そこにあるは黄泉の入り口
「うわっ!シオン、ずぶ濡れだな!ちょっと待ってろ、確かタオルが…」
2人のところに戻るなりラリマーが俺の姿に驚いてがさごそとタオルを出して放ってきた。まぁ、確かに泳いでくる、と出かけたのにタオル持ってなかったからな。水気を絞れるだけ絞りはしたが、まだ全身濡れたままだった。
「ありがとう」
タオルを受け取って体を拭きながら、今海で見てきたことを伝える。
「…なるほど、小魚の動きから…」
「流石狩人、だなぁ。よく水中でそこまで見れるもんだ」
そんなやりとりをしていたら店員が肉串を持ってきた。目の前の網に乗せて焼き始める。泳いだからな、腹減った。
「ふふ、よだれが垂れそうですよ、シオンさん」
「アンタよく食うなぁ」
その様子を見ていた腹黒神官とラリマーが苦笑する。そういえば俺は戻ってきてから注文はしてないから…このエスパー神官が頼んだのだろうか。変なやつだが、やっぱ神官だからか、すげぇ気が効くんだよな。
♢♦︎♢♦︎♢
「じゃぁ、まずは俺がその怪しいポイントに行くから、2人はついてきてくれ」
今度はちゃんと水着を買ってきて着替えてから潜る。ラリマーも着替えていることを考えると今回はドラゴンの姿にはならないつもりのようだ。まぁ、確かにドラゴン姿だと俺たちも洞窟も踏まれそうだしな。
2人が頷いたのを確認してから海に入る。時々息継ぎがてら現在地を見ながら進んでいくと、程なく先ほど小魚が避けていたポイントにたどり着いた。振り向くと、少し遅れ気味ながらも腹黒神官もなんとかついてきているようだ。
「…はぁ、お、お待たせしました…」
うん、これは水中で姿勢維持して魔力探知とか無理そうだな。そんなに速く泳いだつもりもないのに息が上がってきてる神官を見て思う。
「シオン、森育ちの割に泳ぐの速いなぁ」
と思ったら速かったようだ。
「怪しいポイントはこの真下だ。一応見るだけで探った時は何も見つからなかった。だが、小魚が避けてる以上、なにかあるとは思う。巻き込んでる身で悪いとは思うが…気をつけてくれ」
そう、ここはもともと俺が夢に込められたメッセージを紐解くために来たのだ。夢が海辺の光景とわかって海に来るためにBランク試験を受け、そしてたどり着いた夢が示す場所に今立ち入ろうとしている。それなのに、このお人好したちはそんな俺の手助けをするために危険をおかしている。
「…ふふ、死亡フラグのようなことを言わないで欲しいですねぇ」
「そうだな、大丈夫だよ、アタシたちも死ぬ気はないし。それに、シオンの夢が示してるのが精霊王の恩寵の減少なら、それこそ放っておいたらみんな生きていけないしな、なんとかしないと」
「そうですよ、精霊王様が関係するなら、むしろ僕が巻き込んでいる側です」
にこりと笑ってココア色の瞳がこちらを向く。やっぱこいつ、神官なんだな。
「…ありがとな。よし、じゃぁ、行くか!」
ざぶん、と一気に水中に潜る。今この辺りには小魚初め生き物はいないようだ。もともと魔力探知はしないつもりなのでそれぞれ目の周りに風やら水やらで膜を張って目を塩分から守りながら水中を見る。
洞窟のようなものもなければ、魔法陣の光も見えない。
お互い目的のポイントをひとしきり眺めてから水上に戻る。
「ぷはっ。なにか、見つけたか?」
問うと2人も首を振る。やっぱり見ただけじゃダメで、なにかあるのか?
かなり近いところまで来ている手応えはあるのに、あと一歩なにかが足りない。なにか、なにかないか…
「おい。ここは夜が深い。終わらない夜の気配がある。この歪みは不快だ。なんとかしろ」
唐突に、何もなかった上空から声が降ってきた。
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