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遠くの君と想ういのち  作者: 衣緒
旅立ち編
13/43

幕間 〜世界でたった1人の〜

シオンたちの街に来る少し前のラリマーさんのお話です。

本編とは直接関係はありませんが、こちらもお楽しみいただけたら嬉しいです

 ばさり、と羽根を広げて空を舞う。やっぱりこの瞬間が好きだ。風のうねりを全身で受け止めながら雄大な空を見回す。

 アタシは運び屋だ。ドラゴンとしての大きな身体を活かしてどんな大きな荷物でも運んでみせる。それがこの仕事に対しての、アタシの矜持(プライド)


 ドラゴンは誇り高い種族だ。世界の最強種であり、誰にもひれ伏すことはない。他種族の助けなどなくとも生きていけるということを示すかのように、ひっそりと旧魔界の険しい山脈に居を構えて、ドラゴン種だけで生活している。

 アタシも昔、自分の祖先(ルーツ)に会いたくてドラゴンの住む山に行ったことがある。覚醒遺伝でドラゴンの身体を手にしているアタシはドラゴンの山では生まれていない。それでも、ご先祖様には違いないと思って行ったのが間違いだった。


 「…混じり物か。何しに来た?」低く響く声。歓迎の意思は見えなかった。

 他種族から見れば間違いなくドラゴンとして認識される姿であっても、魂の色で相手を識別するとも言われる純血種のドラゴンにかかれば異端、混じり物でしかないんだとわかった瞬間だった。それ以来アタシはドラゴンの住む山には行っていない。


 父さんが竜人族(ドラゴニュート)だったアタシは、ドラゴンとしてはクォーター。父さんもドラゴンの山には一度行ったことがあるだけだと言っていた。きっと、アタシのときと同じように種族の壁のようなものを感じたんだろう。

 父さんのドラゴンの時の姿は、ハーフとは思えないくらい立派なドラゴンだった。大きくて強い。そんなドラゴンにとって最大の魅力である大きさだが、父さんは()()()()可愛いと言って母さんを選んだ。きっと立派だけど変わり者だったんだろう。15年前に火山の爆発からアタシたちがいた街を守るためにその身を盾にして死んでしまったから、変わり者だと言われていたかはもう聞けない。


 母さんは遠いご先祖様にエルフがいたという人族(ヒューマン)だった。ご先祖様にいたとはいえエルフの血は薄かったみたいで、ちょっと魔力の使い方が上手な普通の人だった。小さくて、いつもパタパタ音を立てているような動きをしていて、それが可愛いといつも父さんがニコニコ見ていた。だから、人族(ヒューマン)らしい寿命を迎えるときに父さんは大層嘆き悲しんだ。アタシも悲しかったけど、そんな父さんを見てアタシがこれからは父さんを支えなくちゃと思ったのを覚えている。


 大好きだった2人がいなくなってから、アタシは旅に出た。街にいるとひとりぼっちだって実感して悲しくなるから、気を紛らわせたかったのかもしれない。それか、単純にこの広い世界を見てみたいと思ったのかも。

 旅先でいろんな人に出会った。竜人族(ドラゴニュート)やエルフみたいに珍しい種族にも出会った。だけど、いくら珍しくても、大抵は複数人の同族と一緒にいて、全くの1人きりという人はいなかった。

 父さん、どうしてアタシはただの竜人族(ドラゴニュート)として生まれなかったんだろう。母さん、どうして母さんは限りなく人族(ヒューマン)だったのに、アタシの変化時の姿はエルフなんだろう。

 純血種のドラゴンは熟達しないと人化の術を使えないと言うけれど、もともと()()()()である竜人族(ドラゴニュート)はドラゴンの姿と人族(ヒューマン)の姿を任意に変えられる。それがどうしたわけか、アタシは初めて変化したときからエルフの姿になった。それを見て母さんが、そういえば遠いご先祖様にエルフがいると聞いたことがあると思い出したのだ。世界広しと言えどもドラゴンエルフとでも言うのか、アタシと同じ種族には出会ったことがない。


 そんな寂しさから逃れるように森の中を歩いていたときに、不思議な生物に出会った。


 「もっ!もっ!」


 声はすれども姿は見えず?エルフの聴覚をフル活用して特定した場所をじっと見つめてやっと見つけた。野良猫に襲われている…毛玉?


 「もーぅ!やめるも!痛いも!」


 涙目で必死に防戦している毛玉と、おもちゃにわくわくして遊んでいる様子の野良猫。


 「なぁ、こいつ嫌がってるみたいだし、やめてやってくれるか?」


 ひょいと猫をつまみあげながら話しかける。途端、ぴゃっ?!とばかりに逃げ出す猫。まぁ、ドラゴンだしな、小動物に逃げられるのはいつものことだ。毛玉の方も逃げるべきな悩んでるのだろう、こちらを見つめたまま固まってしまっている。


 「悪いね、怖がらせちまって。でもさ、あんたみたいなよわっちぃやつは1人では生きていくのは大変だと思うよ。アタシと来るかい?」

 「…もっ♪お姉さんは怖そうだけど怖くないも!ありがとも!」

 「ははは、なんかあんた、わたあめみたいにふわふわしてるな」

 「わたあめ…。私は今日から、わたあめも!命名してくれてありがとも!ますたぁ!」


 図らずも命名したことになった。そういえば魔族は命名されることで主従契約が発生すると聞いたことがあるが、それに当たるのだろうか。

 まぁ、小難しいことはいいか、ともふもふ足元で転がる毛玉を見つめながらラリマーは思うのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

下の⭐︎で応援してもらえるととっても励みになって嬉しいです♪


登場してからもメインメンバーだけでなく、なんならわたあめのキャラに食われ気味?だったラリマーさん目線の幕間でした。

次は本編に戻ってシオンのBランク試験です

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