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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
旅立ち編
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Bランク試験8 〜月夜のワルツ〜

夜の戦闘が思いの外長くなりそうだったので分割しました。子猫の獣人ルゥとバンパイアの少年の戦いはどちらに軍配が上がるのでしょうか?

 ふぅぅ!毛を逆立てて威嚇するが、金眼の少年に響いた様子はない。


 「…お前、まだ子猫なのか」

 「む、ルゥは子猫だけど、ちゃんと獣の魔族(ビースト)にゃから、強いんだぁ」

 「…そうか、それは…」


 最後の「楽しみだな」のセリフが耳に届く頃にはお互い地を蹴っていた。

 高所からの飛び降りの勢いも攻撃に乗せようと木を駆け上るルゥ。猫の素早さで一気に駆け上り、飛び降りる。落下の加速度も乗せた爪が金眼の少年に迫る。が、ゆらりと最小の動きで躱される。同時に伸びてきた少年の影がこれまたとっさに身を捻ったルゥの耳をかすめる。


 「にゃんだ、お前、影が伸びたぁ?」

 「…ふむ。子猫なら知識のなさは仕方がないか。我は血の魔族(バンパイア)のリュヌだ」

 「ばんぱいあ…」


 わかっているのかいないのか少年、リュヌの言葉を繰り返す。


 「夜を統べる種族であり、影を操作できる」

 「…にゃんで、ルゥに教える?」

 「それはもちろん…」


 にぃ、とリュヌの口角が上がる。


 「そのほうが面白いからさ」


 セリフと共に影が伸びてくる。普段意識なんかしない影が動くとか、やりにくい。だが()()()()薄っぺらい敵だと認識すれば戦えないことはない。次第に慣れてきたのもあり、ルゥは上手にステップを踏んでリュヌの影の攻撃を避ける。まるで月夜のワルツを踊っているかのように。


 上手に避けていた。だから、気づかなかった。リュヌがゆっくりと移動していたことに。


 「にぎゃっ!?」


 とさっ、と軽い音を立ててルゥが地に落ちる。月の光に反射してリュヌの手にある細剣(レイピア)が煌めく。いつの間にそんなもの持ってたのか。


 「子猫よ、いい動きだった。だが、目の前のものだけに集中するのはよくない。意識をもっと広く持つといい」

 「…く、ぅ…」


 淡々とルゥに語りかけてくる。正直刺された肩が痛くてそれどころじゃにゃい。


 「…おい、樹の魔族(ドライアド)、いるのはわかってる。この子猫の手当てをしてやれ」

 「…」


 すぅっと木の幹から花冠を被った女性が現れた。


 「ずっと()()を見ていたのは気づいていた。おおかたまだ幼いそこの子猫が気になっていたのだろう」

 「…貴方も幼い」

 「な?!わ、我はもう立派な血の魔族(パンパイア)であるぞ!夜を統べる種の者である」

 「…永きを生きる血の魔族(パンパイア)としてはまだ子ども」


 ぷんすか、と音が見えそうな様子で地面を踏み鳴らす様は正しく子どもなのだが、当人は大真面目に大人ぶっているので指摘したら怒るだろう。

 子ども、と思いながらも口には出さず手当てを始める。鎮痛効果のある葉と一緒に、今回の課題にもあるピルリーフの効果を魔力で最大限に高めた上で傷口にあてがう。傷口に触れた瞬間痛かったのだろう、一瞬ルゥの身体が強張ったがじきに力が抜ける。


 「お加減はいかがですか、子猫さん?」

 「痛みがとれてきたぁ、ありがとう、お姉さん」


 優しく頭を撫でるとゴロゴロと喉を鳴らすルゥに目を細めながらリュヌの方を見ると、いつの間にか姿を消していた。流石闇に溶ける血の魔族(バンパイア)



♢♦︎♢♦︎♢


 「zzz…」


 野営地のテントに寝息が聞こえる。夜もふける頃、静かに草が揺れる。


 「…誰だ?」


 見張り役で起きていたアサヒが()()()()()暗がりに声をかける。


 「こんばんは。月が綺麗ですね」

 「…ひゅー、これはまた情熱的で綺麗なお姉さん。こんな夜更けになにか御用ですか?」


 「月が綺麗」を字面通りではなく隠語として解釈したのか、情熱的だと言われてしまった。


 「いえ、この1番負担となる時間帯の見張りを買ってでた優しい上官さんにお目にかかろうかと思いまして」

 「お、前から俺にご興味が?」

 「えぇ…そうですね」


 にこりと微笑むと満更でもなさそうに笑い返してくるアサヒ。


 「いやぁ。それは嬉しいなぁ」


 笑いながら焚き火に薪をくべる。


 「…それが、標的としての興味じゃなかったら最高でしたね」


 今しがたくべた薪の火を地面に押し付ける。いつの間にかアサヒに向かって伸びてきていた蔦を焼くように。


 「…あら、気づいていらしたの?」

 「まぁな、これでも傭兵団の団長経験があってね。狙われる時のぴりぴりした感じには敏感なんだ」


 殺気を出したつもりはなかったが、存外勘のいい男だったようだ。


 「悪いが、俺が奇襲されて倒されるだけなら俺の力不足として受け入れるが、今はダメだ。見張りの俺がやられたせいでチームメイトまで奇襲されたら洒落にならんからな」

 「…ふふ、本当に素敵な上官さんね。わかったわ、そういうことなら出直します。期待して待っていらしてね」

 「デートのお誘いなら喜んで予定をあけるよ」


 その言葉が終わる頃には、アサヒの近くにはもう襲撃者の姿はなかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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