表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
冒険者編
42/43

帰還

 「え?え?みんなどうしたんだ?学者センセ?大丈夫か?」


 アイオがラリマーの尻尾に抱かれているために、皆を乗せて飛行するラリマーだけがまだ状況がわからず困惑した声をあげる。


 「…ひとまず、地上に行きましょう」


 キイトが困惑するラリマーにひとまずの指示を出す。確かに海の上では何もしようがない。



♢♦︎♢♦︎♢



 海の洞窟から陸地はこんなに遠かったかと思うくらい、地上までの道が遠く感じた。

 ラリマーは流石運び屋といった安定感でみんなを背中から降ろすと、恐る恐るといった様子で尻尾を手元に振って、神官をその腕で抱き留める。


 「っ?!」


 干からびた神官を初めて見たラリマーが息を呑む。その大きな瞳が次第に涙で覆われて、溢れた涙がぽたりぽたりと地面に染みを作った。


 「そんな…が、学者センセ、なんで…」


 そう、ついさっき突然、だ。黄泉ではいつもと変わらない様子だった。いつもと変わらず微笑んでいて、精霊王を無事に通すと魔法も使っていた。


 「…こいつの使った魔法で、生命力が一気に失われた」


 生命力が見えるというリュヌが口を開く。


 「…すまない、神官さん。私を通すために…」


 小さな精霊王が哀しげにアイオを見つめる。さっき神官が精霊王を黄泉から出すために使った魔法がどんなものかは正直わからないが、どうやら単なるシールドとかとは違う種類のものだったようだ。それこそ、自身の生命力を代償とするような。


 「そんな…そんな…」


 ラリマーの泣き声だけが響く。ラリマーの涙が神官にもかかるが、残念ながら物語のようにそれで神官が復活したりは、しない。


 「…うっ、うっ、学者…センセ…」


 ラリマーの嗚咽が響く中、キイトのすぐそばに蔦が伸びてきて、そこにできた蕾からリーフィが現れた。


 「リーフィ様、神官さんが…」

 「…」


 キイトの声に頷くリーフィ。地面に手を添えると、そこからしゅるしゅると芽が出て植物が育つ。見たところ薬草のようだ。ただ、普段森で見ていたものよりも、葉が大きく生命力に満ちている気がする。


 「これを」


 リーフィに手渡されたその薬草を触媒に、今度はキイトが回復魔法を唱える。こいつ癒しの魔法の使い手だったのか。


 「…残念ながら僕は神官さんのように癒しが使えるわけではないのですよ、狩人さん。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()魔法を使えるだけで」


 俺の視線に気づいたかのように説明をしながら光だした薬草を神官に掲げる。回復魔法のような回復魔法じゃない魔法?なんのこっちゃ。


 「キイト、水魔法得意。薬草の力は私高める。樹の魔族(ドライアド)だから」


 よくわからんが、とりあえずさっきのは水魔法だったらしい。


 「…く」


 キイトが更に魔法の出力を上げたようで、魔力制御の負担が増して呻く。よく見ると薬草から細かな水滴が神官に降り注いでいる。薬草の抽出のようなことを魔法でこなしているのかもしれない。確かにこのやり方なら飲むことができない神官にも薬草を使うことができる。


 「…はぁ、はぁ…」


 薬草がその力を失うように茶色くなるまで魔法を使い続けたキイトが肩で息をしながら神官に掲げていた腕を下ろす。


 「…どう、でしょうか…?はぁ」


 神官の様子にみんなの視線が集まる。

 

 「…」


 神官は相変わらず干からびたまま、その目を開けることはない。そんな様子を見つめて、小さい精霊王が再度謝罪を口にする。


 「…すまない。今の私の力では、この者の生命力の器が()()()()()()()するのが精一杯で…生命力を回復させることができないのだ…」


 悔しさを感じさせる口調。慈愛の心を持つ精霊王としては、目の前の、しかも自分を助けるために倒れたアイオをなんとしても救いたいのだろう。


 「…」


 先ほどまで流れ落ちる涙を拭う気力もないように神官を抱きしめていたラリマーが、何かに反応したようにぼんやりとその顔を上げてこちらを向く。焦点のあっていない目がだんだん意思を感じさせるものになってきた。


 「…学者センセの生命の器は、消えてない。生命力が、足りないだけ…」


 ぶつぶつと口の中で呟く。

 と、突然何かに気づいたようにリュヌを見据えた。


 「な、なぁ、血の魔族(バンパイア)!あんた生命力()()()んだよな?それなら、それをいじれたりしないか?!」

 「…いじる、とは?」

 「文字通りだ。学者センセの生命力の器は、精霊王様が維持してくれてる。あとは、そこに生命力を足せたら、学者センセは戻ってくるんだよな?」

 「それはそうかもしれん。だが、血の魔族(バンパイア)とて何もないところから生命力を生み出す術など持ち合わせていない」


 リュヌが怪訝そうに首を振る。そりゃそうだ、生命力を魔力から生み出すことで足して回復するのは癒しの魔法だが、それだってこんな、干からびたような状態を癒せるわけではないだろう。


 「違う、生み出すんじゃない、()()んだ!」

 「自然界から少しずつ分けてもらうってことか?そんなんではとても足りないと思う-」


 リュヌの言葉の途中で、ラリマーは首を振ってから訂正した。


 「生命力なら、()()にたくさんある。アタシの寿命、生命力にして使ってくれ」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ