出立
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行動範囲が広がったシオンが、いよいよ夢で見た花畑を探しに出立します。
「シオンさん、もう行かれるんですか」
大して多くない荷物を整理していたら、部屋のドアのところに根性のある腹黒神官が立っていた。俺への指名依頼を伝えるのに便利という意図はあったにせよ、神殿に寝泊まりさせてもらってこいつにも世話にはなったな。
衣食住提供されていた神殿生活だが、荷造りをしているのは先日空の上の島で行われたBランク試験に無事合格し移動許可範囲に海辺が入ったため、ラリマーが海辺に行くのに合わせて乗せていってもらう予定なのだ。
「あぁ。ここから海辺に行くなら、ラリマーに乗せてもらっていくのが一番手っ取り早いからな」
ドラゴンエルフという珍しい種であるラリマーはその大きな体躯を活かした運送業、運び屋を営んでいる。定期的に大陸のあちこちを飛び回り街から街へ交易品や人々を運ぶのだ。
「アイスプラントでしたっけ、夢で見たという白い花は」
「あぁ、まだ可能性ってだけだけどな」
実際俺は自身の目でアイスプラントを見たことがない。ただ、夢で見た特徴を聞いたラリマーが海辺に咲くアイスプラントではないかと教えてくれたのだ。今のところ他に手がかりもないのでひとまずそのアイスプラントの花畑を探すつもりだ。
「そうですか…。それでは僕も用意をしなくてはですね」
そう言いながら立ち去る背中を見送る。用意って言ってたがなんだ?餞別でもくれるのだろうか?せっかくなら肉がいいな、などと思いつつ荷造りの続きを済ませる。あとは保存の効く食料を買い込むのみだ。
♢♦︎♢♦︎♢
「お、シオン、こんにちは」
「おぅ、今日はよろしく頼む」
しっかりと干し肉も買って準備万端、荷物を背負ってラリマーの待つ広場に来た。そこにはもうドラゴンの姿になりその背に大小様々な荷物を載せたラリマーがいた。
「いよいよだな、シオン。Bランク初のフライトだ」
「あぁ、試験の時もありがとな、おかげで助かった」
挨拶を交わしながらラリマーに近づく。今回は荷物こそ多いがラリマーに乗って移動する人はいないようで荷物を積んだ商人たちも積み終わると街の方に戻って行った。
「あぁ、今日は乗るのは2人だよ」
そんな俺の視線に気づいたかのようにラリマーが応えた。そうか、もう1人はどんなやつだろう。海辺に行ったことのあるやつなら話を聞けたらいいな。
「…な、なぁ、シオン。アタシどこか変じゃないか?」
「?」
突然どうした?変も何もドラゴンの普通を知らんのだが。
「いや?特に変だと思うようなとこはないが?」
「そ、そうだよな、今朝も鏡の前でちゃんと身繕いしたし、大丈夫だとは思うんだ、でもでも、やっぱりどっか変だと嫌だなって…」
「大丈夫も!マスターはいつも通りきれいなんだも!」
荷物が落ちないよう積み込み確認をしていたらしい毛玉に肯定されても、なおもワタワタと自身のあちこちを見ているドラゴンは、少し離れた位置から届いた声で文字通り少し飛び上がった。
「ラリマーさん、こんにちは」
危うく振り落とされるところだった。
「…ずいぶん大荷物だな?そんなにどこに送るんだ?」
「ふふ、違いますよ、シオンさん。僕も一緒に乗って行くんです」
…いや、なんて?
「あ、あの、学者センセ、よろ、よろしくな」
またどもりドラゴンになった。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね、ラリマーさん」
にっこりと神官スマイルを返されてはぅだかあぅだか声を漏らすドラゴン。しかも背中に色々乗せてるのに丸まろうとするから尻尾の方から荷物が落ちそうになったのを慌てて風魔法で受け止めた。今更ながら大丈夫か、このドラゴン。
「…一緒に乗っていくって、あんた神殿は?」
「僕はしがない神官ですから。神殿は神官長様がいらっしゃれば問題ありませんよ」
「これから行くのは海辺だ。そのために俺はBランク試験を受けてきたんだが、あんた、こう言っちゃ悪いがBランクもあるようには見えないんだが」
「あはは、そうですねぇ、残念ながらランクだけで言えば僕はかろうじてDですね」
まぁ、街の外の森に1人で出かけていたことからDはあると思っていたが、D止まりだったとは。確かに自分に回復魔法をかけながらひたすら棍棒で殴るなんて戦法でランクアップ試験に合格されてても困るが。
「Dへのランクアップは神殿に権限があるので、森に出るため神官長様にあげていただきました」
戦法どころかズルだった。
「…なら、尚更あんた一緒に行けないんじゃ?」
思わずジト目になりながら問うと、何故か得意げに笑みを浮かべた。またなんかズルい手か?
「ふふ、僕は今回、海辺含む他神殿に派遣されているんです。直接会っての情報交換は有益ですからね。そのための条件であるBランク以上の護衛もシオンさんがいらっしゃるのでクリアしてますしね」
マジか。まさかの護衛される側としての参加だった。
「というわけですので、よろしくお願いしますね、シオンさん」
「マスター、みなさん、行ってらっしゃいも!気をつけて、ちゃんと帰ってきて欲しいも!」
一生懸命手を振る毛玉に見送られながらにっこりと神官スマイルを浮かべるアイオを見て、やっぱこいつ腹黒神官だな、とシオンは思った。
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