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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
旅立ち編
16/43

Bランク試験3 〜うーんとくさいぞ ピルリーフ〜

 「さてさて、それでは採取試験の説明をするよー」


 木彫りのキツネがまた前に出てきた。手にはパネルを裏返しに持っている。殆どの受験生の視線がキツネに向く中、一瞬殺気のような気配を感じる。誰かもう奇襲をかけるつもりなのか。


 「はい、採取試験の課題はこれです」


 ててん、とキツネが持っていたパネルを裏返して植物の絵が書かれた面を見せる。ピルリーフだな。知っている者なら一目でわかる植物だ。森にいる時に世話になることもあったからよく知っている。


 「ピルリーフという植物です。ご存知ない方のために、すこーしだけヒントを」


 んんっ、と、咳払いを器用にしてから続ける。


 「うーんとくさいぞ ピルリーフ」


 なんかのカルタかな?まぁ、確かにくさいってか独特な香りのする植物だ。これが探す時のヒントになるかは別だと思うが。


 「採取試験は明後日の朝までです。それまでにピルリーフを2枚採取してください。このあと説明する討伐試験とどっちを先にこなしてもかまいません」


 そこまで言い終わると木彫りのキツネがぺこりとお辞儀をして下がり、代わりにクマが前に出た。


 「どうもどうも。討伐試験は2つ課題があります。期限は採取と同じく明後日朝まで。どっち先でもいいですが両方討伐してください。はい、これです」


 パタンと持ってたパネルを2枚一気にひっくり返す。片方にはフグ…ってかハリセンボンみたいな魚が、もう片方にはオレンジ色のスライムが書いてある。


 「はい、こちらがアクアポーキュポン。魚です」


 ハリセンボンの方を高めに掲げて、見ればわかることを言う。なんというか、さっきのキツネ以上に説明が雑すぎる気がする。


 「はい、こちらがオレンジスライムです。こっちは説明はありません」


 ないのかよ。

 つまり、これはモンスターの知識問題も兼ねているということなんだろう。しかし、スライムはまだしも魚は正直馴染みがない。そもそも海に行くためにこの試験受けにきてるのに川魚ならまだしももし海水魚なら知らない受験者ばかりになるんじゃ。

 そんな俺の予想が当たっていたのか、途端にざわめき出す受験生たち。


 「っ!」


 そのざわめきに紛れ込むようにして吐かれた鋭い呼気と、何かが地面を抉る音。

 音のした方を振り返ると、ひよこ帽子が寝ていたところに三日月刀(シャムシール)が刺さっていた。握っているのはいつの間に移動したのか、前から2番目に並んでいたフーテッドケープの少女。フードが外れてまだ幼さの残る横顔が露わになっていた。そして寝ていたはずのひよこ帽子は近くの木の上に飛び乗ったらしく枝の上に座っている。


 「…ち、寝てるなら奇襲試験をイージーモードでクリアできると思ってたのに」

 「残念ですが、ボクは寝込みを襲われる趣味はないのですよ、可愛らしいお嬢さん」


 寝てるところを不意打ちされたのに避けたのだから身体能力は秀でているのはわかる。わかる、が、頭に被ったひよこ帽子のせいで緊張感がない。


 「…」

 「さて、皆様説明の途中でお騒がせしましたことをお詫び申し上げます。どうぞ続きをお話しください。おやすみなさい」


 いや、最後のセリフはおかしいだろ。突っ込む間も無く今度は木の上で寝ようとするひよこ帽子。こいつ何しにきたんだ?


 「いえいえ、説明はほぼ終わりでしたよ。それでは明後日の朝までにアクアポーキュポンとオレンジスライムの討伐、そしてピルリーフ2枚の採取を頑張ってください。討伐証明は、アクアポーキュポンは本体を、オレンジスライムはコア石を持ってきてください」


 何事もなかったかのように受けたクマがいい終わると、ウサギがシンバルを持ってきて


 「はい、それではかいさーん」


 と言いながらシャーンと打ち鳴らした。

 同時にゾロゾロと動き始める受験生たち。まぁ、寝たままのひよこ帽子とか、とっくに姿を消していたフーテッドケープ他数名もいたが、これで本格的な試験開始のようだ。

 討伐対象のアクアポーキュポンが魚ということは水辺にいる、と考えると採取と討伐同時にこなせるかもしれない、と思いながらシオンは水の気配をたどりつつ森の中へと足を踏み入れた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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