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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
冒険者編
28/43

パズルのピースを集めて

 「…それと関係あるかはわかんねぇんだけど、アタシが聞いた話も聞いてもらえるか?」


 しばらく考え込んでから、ラリマーが切り出す。そういえば街に戻る時にも気になる話を聞いたと言っていた。


 「ここ最近、海路での事故が増えてるらしいんだ。陸路だと魔物が増えて護衛費が嵩むからってことで海路を使う商隊(キャラバン)も出てきていて、普段よりそもそも海路の利用が多いからかもしれないけど」


 まぁ、確かに事故数が増えててもそれは母数が増えたことによるもので、確率を計算してみると普段と大差ない可能性もあるか。


 「ただ、漁師たちの間で有名な話らしいんだが、ホトトギスが鳴くと船が沈むって言い伝えがあってさ、最近、多いらしいんだ。ホトトギス」


 待て、待て。急に話に置いて行かれた。鳥がなんだって?


 「ホトトギス…その言い伝えの内容と関係するところですと、確か現世とあの世を行き来できる霊鳥として祀られている地域がありますね」

 「はー、そういう信仰があっての話なのか。流石学者センセ。じゃぁ、ホトトギスは危険を伝えてくれてるってことなんかな?」


 まぁ、鳥が鳴くから船が沈むと言われるより、船が沈むのを察知した鳥が鳴いていると言う方がまだわかるか。


 「…」

 「学者センセ?」


 納得した様子のラリマーとは逆に考え込むアイオ。


 「あ、すみません、ホトトギスといえば、他にもなにか文献で見た気がしたのですが、なんだったかと…」


 考え込んだアイオを横目に、ラリマーにふと気になったことを聞く。


 「なぁ、神殿の人間はみんなこんなに物知りなのか?」

 「え?あぁ、学者センセは、もともとは神学科じゃなくて研究科の出身だそうだからかな」

 「…?」

 「ええと、そうか、シオンは魔法学園はあまり縁がなかったか。王国で魔法を学ぶなら王立魔法学園に進学する子が多いんだけど、そこでは卒業後の進路に合わせて3つの科があってさ、神殿の神官さんになる人たちは神学科なんだけど、学者センセはもともとは魔法について研究する研究科にいたらしい」

 「ふーん、途中から神官に進路変更したってことか?」

 「あぁ、そうらしいと聞いてるよ」


 まぁ、色々学んでるうちにやりたいことが変わっても進路変更できなかったら困るだろうしな、そのあたりは柔軟な学校のようだ。


 「それにしても、アンタ学校行ってないのに詳しいな?」

 「え?あぁ、アタシも王立魔法学園の卒業生だよ?」


 うん?どう見ても普段学校に通ってないと思ったが、()()()()()()()だと?

 こちらの戸惑いには気づかないようにラリマーは続ける。


 「騎士にはならなかったけど、騎士科で学んだことは冒険者時代も今の運び屋時代もすごくアタシを支えてくれてるからさ、本当はわたあめも16になったらアタシの手伝いじゃなくて学園に通わせてやりたいんだ。その上でアタシと来てくれるなら大歓迎だし、自分の進路を見つけてそっちに進むならそれは応援してやりたいんだ」


 ちょっと待て、情報量。


 「…16で入学する学園を卒業して、冒険者やって、運び屋になった…って、アンタいくつだ?」

 「やっだな、シオン、レディに年を聞くのはタブーだぜ?」


 バンバン背中叩かれながら言われても、レディらしさがない。が、口にしたらそれはそれでまた叩かれそうなので心の中でつぶやくに留める。その代わり他にも気になっていたことを聞いてみることにした。


 「けほっ…。16になったらって言ってたが、あの毛玉はいくつなんだ?」

 「さぁ?」


 いや、さぁ?って。16になったらとか言いながら今いくつかは知らねぇのかよ。


 「本人が16って言ったら16なんじゃねぇかな」


 年齢は自己申告制だったようだ。


 「ふふ、ドラゴンもエルフも長命種ですからね。魔族も人族(ヒューマン)よりずっと長命ですし、あまり年齢というものを気にされないのかもしれません」


 考え事からいつの間にか復帰してきたアイオの言葉になるほどとは思う。確かに1000年とか生きるなら10年20年なんて俺たちにとっての1-2年くらいの感覚だろうし、そもそも人族(ヒューマン)として16歳というのが寿命が大きく異なる種族にとってはあまり意味をなさないのかもしれない。


 「ところでシオンさん、少し話を戻してしまい申し訳ないのですが、ホトトギスについて思い出したことがあるんです」

 「ああ、霊鳥として祀られてるホトトギスが危険を察知して教えてくれてるんじゃないかってやつか?」

 「えぇ、そちらは漁師さんたちに伝えられてる内容だと思うのですが、それとは別に、死霊術の文献にもホトトギスが出てきていたと思うんです」

 「…死霊術ってぇと、あれか、死体を操る?」

 「そうですね、死体を操りリビングデッドを生み出すものもありますし、過去に亡くなった魂を召喚して依代に宿すものもあります。命の冒涜になるということで禁呪扱いになっているはずですが…」

 「…それに、過去の剣聖とか賢者なんかを悪意持ったやつが呼び出して使役できたら…」


 あ、なるほど。死者の冒涜もあるけど、そもそも危険なのか。確かに伝説の狩人とか敵対されたら…た、戦ってみてぇな、正直。


 「シオンさん、手合わせ目当てに行えるような術ではないのですよ」


 考えが顔に出ていたのか苦笑気味に神官に突っ込まれた。


 「読んだ文献には確か、魂を召喚するためには相応の生き物の生命エネルギーを贄とする必要があると」

 「相応?」

 「そこについては詳細は載ってなかったように思います」


 まぁ、禁呪ってことだしな、完全に書いててお試しで再現されたらまずいよな。


 「生命エネルギーの詳細は載ってなかったのですが、他に必要なものとして、ホトトギスの鳴き声というものがありました。ホトトギスそのものではなく鳴き声なのが不思議な気がして覚えていたんです」

 「…ホトトギスがよく鳴くのは、誰かが禁呪を行ってるからかもってことか?」

 「わかりません…。ただの偶然かもしれません。ですが、船が沈むと言うことは亡くなられた船員さんたちが贄としての役割を果たせると考えると…」


 海でよく鳴くホトトギスと増える沈没船。地上では減る自然の恵みに増える病や魔物。これらは果たして無関係なのか?


 パズルのピースが集まっていくように、バラバラに聞いた話がなにか大きな絵に繋がっていく感覚がある。まだピースが足りないのかどんな絵なのかは見えて来ないが、この絵が、()()()の伝えたかったことなのか。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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