深まる謎
「-ン!」
地震だろうか、今さっきは空に浮かんでいたはずなのに足元が揺れた気がする。それと同時に遠くで声が聞こえた気がした。
「-い、シオン!」
俺を、呼んでる?
「おい!シオン!大丈夫か?!」
「?!」
突然視界が海の上に浮かんでいたそれからゆらゆら揺れる大地に変わる。いや、なんだこれ。
次第に頭がはっきりしてきてわかったのは、どうやら声の主はラリマーで、俺たちはアイスプラントの咲く丘からメルに戻る道を走っているようだ。ラリマーが荷運びの時の要領で俺を脇に抱えながら。
「お、おい、もう大丈夫だ、自分で走れる」
声をかけるとやっと立ち止まって下ろされる。大柄とは言わないがそれなりに鍛えている俺を軽々抱えて走るとは…流石運び屋。
「すまん、どういう状況だ?」
聞きながら自分自身でも状況確認する。ひとまず痛みはないし、軽く動かしてみた感じではあるが身体に異常もなさそうだ。
「あぁ、シオンよかった。昼時なのに街にいなさそうで、聞いたらこの丘に行ったっていうから見にきたんだ。そうしたら、シオンが倒れてて…外傷もないのに呼んでも目を覚さないから、学者センセに見てもらおうと思って神殿に向かってたんだ」
昼時…思いの外長く夢を見ていたようだ。
「心配かけて悪かった、でも大丈夫だ」
「いや、無事ならいいんだ。さ、街に戻って飯でも食おうぜ。商隊からちょっと気になる話も聞けたんだ。よかったらそれも聞いてくれ」
♢♦︎♢♦︎♢
「…いやぁ、いつもながら、気持ちのいい食べっぷりですねぇ」
「ほうひう はんはは ふわはひほは?」
「いえ、僕もいただきますが、シオンさんを見ているだけで自分までたくさん食べた気分になりますね」
昼時、ということは腹が減るわけで。メルの街に戻るが早いかシオンは肉串を買うと齧り付いていた。
その様子を横目に見ながらラリマーがアイオを驚いたように見る。
「…学者センセ、すごいな、シオンが言ってることわかったのか?」
「えぇ、『そういう あんたは くわないのか』とおっしゃってましたよ」
「…す、すごいな、流石学者センセだ」
そう、この変な神官はエスパーなのかどれだけ口に物を入れて喋っても聞き取るという変な特技もちなんだ。
「ふふふ、ありがとうございます」
にこやかな笑顔を向けられたラリマーが赤くなって挙動不審になる。そろそろ見慣れてきたな。
「そういえば、今朝こちらの神殿に伺って話をさせていただいたのですが」
そんな様子には気づかないように変な神官が言葉を続ける。こいつは意外に図太い気はするな。
「ここ数ヶ月、普段よりも熱病や胃腸炎、皮膚病が増えてきているそうです。もちろん、季節の変わり目でしたのでもともと例年でも増える時期ではあるのですが、普段よりも神殿に治療を求めていらっしゃる方が多く、薬草の備蓄が足りなくなってきているそうです。ここより南のエリアでは既に薬草が枯渇し始めていて、薬草では治療できない方もでてしまっていると…」
「ひひょう へひはひひほは ほふなふんは?」
「そうですね、神殿で主として施される治療は薬草を用いたものなのですが、効果が足りない場合は癒しの魔法による治療を行います。もちろん、今回も薬草での治療ができない方へは魔法での治療を行っているそうなのですが…」
「そうすると、本当に魔法での治療が必要なやつが出てきた時に魔力不足で治療ができない危険があるのか…」
察したようにアイオのセリフを継ぐラリマー。なるほど、軽傷者だけが多い分にはなんとかなるかもしれないが、それはいざ重症者が出てきた時に治療できない、つまり助けられない可能性を意味するのか。
「…精霊王様の恩寵が減っているかもしれない、ということが本当に起こりうるのでしょうか…」
変な神官の呟きに黙り込む。大樹の減少、魔物の増加、疾病の増加。全てを繋ぐなら精霊王の加護、恩寵の減少が考えられる。だが、慈悲深く全ての、魔族も含めた全ての種族の共存を望んだと伝わる精霊王が、なぜ。
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