Bランク試験9 〜そして旅立つ時〜
長かったような短かったような2日が終わり、最終日の朝になると、受験生たちが最初の広場に集まってきた。
早々に課題をクリアしてのんびり身を潜めていた者、ギリギリまで奮闘し疲れが見える者、様々ではあるが皆無事に集まってきている。
「はーい、皆さんお疲れ様でした」
木彫りのウサギが広場の前に出てきた。自然と皆の視線が集まる。
「今回の試験も無事に死亡リタイアなしで終われますことをまず感謝します、ありがとうございます」
今更驚きもないが、器用にぺこりとお辞儀する。
「はい、では早速、結果はっぴょー!」
木彫りのクマがでてきて自身の両手の爪を擦り合わせてドラムロールのような音を出す。木彫りって便利だな、おい。
合格者が順に呼ばれ、Bランク冒険者の証であるバッジを手渡される。どういう仕組みなのか同時にギルドカードに登録されているランクも更新されるらしい。木彫りのくせにハイテクな作りのようだ。
課題3つと奇襲および奇襲防衛成功の満点通過の合格者は4人。アサヒからの奇襲をかわし、うまくサンダーを倒した狩人シオン。奇襲されるほど他者の接近を許さず、自身は夜の戦いで子猫ルゥを華麗に翻弄した血の魔族リュヌ。同じく奇襲は受けず、自身は隙を見てアサヒを仕留めたらしい樹の魔族。昼寝中の奇襲もかわしていたひよこ帽子の少年、なぜかサクラが顔を赤らめて見つめているがなにかあったんだろうか。
続いて準合格者というものが発表された。奇襲については相性、運といった要素もあるため奇襲の成否という結果ではなく内容を採点して合格として問題ないと判断された者が選ばれるそうだ。ただ、合格ではなく準合格となっており、最初の依頼を失敗すると実力不十分と判断され合格取消しになるらしい。ここでは3人名前が呼ばれた。シオンからの奇襲は受けたもののそれ以外は問題なかった穴うさぎサンダー。サンダーに不意をつかれはしたが、「気が重い」と言いつつしれっと学生(後輩)を奇襲していたらしい魔導士ウイ。リュヌに破れはしたがその高い戦闘力を学生(先輩)相手に披露したという子猫ルゥ。
「他の皆様はまた力をつけて挑戦してください。生きてさえいればまだまだチャンスはありますからねー」
労いの言葉をかけられて解散となった。
「シオン!」
帰ろうかとラリマーが待っている広場の端の方に向かおうとしていたら呼び止められた。
「まずはBランク合格おめでとう。初めてのランク試験と聞いていたが一発合格とはな、すごいやつだ。短い期間だったが共同戦線ありがとな!俺はまた腕を磨いて出直すとするさ」
「本当に初めてだったんすか?これもリーダーが言ってた、流石ヴァーダイトってやつなんすかね?自分は合格とはいえ準合格なんで、手堅い依頼を最初は受けるっす」
「シオン、おめでとう。そして助けてくれてありがとうね」
賑やかな挨拶が終わるとそれぞれが雲の上の島から離脱する。中でもウイは転移術が使えるようで何人か王都に向かう人は送るらしい。軽い口調だがすごい奴なんだろう。
「…シオン、気をつけて」
ラリマーが見えるところまで来たところでまた声をかけられる。今度は樹の魔族の女性が立っていた。
「魔物が増えてくる」
「うん?」
「流行病も増えてくるみたい」
「そうだったか?」
特に自分の周りでそう感じてなかったので素直に聞き返す。
「…今はまだそんなに増えてない。でも近いうちに」
「予言ってことか?」
「樹の魔族は少しだけ予知がある。知っての通り」
「いったいなんの話をー」
聞き返そうとしたところで言いたいことは言い終えたとばかりに花冠の女性姿を消した。相変わらず自由な種だな。
「おーい、シオーン!おかえりー!」
待っていたラリマーがこちらに気づいたように声を上げる。
「試験お疲れ。ど、どうだった…?」
遠慮するドラゴンの図というのもなかなか新鮮な気がする。
色々考えることはあるが、まずは夢で見たアイスプラントと思しき景色を探しに行けるようになったことだし、準備が出来次第旅に出よう。一応世話になっていた腹黒神官にも挨拶して…。
シオンはラリマーの背に跨りながらここ2日の濃い報告を始めるのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
これにて第一部旅立ち編はおしまいです。
少し制作期間をいただいてから、続く冒険者編としてシオンの旅が始まります。夢で見かける花はなんなのか?その答えに辿り着く時なにがわかるのか?
続編ともどもお読みいただけましたら嬉しいです。またよろしくお願いします。
下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪




