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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
冒険者編
35/43

終わらない夜

誤字修正しました

 宵闇のような静かな、それでいて艶やかさを感じる黒髪が海風になびく。


 「…お前、空の島にいたな」

 「ふむ、我もお前に見覚えがある」


 シオンを金色の眼が見返す。緑と金色が交錯する。特に害意を感じないことを確認すると、先ほど気になったことを聞く。


 「…さっき、歪みって言ったか?ここには、やっぱりなにかあるのか?」


 水中に視線を向けて()()が水中であることを示す。


 「ある。歪みから終わらない夜の気配が漏れ出ている」

 「どうやったら、その歪みに辿り着ける?」

 「…」


 しばらく水中に視線を向けていたかと思うと、ふと陸地の方を向いた。

 

 キョキョッ キョキョキョ


 突然陸の方から鳥の声が()()()()()()。声からしてホトトギスか。よく見るとなにか黒いものが鳥に巻きついていて、それが鳥をこちらに引っ張ってきているようだ。


 ぼぉっ


 ホトトギスの声に呼応するかのように水中から赤黒い光が漏れる。光の中心は…俺たちの真下、あの怪しいと思っていたポイントだ!


 「…来るぞ、狩人」


 こいつもか。獲物がバレないよう()()って名乗っていたが、Bランク試験合格者たちにはそんな小細工は無効だったようだな。


 そんな俺の内心なんて関係ないようにゆらりと水中で()()が動くのが見えたと同時に、背筋が冷えた気がして咄嗟に魔力を練る。


 「風の膜!」

 

 ごうん、と張ったばかりの風の膜がたわむ。


 「シールド!」


 やや遅れる形でアイオが俺の膜に重なるようにして防御魔法を展開した。それと前後して俺の張った風の膜が破れた。見ると、黒みがかった火の玉がシールドにぶつかって暴れている。風の膜の相殺を受けてなおあれだけの出力があるとは…直撃していたら危なかった。

 いったい何があの火の玉を打ってきたのか。おそらくは先ほど開いたと思しき黄泉との繋がりに潜んでいた()()だろうが、水中であることもありその姿は見えない。


 「…」


 その時、それまで上空に浮かんでいた黒髪が横を通り過ぎ水中に消えた。おい、こんなに見通しが悪いのに接敵するのか?!


 「…ちっ」


 あいつが強いのはわかってる。Bランク試験でも涼しい顔してかなり余裕のある様子だった。だが、目の前でなにかあられたら流石に寝覚めが悪い。


 「シオンさんっ!」


 後ろから腹黒神官の声がする。あいつは水中戦には向かない、変についてこないといいが…。そうは思いつつも振り返って確認する余裕はなかった。


 水中に入ると赤黒い光が強まった。あちこちで乱反射しているのか、前に潜った時よりも遠くが見えにくい。それでも光の源に向かって進むと水中で舞う黒髪が見えた。

 器用に影を操り、光を放つ魔法陣の上に陣取る敵を攻撃している。()()は大蛇のような体からドラゴンのような頭が3つ生えていた。見たことのない魔物だ。いや、魔物というには知性を感じる、もしかしたらよく知られた魔族4種とはまた違った種の魔族なのかも知れない。


 きしゃぁぁぁっ!


 水中なのによく響く声で吠えたかと思うと、3つの頭のうちの1つがこちらに向かって赤黒い火の玉を吐き出した。火の玉が水に当たってじゅわっと音がする。おい、水、消火しろよ。

 それをひらりと身を捻ってかわす。かわしたが、周りの水温が上がったのがわかる。あまり長期戦になると熱湯になって戦闘どころではなくなるかも知れない。


 「…」


 不意に、陰につつかれた気がして見ると、黒髪の少年がこちらを見ていた。目があったのを確認すると、陰がするすると器用に吹き出しの形になって、中に文字が現れる。なんだそれ、器用さの無駄遣いか。


 『こいつはシーサーベラス。冥府の番犬ケルベロスを祖として創られた黄泉の魔族の眷属だ。

 水中戦はこちらに不利だ、海面に引っ張り上げるぞ』


 頷いて理解したことを伝えると、同時にそれぞれシーサーベラスの頭を攻撃してから海面に向かって泳ぎ出す。


 「ぷはっ」

 「…」


 海面に顔を出すと、いつの間にかドラゴンの姿になったラリマーとその上に乗る神官が見えた。上手く退避してたか、よかった。


 「シオン!大丈夫か?」


 こちらの姿を認めてラリマーが声をかける。尻尾をこちらに差し出し乗るように促されたがそれは首を振って断った。あまり海面から離れ過ぎてシーサーベラスが追ってこないと困る。

 それを見てなにか察したのか神官が海面から少し離れたくらいの位置にシールドを張った。足場としていい高さだ。ありがたく使わせてもらう。腹黒だが流石気が利く神官。


 「それで、こいつ、どうするんだ?えーと、血の魔族(バンパイア)

 「…リュヌだ。おい、そこのドラゴンは攻撃に参加できるか?」


 突然話を振られたラリマーが驚いたように声を上げた。


 「あぁ、ラリマー、運び屋だよ。飛行状態からなら仕掛けられる。急旋回や接敵は避けたいところだ」


 背中に乗せた神官を気にしてだろう条件を伝える。確かに激しい戦闘ではあの神官は振り落とされそうだ。


 「ふむ、十分だ」


 満足そうに金色の眼を細めると、作戦を伝える、とこちらを向いた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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