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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
冒険者編
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犠牲

話の大筋は決まっていたのですが、細かいセリフとかどうしようか悩んでいたら遅くなってしまいました。黄泉で魂の救済のために力を失った精霊王は無事に地上に戻れるのでしょうか?

 ユウがゆっくりと目を閉じていくのと同時に、黄泉の入り口となる魔法陣が淡く光り出した。


 「…ありがとう。精霊の加護を受ける人たち、黄泉の魔力、合わない。()()()()、ちっちゃくなっちゃった。ごめんなさい」


 ユウがそう言いながら、精霊王の周りに漂っていた黒っぽいものを自身の方に呼び寄せる。

 周りがぽっかり空いた精霊王はしばらくぼんやりと自分の手を眺めていたが、なにかに反応するかのように黄泉の入り口に顔を向けた。入り口となる魔法陣がぽっかりと穴のように開いて、外の空が見える。


 「おーさま!」


 穴の縁には小さな精霊たちがおーさま、と口々に呼びながら押し寄せている。精霊の魔力と黄泉の魔力は合わないとのことで、精霊たちは外で待っているようだった。

 小さな精霊王が呼びかけに反応して入口の方にふわりと進む。もう、王を待ちわびる精霊たちとは手を伸ばせば届く距離だ。


 「…」


 だが、どうしたわけか小さな精霊王はその場で立ち止まって外に出ようとしない。少し哀しげに外にいる精霊たちを見つめている。どうしたんだ?


 「…ごめんなさい…()()()()、もう黄泉との境、通れないのかも…」


 何かに気づいたようにユウが申し訳なさそうに告げる。え、なんだって?


 「…もしかして、今の精霊王様では外界と黄泉の境界を消滅せずに通るには霊力が足りないのですか?」


 さっきユウが言ってた黄泉の魔力が()()()()というのは、黄泉に長くいると弱るということかと思ったが、それだけではなかったのか。


 精霊王がアイオの言葉を肯定するかのようにこちらを向く。そしてなにか思ったように、こちらに近づくとシオンの葉を模したペンダントに触れるた。ふにゃっと笑ったその瞳は今までの深い空色から、少し明るい、空色に変わっていた。


 「会いに来てくれて、ありがとう、シオン。私たちの…」


 最後の方は独り言だったかのように小さな声でよく聞こえなかった。


 「貴方たちも、ありがとう。ここまできてもらっておいて申し訳ないが、私はここから貴方たちの幸せを祈らせてもらうから、貴方たちは元の世界に戻ってください」


 見た目が幼くなった精霊王の口から聞くと年不相応に見える言葉。ここからって、だって精霊の魔力は黄泉の魔力と合わないって言ってたのに大丈夫なのか?


 「…いえ、精霊王様には、無事に地上にご帰還いただかなくては。僕は神官です、戦う力は確かにありませんが、守るための力はあるつもりです」


 なにか考えていた様子だった腹黒神官が柔らかい笑顔を浮かべながら精霊王に話しかけた。そういやこいつのシールド結構強度もあったしな、流石神官。


 「それでは、少し準備しますのでお時間をください。その間に皆さんは地上に向かう準備をお願いします。そこの魔法陣を精霊王様の霊力を減らすことなく通れるようにしますが、そんなに長くは持ちませんので」


 なにやら詠唱の準備を始めた神官以外のメンバーが、神官の指示通りラリマーの背中に乗る。


 「…」


 なにやら呪文を唱えてから神官がばさりといつの間に収納魔法から出したのかマントのように布を自身に巻きつけた。


 「さあ、ラリマーさん、行ってください!」

 「任せろ!」


 ばさりと翼をはためかせてラリマーが舞い上がる。神官がまだ背中になっていなかったので器用に尻尾で神官を抱えるとそのまま黄泉の出口に一直線に飛んでいく。


 「ユウ、じゃあな!」


 元気なラリマーの声を後に残して俺たちごとラリマーの身体が黄泉と外界との境界に到達する。まだその入り口が閉じる気配もない。どうやら神官の防御魔法かなにかの効果があるうちに間に合ったようだ。これで異変も元に戻るかな。


 そう、思っていたらこれまで静かだったリュヌが何かに気づいたようにラリマーの尻尾に抱かれたままの神官の方を向いた。


 「…おい、お前…」

 「…」


 布に包まれているのでわからなかったが、所々から覗く神官の皮膚が、異様に乾燥している。

 ふわりと外界からの風が吹いて、神官を包む布をズラした。


 「?!」


 誰のものだったかもわからない。あちこちで息を呑む音がした。

 みんなの視線の先にあったのは、ミイラのように干からびた神官の姿だった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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