゃんは52歳で男である。
「転校生を紹介するぞー」
そう言って黒板にカツカツ名前を書いていくまりちゃん。
着
来
知
由
太
「きくちゆうたです、よろしくお願いします!」
「よろしくー! 俺、菊池雪春!」
「あたし、貴口菜月!」
「おれ、喜久池孝雄」
「ぼく、木口大五郎」
「オレ、菊地蓮」
「私、希口サナ」
「俺、木区治康治」
・
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クラス中のきくちが自己紹介した。転校生ドン引きしている。
「んじゃ、今日から君は着来知だな」
まりちゃんが呼び名を決める。
「え、な、きくち、じゃなくて?? ゆうたでもなくて??」
「「「よろしくな、ちゃくちー!」」」
今日も誰ひとり、このクラスのきくちは、きくちと呼ばれない。
初のきくちは誰の手に……!